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ようこそ、おおきに。映画ライター椿屋です。
みなさん、京都お好きですか? 廃線路、お好きですか?
京都で廃線路といえば、蹴上インクライン! 春には線路の両側に桜が咲き誇り、ピンクのトンネルができる桜の名所としても知られています。
疏水上流の蹴上船溜と下流にある南禅寺船溜を結ぶ全長約582mの傾斜鉄道で、建設当時は世界最長だった蹴上インクライン。約36mの高低差を克服するため、舟を台車に乗せてケーブルカーと同じ原理で運んでいました。インクラインによって、舟は貨物の積み下ろしをすることなく高低差を乗り切ることができたのです。
現在は、そのレールが形態保存されていて、インクラインの中を自由に散策可能。ただ歩くだけでもフォトジェニックなスポットでございます。
“線路×映画”でわたくしが真っ先に思い浮かべるのは『スタンド・バイ・ミー』(1986年/コロンビア映画)でございますが――。今回注目するのは、そんな蹴上インクラインがティザービジュアルに使われている映画『男ともだち』です。
(c)2026『男ともだち』製作委員会
本作の撮影は2026年2月いっぱいにかけて行われ、そのロケハンで冬枯れのインクラインを見たとき、「夜通し遊んで空が白む頃、並んで歩く画にふたりの関係性を託せる」という確信をもったという三島有紀子監督。
今回は、三島監督のインタビューと共に、京都ロケ地の魅力に迫ります。
本作は京都・富山(実際のロケ地は福井)・広島の3つのロケーションが登場し、とくに松岡茉優さん演じるイラストレーターの神名(ルビ:かんな)が暮らす京都が物語のメイン舞台となっています。
「この映画にとって京都は、ふたりが過去に過ごした時間と現在の時間を交互に辿っていく場所です。鴨川にしろ、路地にしろ、京都は本当に会話が成立しやすい空間を昔から演出してきた都市。モノに対する興味の意識も高い街で、美術館・図書館・本屋も多く、良い建築物もまだ残っていて、なおかつそれらが街に溶け込むようにデザインされています」という監督の言葉どおり、京都の各所が物語に奥行をもたらしているのも本作の見どころ。
例えば、助監督時代に2年間四条大宮界隈に住んでいた監督自身が実際に通っていたという博多長浜ラーメンの名店「ラーメンみよし」(京都木屋町にて1983年創業)は、作中のキーとなる場面で2度も使われています(原作ではフレンチレストランだったシーンをあえてハセオのキャラクターを強調するためラーメン屋で撮影されています)。
(c)2026『男ともだち』製作委員会
「私自身がまだ映画を撮れなくて、現場に身を置きながらも毎日悶々としながら生きていた頃、みよしのラーメンを食べるとちょっとだけお腹があったまって、明日も頑張ろう!って思えました。映画をつくるのは本当にエネルギーを使うから、いつもスタミナつけたくて牛スジが入ってるのを頼んでましたね(笑)」と、教えてくれた三島監督。
(c)2026『男ともだち』製作委員会
また、神名が浮気相手である真司(中島歩)と待ち合わせをした学会の会場という設定で登場する国立京都国際会館は、京都議定書が採択された場所として知られる建物で、日本モダニズム建築の最高峰のひとつです。
三島監督も「建築がとにかく素晴らしくて、芝居が鮮明に見える空間でした。設計者の意図が随所に感じられ、演劇空間としてお芝居を豊かに考えられる場所」と絶賛。
そんな国際会館内で、真司が何度も口にする「ジェラートは?」がわたくしのツボを直撃したのですが……なんとセリフは中島さん提案だったそう! 可笑しみに満ちたシーンは、ぜひ劇場にて。
(c)2026『男ともだち』製作委員会
他にも、これまた三島監督が足繁く訪れたという「恵文社一乗寺店」(神名が作品を委託販売しているギャラリー)、中央ホール・東山キューブテラス・ミュージアムカフェなどが使われた「京都市京セラ美術館」、白川の一本橋から古川町商店街(『いつかの走馬灯で』でもご紹介!)、出町桝形商店街にある単館映画館「出町座」、三条大橋から四条大橋にかけての鴨川沿いの遊歩道(花の回廊)、上七軒の「カフェ・フロッシュ」、思わぬところでは北野商店街のスーパー「メッサ北野」などなどなど。
もちろん、京都ロケに欠かせない嵐電(京福電気鉄道)も登場します。
(c)2026『男ともだち』製作委員会
印象的だったのは、「(その俳優の)新しいところが見えるキャスティング」や「動きによって感情が見える演出」を心掛けているという、映画づくりにおける監督の姿勢でございました。
「こう動いてくださいではなく、芝居が自然に出るように感じてくださいとお伝えするようにしています。ああ、なるほどと演じているキャストが思ってくださるロケーションやシチュエーションを用意するのが大切だと思っています」
「目指していることはありますが、その方法はいくつもあります。だから表現においての結論ありきで指示を出すことをしない」という監督の言葉には、俳優部に対する期待はもちろん、“お芝居が生まれる美術”を生み出すスタッフへの絶大なる信頼が垣間見えた気がいたしました。
(c)2026『男ともだち』製作委員会
ロケ地とは違いますが……随所に注入されている映画愛も見逃せないポイントでございますよ。
とくに、映画を観ることを中心にした空間づくりが成されているハセオ(成田 凌)の部屋は、映画ラバーには堪りません!!!
映画を鑑賞するためのベスポジにベッドが配置され、その上で座ったり寝転んだり、何ならベッドを背もたれにして床に座ってもいい。生活の優先順位が見事に表現された部屋になっています。
さらには、映画棚。「ハセオが好きそう」という視点から監督やスタッフが持ち寄ったというDVD&ブルーレイが並び、決して大写しになるわけではないにもかかわらず、その並べ方さえも吟味された映画愛たるや! ぜひ刮目してご覧くださいませ。
先へと続く線路は“青春”を象徴するかのよう。蹴上インクラインを訪れるときはいつも遊佐未森さんの「夏草の線路」が脳内BGMに(苦笑) 撮影:松村シナ
『男ともだち』https://happinet-phantom.com/otokotomodachi/
11月6日から全国公開
出演:松岡茉優、成田 凌、井上祐貴、中島 歩、咲妃みゆ、三浦貴大、辻󠄀 凪子、中山求一郎、比喩根(chilldspot)、余 貴美子、池畑慎之介
監督:三島有紀子
原作:千早茜著『男ともだち』(文春文庫)
| 店舗・施設名 | 蹴上インクライン |
|---|---|
| 住所 | 京都市東山区東小物座町 |
| 交通 | 地下鉄東西線蹴上駅から徒歩5分 |
Writer椿屋 山田涼子
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Writer椿屋 山田涼子
京都拠点の映画ライター・グルメライター。「映画はひとり、劇場で」をモットーに、2025年の映画鑑賞本数は280本。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。
Instagram:
tsubakiya_cinema
X:@tsubakiyagekijo
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