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源氏物語発見

源氏物語発見

今年は、源氏物語が完成したと思われる年から1000年の節目。 世の中が千年紀で騒がしくなってきたと思っていたところ、DigiStyle京都から随筆の依頼が舞い込んできた。 源氏物語の舞台を、観光案内がてらに紹介してほしいとのこと。
しかし単なる観光案内など源氏愛好家に面白かろうはずもない。
この企画は、現場で作家が見たものを見ようという試みである。源氏物語の不思議への小さな入口に読者諸賢を案内する。 しばらくは、広い心でお付き合いをお願いできれば小生の幸甚である。

目次
  • 最高貴族の全容を余すところなく書き切った源氏物語は、王朝女性ばかりでなく、男性社会にも浸透し「貴族の拠り所」としてその価値を高めた。そして石山寺で執筆構想を得たという伝説も、真偽はさておき今なお人々の共感を集めている。

  • 浮舟をめぐる薫と匂宮の三角関係。その果てに浮舟が辿りついた境地は「祈ること」にあった。華麗な光源氏の世界から続く「世の常」の話の顛末とは。

  • 光源氏も他界し、その子孫の世代。輝かしい時代を引き継いだ若者たちの物語は「世の常」にありがちなものであった。しかしこうすることで、光源氏の世界はより輝いて見える。

  • 光源氏の邸宅、六条院。それは源融の六条河原院をなぞる邸宅であり、また龍宮を意識したつくりになっていた。紫式部はなぜそのような構成を思いついたのか。

  • 美貌も知性も兼ね備えた玉蔓は、光源氏の養女となり貴公子の憧れの的になる。しかし彼女の人生は、浮き沈みが多かった。実在しそうなくらいリアリティのある玉蔓の生涯とは。

  • 物語には「貴種流離」というパターンがある。主人公は一度、外の世界をさまようことで、さらなる力をもって復活するという考え方だ。源氏物語にもこれは当てはまり、光源氏は須磨、明石をさまよって生まれ変わった。

  • 愛すべきか。愛さぬべきか。意思と感情はいつもうらはら。
    生霊となるまで光源氏を愛した六条御息所には、そうせずにはいられない過去の因縁があった。

  • 五条の場末で知り合った頼りなげな女・夕顔。彼女の急死で源氏との恋はあっけなく終わってしまう。 急死した夕顔を密かに埋葬し、事件をうやむやにしたのは源氏の乳兄弟・惟光。 未来の物語に布石をうちつつ、ミステリーのような趣も持つ「夕顔巻」。

  • 源氏に惹かれながらも自らの立場省みて、光源氏を拒絶した空蝉。空蝉への愛情ゆえに、 失脚した源氏に背を向けた夫。その愛を疎ましく思いつつも、夫に従う空蝉。 人の感情は、身分や立場を乗り越えられない時もあると、式部は冷静に書き切る。

  • 若紫(のちの紫上)の登場は春らんまんの北山。可憐なヒロイン登場にふさ わしい桜の季節を背景にしながらも、紫式部は「光には寄り添う影」の存在 を物語を通じて暗示することを忘れてはいない。

※目次タイトルと公開時期は変更になる事がございます。ご了承下さいませ。
執筆者紹介 村井利彦
周防大島出身。10歳で上京、早稲田大学卒業後、神戸山手女子短大に赴任。
以来35年、現在は神戸山手大学都市交流学科教授。専門は昔も今も源氏物語。
趣味はドライブ。GT-Rを所有している。

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