グルメ・お土産

2026.03.27
京都国立博物館内にある「京博店」

京都の日常に溶け込む一杯から、笑顔溢れる未来へ

SDGsは“社会貢献の別メニュー”ではなく、本業の中に眠っている価値を育てていくこと。この連載では、京都でそれを実践する企業を訪ねて、取り組みがどう根づき、どう価値につながっているのかを、ゆる~く読める形でお届けします。

ひとつめのサスタネは「喫茶店」という日常の場所にありました。朝の静かな京都で、近所の人がふらりと立ち寄り、言葉を交わす——そんな当たり前を支えてきた前田珈琲

喫茶文化を守ること、フードロスを出さない仕組み、そして現場の“やりたい”が新しい価値になること。その中にあるサステナビリティのタネを見つけにいきます。

近年はさまざまな新しい取り組みも注目されがちですが、前田珈琲の取り組みは、流行を追うというよりも「京都だからこそ、続けてこられたこと」の積み重ねにあります。今回のインタビューでは、その中でも特に

(1)【住み続けられるまちづくり】につながる地域コミュニティへの取り組み

(2)日々のオペレーションに根づいたフードロス対策

(3)社員の自主性を最大限発揮し、社内外から愛される理由

この3つの軸から、前田珈琲が地域から愛される秘訣をひも解いていきます。

前田珈琲 室町本店の外観

 

喫茶文化を守り続けることが、地域コミュニティを支えてきた

「喫茶店」は、京都の暮らしのインフラです

前田珈琲は創業以来、一貫して「喫茶文化」を大切にしてきました。ただコーヒーを提供する場所ではなく、日常の延長線上にある“人と人が交わる場”としての喫茶店です。

朝食の時間帯になると、「前田珈琲に行けば誰かがいる」「店の人と一言二言、言葉を交わせる」。そんな存在として、いつの間にか地域の暮らしに溶け込んできました。

 

まず大切にしているのは“近隣のお客様”

前田珈琲の店舗は、市内に15箇所あり、京都芸術センター、京都国立博物館、京都コンサートホールなど文化施設の中やその周辺にも展開しています。

京都国立博物館内にある「京博店」

 

一見すると観光色が強そうですが、出店時に一貫して大切にしているのは「近隣のお客様に愛され続けること」です。

観光客向けに振り切るのではなく、日常的に通ってもらえる店であること。その積み重ねが、結果として長く続く店づくりにつながっています。

 

希薄になりがちな人と人との関係を、そっとつなぐ役割

高齢化やマンションの増加により、京都の街でも昔ながらのコミュニケーションが薄れつつあると言われています。

“人とのつながり” や“ご近所同士の関係性”を大切にする前田珈琲は、学区や自治連合会が主催する運動会、クリスマス会、夏祭りなどに参加・協賛を続けてきました。地域行事に関わることは、コミュニティ形成への貢献であると同時に、ブランドに触れてもらうきっかけにもなっています。

それぞれの学区のイベントには積極的に参加し続けている

 

今も続く「門掃き」に、京都らしい距離感が

開店前に、となり二軒先まで掃除をする「門掃き」。前田珈琲では、今もこの習慣を大切にしています。顔を合わせれば自然と挨拶が生まれ、何気ない会話が交わされます。

京都の街は、こうした小さなコミュニケーションを積み重ねながら、住民が孤立しない“ちょうどいい関係性”を築いてきたのだと感じました。その中で喫茶店が果たす役割は、決して小さくありません。

喫茶文化を守り続けてきたことが、結果として地域に根ざすことにつながっている。その実感が、言葉の端々から伝わります。

 

「必要な分だけつくる」文化が、フードロスを出さない仕組みを支えています

オーダーが通ってからつくる、という当たり前

前田珈琲のフードロス対策は、特別なシステムを導入することではなく、日々のオペレーションそのものに根づいています。

基本は「オーダーが通ってからつくる」ことです。作り置きをしないため、食材が余ることはほとんどありません。

必要な分だけを、自社のメンバーが責任を持ってつくる。それが前田珈琲のカルチャーです。このシステムの良いところは、食品ロスを削減できるといった点だけでなく、お客さん1人1人の好みに合わせてカスタマイズできるという点です。

苦手な食材を抜くなど提供するメニューの自由度が高くなります。自分好みにカスタマイズしやすい空気感があるからこそ自分だけの特別感が生まれ、リピーターの獲得にもつながっているのではないでしょうか。

オーダーが通ってから調理しても「このままだと余りそうだな」という食材が出てくることはあります。そんなときは1日に1回、市内全店舗へ配達を行う既存の社内便を活用し、来店者数の多い本店へ食材を移動させ、使い切っているとのこと。

京都市内に集中して出店されていることにも大きな意義があり、そして店舗単位ではなく、会社全体で考えるからこそ実現できるフードロス対策です。

 

ケータリングにも「食べられない」を生まない工夫が

前田珈琲にはケータリング事業部があり、京都で開催される学会や企業のイベント、国際会議など、 さまざまなシーンに向けて、コーヒーとともにスイーツやお弁当を届けています。

国際会議では、ヴィーガンやハラール対応を求められることもあります。そうした場合にもお弁当ごとに入れる食材を変更するなど柔軟に対応し、食品ロスを出さないよう工夫しています。

こうした細やかな対応は主催者や参加者からも好評で、リピート注文につながっています。

また、京都国際会館にある「NIWA café」では、国際会議の開催時に外国人のお客様が多く訪れます。そこで寄せられるリクエストに応える形で、様々なメニューを提供しています。

多様な食のニーズに対応することが、結果としてフードロスを減らし、新たな価値を生み出しています。

 

社員の自主性を最大限発揮し、社内外問わず愛される理由

サステナブルな挑戦が、働く人のモチベーションを高める

前田珈琲には「やりたいことがあれば、手を挙げてやる」という風土があります。それは社員だけでなく、アルバイト従業員にも開かれています。

その一例が、どうしても出てしまうコーヒー豆のかすを肥料として再利用する取り組みです。「この肥料で野菜を育てたい」という声が現場の従業員から上がり、農家と協力のもと実現しました。

自ら畑で野菜を育てている従業員

 

さらに今年は、その畑で育てたほうれん草を使ったメニュー開発まで行われています。サステナブルな取り組みが、単なる“いいこと”で終わらず、商品や体験としてお客様に還元されています。

こうした挑戦は、働く人のやりがいや誇りにもつながっています。

古き良き伝統も守り継承している一方で、このように従業員の「やりたい!」を大切にし、より良い改革を進めているのが前田珈琲ですね。

 

マニュアル化しない接客が「行き続けたい店」を生み出しています

前田珈琲では、店舗の従業員の自主性を大切にすることをモットーに、接客のマニュアルをあえて細かく定めていません。それによって、店舗ごとにカラーがあり、それぞれの店に“らしさ”があるのも魅力です。

「少し遠くても、あの店に行きたい」。そう思ってもらえるようそれぞれの店舗が進化を続けており、結果的にリピーターを生み、喫茶文化を次の世代へとつないでいます。

 

京都の日常を支えながら、次の世代へ

前田珈琲のサスタネは、派手な宣言ではなく、「日常を続けるための工夫」そのものでした。喫茶店を“まちの居場所”として守り、必要な分だけつくって無駄を出さず、現場のアイデアを新しいメニューや体験につなげていく。どれも本業の延長線上にあるからこそ、無理なく続いて、結果として地域にも会社にも効いていく——そんな好循環が見えてきました。

サステナビリティのタネは、大きな改革よりも、毎日の仕事の中にあることが多いのかもしれません。

次回も、京都で育つ「それぞれのサスタネ」をお届けします。

 


 

京都市には、SDGsに取り組もうとする事業者・団体の活動を、市が様々な形で後押しする仕組み 「京都SDGsパートナー制度」 があり、前田珈琲もそのメンバーです。
ここから生まれる“ご縁”は、きっと未来につながるはず。登録料などはかからないので、ぜひチェックしてみてください。

京都SDGsパートナー制度のネットワークやつながりを活かし、前田珈琲のように京都に眠るSDGsの資源をビジネスに変えてみませんか?

 

京都SDGsパートナー制度について詳しくはこちら(https://eco.kyoto-u.ac.jp/sdgs/kyoto-times/partnership/)

 

Information
店舗・施設名 前田珈琲 室町本店
住所 京都市中京区蛸薬師通烏丸西入る橋弁慶町236
電話番号 075-255-2588
交通 阪急京都線「烏丸」駅、地下鉄烏丸線「四条」駅より徒歩5分。
ホームページ https://www.maedacoffee.com/

Writerデジスタイル京都スタッフ

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Writerデジスタイル京都スタッフ

タカラサプライコミュニケーションズではたらく京都大好きメンバー。 定番から穴場まで、幅広いKYOTOの情報をお届けします!
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