おでかけ

2026.02.19
(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

ようこそ、おおきに。映画ライター椿屋です。

みなさん、京都お好きですか? ミステリ、お好きですか?

 

『国宝』(2025年/東宝)ブームが続くなか、京都・南座では『曽根崎心中』の上演を控える今日この頃。またひとつ、時代劇と歌舞伎の魅力を存分に味わえる映画が誕生しました。

タイトルは、『木挽町のあだ討ち』。直木賞と山本周五郎賞をW受賞したことでも話題となった永井紗耶子さんの同名小説が原作です。

(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

 

江戸・木挽町にある芝居小屋「森田座」に隣接する空き地で、ある夜、衆目を集める派手な仇討ちが成されました。その1年半後、語り草となった仇討ちの真相を探るべく、ひとりの田舎侍・加瀬総一郎(柄本佑)が、江戸へとやってきます。

(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

 

幾つも腑に落ちない点を抱く総一郎がこの顛末に立ち会った人々に聞き込みを続けるうちに、思わぬ事実が浮き彫りになってくる――。本作は、原作にはないオリジナルキャラクターである総一郎がストーリーテラーとなって、仇討ちの全貌を明るみにしていくミステリ仕立ての時代劇。

飄々としながらもどこかつかみどころのない主人公を柄本佑さんが見事に体現し、彼とふれあう森田座のクセ強な面々を演じる個性派俳優らがユーモアのある人間味豊かなキャラで存分に魅せてくれます。

 

ダイナミックな仇討ちに至るまでの冒頭シーンは必見!

裸一貫から三座の座頭にまで出世した歌舞伎役者・中村仲蔵の一代記を舞台化した『中村忠蔵~歌舞伎王国 下剋上異聞』(主演:藤原竜也)や、第77回文化庁芸術祭賞大賞を受賞したドラマ『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世怪談』(主演:中村勘九郎)など、歌舞伎をモチーフとした作品が続いていたことから、本作のオファーを受けたときは「もういいかな、と思っていた」という源孝志監督。

それでも引き受けることにしたのは、「渡された原作が非常に面白かった」から。

(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

 

――物語の舞台は木挽町(江戸)ですが、撮影は主に京都で行われたそうですね。

 

「東映京都撮影所の最も得意とする時代の物語なので、美術や衣裳など各パートのみんながすごく楽しんで嬉々としてやってた感じです。冒頭の仇討ちまでのシーンをはじめ、芝居も含めて再現されている江戸歌舞伎の風景は、今回の物語の中の見どころのひとつになっていると思います」

 

――なかでも、終演後に雪が降ってきて、森田座を出ていこうとするお客さんたちが広げる傘の花が咲くシーンで、作品の世界観に一気に引き込まれました。

 

「当時の江戸では、芝居が庶民の最高の娯楽なんですよね。そういうことを、あの冒頭のシーンでちゃんと表現したかった。1800年代初頭に、世界であれだけの劇場が立ち並んで場外が栄えていた場所って、ロンドンと江戸にしかなかった。もちろんオペラ座みたいに有名な劇場はあったけど、やっぱり貴族階級の嗜みで。庶民が熱狂してこぞって芝居を観にいく文化は独特だった。劇場の外まで彼らの高揚感が満ちている雰囲気を描きたかったんですよね」

 

(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

 

本物づくしの空間で撮影ができる京都の強み

――本作は、妙心寺や大覚寺、聖護院門跡などでもロケが行われました。監督が感じておられる京都のロケ地の魅力とは、どういった点でしょうか。

 

「京撮の力をもってすれば、スタジオでもあの風景をセットで再現できなくはないんですが……。やっぱり本物が持つ力は桁違い。ロケ地としてよく使われる場所には、聖護院門跡にある狩野派の金碧障壁画をはじめ、重要文化財や国宝級のものが当たり前のようにあります。歴史的価値の高い貴重なものなので、もちろん傷ひとつ付けることだって許されない。それを京都の撮影所のスタッフたちは重々承知している」

(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

 

――長年の信頼があってこそ、そういった貴重な空間での撮影が可能になっているということですね。

 

「例えばね、聖護院門跡で撮った、美濃遠山藩の藩主が参勤交代に出る前のシーン。渾身を集めて大事な一言を伝えるシーンですね。上段の間と大広間に段差があるんですが、そこに入っている木は全て漆塗りなんです。足指の先が当たってもいけないので、そこに完璧なカバーを施して、本番までそれを付けて準備を進めたりね。他にも、重要文化財の襖を、知らない人はついつい全部閉めちゃう。それだって、本来はお寺の人に断ってから閉めるべきもの。さらには、引手のところの金具が裏側に当たれば襖絵が破損する恐れもあるので、必ずその金具を見せるようなところで止めるんですね。止めるってことは、その金具が見えるということ。つまり、見えてもいいようにそれらの金具にも華麗な装飾が施されている。それが書院造といった日本建築のいいところだって、皆が知ってるってことも安心して撮影を進められる要因だと思います」

 

作中にも登場!源監督のイチオシ庭園

――ちなみに、源監督のお好きなロケ地があれば教えてください。

 

「妙心寺の衡梅院(ルビ:こうばいいん)※という塔頭にある庭は綺麗ですね。本作でも、遠山藩江戸下屋敷のシーンで登場しています。廊下が突き出て渡り廊下みたいになった先に茶室があるのも、いい風景です。あとは……以前『京都人の密かな愉しみ』(NHK)のロケで使わせていただいた天球院※も、素敵なロケーションでした」

 

※衡梅院……妙心寺境内南東にある、妙心寺第六世雪江宗深(せっこうそうしん)禅師(1408-1486)の塔所。禅師と4人の弟子を象った庭石のある方丈庭園「四河一源の庭」が見どころ。本堂は1897(明治30)年に国の重要文化財に指定された。〈通常非公開〉

 

※天球院……妙心寺塔頭。1631(寛永8)年、岡山藩主・池田光政が伯母である天球院のために建立した。玄関のある大型方丈形式の本堂(重文)や、加納山楽・山雪の作と伝わる襖絵・杉戸絵、禅寺には珍しい金碧画などが有名。〈通常非公開〉

 

――ロケハンはご自身でなさるタイプですか?

 

「ええ、それはもう必ずやりますね。個人的にはこれまで使ったことのない場所でやってみたいという気持ちがありますが……。最近は、京都も市内だと抜けにビルが見えるとか、ノイズが多かったりもして、やっぱり違和感のない景色を求めて、滋賀県に足を延ばすこともありますね」

 

(c)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (c)2023 永井紗耶子/新潮社

 

2025年は本作とドラマの撮影で4か月ほど京都に滞在されていた源監督。お気に入りの店について訊いてみると、「いい鰻屋を見つけました」とにっこり。なんでも、「東京に長く住んでいるから、蕎麦屋と鮨屋と鰻屋にはうるさくて(笑)。京都に来たときにいい店がないのが悩みだったんだけど、この10年くらいで江戸前の鮨屋と蕎麦屋はいいところを見つけて。鰻屋だけがなかったですよ。でもいい店を見つけたので、長く京都に暮らしても大丈夫だと思います(笑)」とのこと。

そんな源孝志監督が手掛けた『木挽町のあだ討ち』、ぜひ劇場にて、クライマックスから始まる物語の渦に身を委ねてみてください。

 

 

作品情報

『木挽町のあだ討ち』https://kobikicho-movie.jp

2月27日(金)全国公開

出演:柄本佑、渡辺謙、長尾謙杜、北村一輝 ほか

監督・脚本:源孝志

原作:永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)

企画協力:新潮社

配給:東映

【公式SNS】

X(旧Twitter):@kobikicho_movie

Instagram:@kobikicho_movie

Information
店舗・施設名 聖護院門跡
住所 京都市左京区聖護院中町15
電話番号 075-771-1880
営業時間 拝観時間 9:30~16:30(無休)
交通 地下鉄 東西線東山駅より徒歩15分
京阪電車 神宮丸太町駅より徒歩10分
市バス 熊野神社前下車徒歩2~4分
料金 拝観料 無料(「秋の特別公開」大人800円、中高大大学生600円) ※本作のロケ地となった場所は「秋の特別公開」でのみ拝観可能
ホームページ https://www.shogoin.or.jp

Writer椿屋 山田涼子

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Writer椿屋 山田涼子

京都拠点の映画ライター、グルメライター。合言葉は「映画はひとりで、劇場で」。試写とは別に、年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。最近Netflixにまで手を出してしまい、1日24時間では到底足りないと思っている。
X:@tsubakiyagekijo

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