MAGAZINE
こんにちは、この冬に袖を通したコートが30年前から着ていることに時の流れに驚きつつも「着倒れ」DNAが入った京都人を自覚した、デジスタイル京都スタッフのタムラです。
京都服飾文化研究財団 (KCI)ギャラリーで開催中の『原由美子+KCI「女の背広」展』では、
ファッション誌の第一線で活躍してきたスタイリストの原由美子氏が1970年代から90年代にかけて仕事着として愛用した服約20点を、現代の視点で再構成。
寿退社、という言葉が通用していた当時、フリーランスのスタイリストという独立性の高い働き方を選んだ女性の歩みを物語る服を、静かなギャラリー空間でじっくりと体感できます。
男性のスーツ、つまり共布で作った上着とボトムスを指す「背広(セビロ)」。
なかでもビジネス・スーツを表わす言葉としてよく使われてきました。女性の社会進出が明らかなものとなった1980年代以降、働く女性の服装にも「背広」が一般化しました。
この展示では、原由美子氏が「私は『女の背広』を探してきたのかもしれない」と振り返るように、20代後半から確固たる社会的信用を得るまでの約20年間、紺色のジャケットとパンツを主たる仕事着に定めた原氏の悩ましくも楽しい服選びの実相と共に、社会的な自立を目指した当時の女性たちの姿も感じ取ることができます。
時代を超えて響くテーマが、服そのものを通して静かに語りかけてきます。
1945年生まれ。慶應義塾大学卒業後、1970年に雑誌『an an』に翻訳スタッフで参加し、1972年からスタイリストとして活動を開始。
以降、『クロワッサン』、『ELLE JAPON』、『フィガロジャポン』など数多くの女性誌でファッションページを手掛け、パリ・コレクションの取材も長年続けました。現在はファッションディレクターとして、書籍執筆やファッション賞の選考委員など幅広く活動しています。
そんな原氏が、仕事の現場で実際に着用してきた服を振り返り、KCIに寄贈した仕事着を現在のワードローブと共に再スタイリングしたのが今回の展示です。
展示されるのは、原氏が1970年代から90年代にかけて仕事着として愛用したプレタポルテ約20点。イヴ・サンローラン、ジョルジオ・アルマーニ、コム デ ギャルソン、ヨウジヤマモトなど、時代を象徴するブランドの服が並びます。
原氏自身による再スタイリングで、過去の服が現代に呼び戻され、タイムレスな美しさと機能性が際立ちます。40~50年前の服なのに、21世紀の今でも着たいと思える説得力―それは素材や仕立て、デザインの確かさに裏打ちされたものだということが伝わってきます。
特に、日本では土井たか子、世界ではマーガレット・サッチャーといった女性政治家が男性と同等の強さと知性を示した1980年代は「パワー・ドレッシング」の時代。分厚い肩パッド入りのジャケットやパンツ・スーツは、男性優位のビジネスや政治の場で女性が自らの尊厳を守るための “戦闘服”でした。こうした背景を踏まえると、原氏が選んだ仕事着は当時の最先端ファッションというだけでなく、女性の社会的自立にも寄り添うものだったことがわかります。
私たちに親しみのある紺色のジャケットを主体とした企画。一見同じに見えて異なる色や質感、様々なポケットや釦のデザインなど、服のディテールをゆっくり味わうことができます
いま、ファッション業界でもサステイナビリティが重要なテーマにもなっています。原氏の服は決して安価ではありませんが、その分大切に長く着られ、結果的に廃棄物を減らすことにつながるように感じます。
確かな審美眼で服を選ぶことは、サステイナブルな未来につながるのでは?――この展示は、そんな価値観を考えるきっかけにもなるかもしれません。
時代を超えて語りかける服の力を、ぜひ体感してください。
原由美子+KCI「女の背広」展チラシ
*京都服飾文化研究財団(KCI)はワコールの財団法人として1978年に設立。現在は公益財団法人として活動。主に18世紀から現代までの西洋に起源をもつ衣服作品を収集・保存し、その研究結果を展覧会や出版のかたちで公開しています。東京では三菱一号館美術館(丸の内)との共催で「アール・デコとモード─京都服飾文化研究財団コレクションを中心に」を開催中(2025年10月11日(土)- 2026年1月25日(日))
| 店舗・施設名 | KCIギャラリー |
|---|---|
| 住所 | 京都市下京区七条御所ノ内南町103 株式会社ワコール京都ビル 5階 |
| 電話番号 | 075-321-9221 |
| 営業時間 | 2025年12月1日(月)~2026年4月24日(金) 9:30~17:00(最終入館 16:30) 原由美子在廊日: 2026年2月11日(水・祝) 休館日: 土・日・祝日 ※ただし 2月11日(水・祝)、3月20日(金・祝)は開館 年末 年始休館: 12月29日(月)~1月2日(金) |
| 交通 | JR西大路駅・北口より徒歩約1分 |
| 料金 | 無料 |
| ホームページ | https://www.kci.or.jp/gallery/ |
Writerデジスタイル京都スタッフ
![]()
Writerデジスタイル京都スタッフ
タカラサプライコミュニケーションズではたらく京都大好きメンバー。 定番から穴場まで、幅広いKYOTOの情報をお届けします!
X:@digistylekyoto
Facebook:https://www.facebook.com/digistylekyoto/
MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE