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2025.10.06

京都で体験できる、紙や印刷にまつわるワークショップをレポートする「紙と印刷で巡る京都」。

第4回目は、『LETTERPRESS α lot(レタープレス アロット )』の「活版印刷体験」をレポートします。

 

岩倉に佇む、小さな活版印刷工房

『LETTERPRESS α lot(レタープレス アロット )』は、京都・岩倉にある小さな活版印刷工房です。

最寄駅は地下鉄烏丸線「国際会館駅」。駅から歩いて5分ほどの場所で、店主・山口和佳(やまぐちわか)さんが迎えてくださります。

 

体験を行うのは、山口さんのアトリエ。活版印刷のために設計された空間には、骨董屋で買い集めた古道具たちが並び、落ち着いた雰囲気が漂っています。まるで自宅の一室に招かれたよう。

こだわりの詰まったアトリエ

 

押入れには「すだれケース」と呼ばれる活字の入ったケースが収納されています。これは活字が落ちないよう、角度をつけて収納するために作ったオリジナル仕様なのだそう。

印刷機のそばには小さな手洗い場が備えられていて、インクで手が汚れてもすぐに洗えるようになっています。

 

隅々まで活版印刷に合わせて設計されたこのアトリエで、じっくりと体験を楽しむことができます。

 

「活版印刷」とは?

活版印刷とは、凸版にインクをつけて紙に転写するハンコのような印刷方式。一枚一枚手で押して作られるため、機械印刷にはないハンドメイド感と独特の味わいがあります。

LETTERPRESS α lotでは、体験に使う版を「金属活字」「木活字」「樹脂版」の3種類から選ぶことができます。

 

金属活字はひらがな・カタカナ・アルファベット・記号を組み合わせて、2〜3行の言葉を刷ることが可能で、木活字はアルファベットのみ。樹脂版は漢字を使いたい場合やイラストに利用でき、事前にデータを提出する必要があります。

 

アトリエには手キンと呼ばれる印刷機が2台、木活字用の平台活版印刷機が3台揃っており、

平台活版印刷機は鉄工所にオーダーして作ってもらったオリジナルマシンなのだそう。

大型の平台活版印刷機を使用する体験はガレージで行います

 

実際に体験してみました

今回は金属活字を使った体験に挑戦しました。所要時間は約2時間程度、参加料金は5,000円。2時間を超える場合は30分ごとに1,000円追加となります。

 

紙はアトリエで購入できるので、手ぶらで参加OK。もちろんお気に入りの紙を持ち込むこともできますよ。

体験の流れ

(1)インクを選ぶ

まずはインクの色を選びます。今回は紺藍を選びました。

 

(2)活字を選ぶ

様々な種類のフォントから、イメージに合ったものを選びます。今回はギルサンズというフォントにしました。

 

(3)文字を拾う

活字を1文字ずつ探して「文選箱」という箱に入れていきます。ぱっと見ただけでは「d」と「b」を間違えそうですが、活字には「ネッキ」という小さな凹みがあり、それを下に揃えることで自然と向きが整う工夫が施されています。

 

(4)ステッキに活字を組んでいく

ステッキと呼ばれる道具に、活字を入れていきます。まずガイドという、一行の長さを固定するための道具を入れてネジで止めてから、先ほど拾った活字を入れていきます。

「スペーサー」や「木インテル」と呼ばれる道具で字間や行間を調整。小さな隙間は紙で埋め、ガチッと固定します。

 

(5)チェースに組み付ける

組んだ活字を「チェース」と呼ばれる枠に移し、印刷機に装着できるよう整えます。ネジを締めたり、裏から押してズレを確認したり、紙を詰めたりと地道な作業。まさに“組版”の世界です。

 

(6)インクを手キンにつける

印刷機の「インクディスク」にインクを均一に広げます。遅乾性のインクなので、一日中使えるのが特徴なのだそう。

 

(7)校正刷り

試し刷りで仕上がりを確認します。ハンドルを下ろすと、ローラーが活字をかすめるように走り、インクをのせて紙へと転写。その間、ローラーはインクディスクから新たなインクを拾ってきます。まるでからくりのようですね。刷りあがりを見て、必要に応じて圧や位置を微調整します。

 

(8)完成

微調整を重ね、ついに完成!内容にもよりますが、一度の体験で50枚以上のカード印刷も可能とのことです。インクの濃淡やかすれも味わいになり、同じものは二度とできません。

様々な種類の紙に印刷してみると楽しいですよ

 

(9)片付け

最後は活字をきれいに拭き、すだれケースへ戻して終了。体験はここまで含めてワンセットです。

 

こうして活版印刷のプロセスを最初から最後まで、山口さんと一対一でじっくり体験できるのが、LETTERPRESS α lotの大きな魅力だと感じました。

 

ライフワークとしての活版印刷

山口さんが活版印刷を始めるきっかけになったのは、「Helvetica forever: Story of a Typeface ヘルベチカ展」。展示を見て「自分でも活版印刷をやってみたい」と思い立ち、東京のワークショップに通いながら印刷機が手に入る日を待ったといいます。

やがて印刷機が手に入り、2010年に自宅で印刷を開始。2013年にはアトリエを完成させてワークショップを始め、活動は今年で15年目を迎えます。「活版印刷はライフワークです」と山口さん。

 

「圧や紙の厚み、位置でまったく印象が変わるのが面白いですよね。何にでも刷れるのでオリジナルグッズや、ZINEの表紙を作る人もいますよ。ぜひいろんなものを試してほしいです。」

店主の山口さん

 

LETTERPRESS α lotには、メッセージカードやぽち袋など普段づかいできるアイテムのほか、褒め言葉をちぎって渡せる手帳「ホメテチョ〜」といったユニークなアイテムも並んでいます。懐かしさと可愛らしさが同居する活版小物は、暮らしに小さな彩りを添えてくれそう。

活版印刷をじっくり体験できる『LETTERPRESS α lot』のワークショップ。所要時間は約2時間程度、参加料金は5,000円で、オリジナルのカードやポスターをはじめとしたオリジナル作品が作れます。

 

気になる方はぜひ、下記ページまたはInstagramのDMからお問い合わせくださいね。

https://letterpressalot.jimdofree.com/contact/

 

写真:はつお(https://www.instagram.com/hatuo/

 

Information
店舗・施設名 LETTERPRESS α lot(レタープレス アロット )
住所 非公開(体験者にのみお知らせ)
電話番号 非公開(体験者にのみお知らせ)
営業時間 応相談
定休日:不定休
交通 地下鉄烏丸線「国際会館駅」より徒歩約5分
ホームページ https://letterpressalot.jimdofree.com/

Writer伊賀朝代

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Writer伊賀朝代

ライター。1歳と5歳の子どもたちと、本と紙ものに囲まれて暮らす日々。学生時代を過ごした京都が忘れられず、15年以上通い続けています。ZINEを独立系書店に置いてもらう傍ら、本屋をひらく準備中。
WEB:https://yo-yo.site

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