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今回ご紹介するのは、琵琶湖と京都市内を結ぶ歴史ある水路を船でたどる旅。観光地の喧騒から離れた水の道が、静かで知的な“その先の京都”へと案内してくれます。
まいどお世話になります。 うまいものと焼酎ハイボールをこよなく愛する、 デジスタイル京都のライター・ツルサンです。
桜の開花宣言が聞こえはじめた三月下旬の京都。
春の気配を感じながらもまだ肌寒い、そんな一日に体験したのが、琵琶湖から京都へ続く巨大インフラ水路「琵琶湖疏水」 を巡る船旅です。
明治時代、 山を貫き、 手掘りで築かれた壮大な水の道。日本の近代化を支えたこの歴史的遺産を、水上からじっくりとたどる琵琶湖疏水船は、景色と歴史を満喫できる特別な体験でした。
琵琶湖疏水船は、春と秋だけに運航される、限られた期間の観光船。
今回乗船したのは、琵琶湖側(大津港・三井寺)から京都市内(蹴上)へ向かう下り便(午前便)。水の流れとともに、京都と近代日本の物語をさかのぼる船旅が始まります。
船が第一疏水を進み、やがて現れるのが「国宝」に指定された第一トンネル。
全長約2.4km。琵琶湖疏水の中でも、特に難工事とされた区間です。
第一トンネル洞門(出入口)~トンネルの奥の向こう側に出口の明かりが見える
トンネル内部に入ると、空気がひんやりと変わり、音がすっと吸い込まれていきます。
ちょうどトンネルの中央あたりに差し掛かる暗闇の中で案内されたのが、竪坑(たてこう)の存在でした。
全長約2.4kmにも及ぶトンネルを短工期で掘り進めるために採用された竪坑は、山の頂上から真下に約47m(!)も下へ掘り進められた、人の通り道。当時の土木技術の工夫と、人の手による作業の積み重ねが、ここに凝縮されています。
その竪坑の真下を通る一瞬のチャンスで見上げると、はるか上方に小さく外の光が見えました。その瞬間、不思議と安堵と高揚が同時に込み上げてきます。
閉ざされた空間と光のコントラストが、思いがけず心を強く揺さぶる。
「ここが一番印象に残った」という声が多いのも、深くうなずける体験でした。
トンネルに入るとさらに気温が下がる
鍬とダイナマイトで掘り進めた竪坑に身震いする
トンネルを抜け、山科エリアへ入ると、景色は一気にやわらぎます。
水路は緩やかにカーブしながら進み、かつて船溜まりとして使われていた場所や、戦前から昭和30年代ごろまで子供たちのプール代わりとして親しまれていた名残など、疏水が人々の暮らしと共にあった歴史が、静かに顔をのぞかせます。
春は桜や菜の花、秋は紅葉。日々の生活の息遣いがきこえる街並みを進む。
観光地の中心とはほどよい距離があり、混雑とは無縁の穏やかな風景が広がります。
「京都を訪れる理由は、華やかさだけではなく、静けさにもある」
そんなことを改めて実感させてくれる時間でした。
一足先に満開を迎える山科の桜
今回、特に印象に残ったのがガイドさんの説明です。
歴史や自然、建造物の解説に、さりげないユーモアを交えながら案内してくださいます。
約1時間半の乗船時間が驚くほどあっという間でした。
琵琶湖疏水船は、単なる遊覧船ではありません。
背景にあるストーリーや技術を知ることで、体験の密度が大きく変わります。過剰な演出ではなく、知的好奇心を心地よく刺激する案内こそが、この船旅の価値をしっかりと支えていると感じました。
岸壁の荷詰場の木戸柱が残っている。ガイドさんの解説なしにはなかなか気づかない
船を降りて陸に立つと、いつもの京都の景色に戻る。はずなのに、どこか見え方が違う感じがします。
琵琶湖疏水は、もともと物流や産業を支えるために造られた多目的用途インフラ水路でした。しかし交通の発達と共に1951年(昭和26年)にその物流(水運)の役目を終えました。それから約67年の時を経た2018年(平成30年)、観光船として復活しました。
さらに2025年(令和7年)には、先ほどの第一トンネルをはじめ水路閣やインクラインなど、琵琶湖疏水を構成する諸施設が国宝・重要文化財に指定されました。
船に乗って強く感じたのは「すごい歴史」というよりも、「今も静かに流れ続けている時間」でした。
過去の偉業が、決して過去のままではなく、今の私たちの体験として自然につながっている。
それを実感できることこそが、琵琶湖疏水クルーズの最大の魅力だと思います。
観光地を巡り尽くした方にも、少し違った角度から京都を知りたい方にもおすすめしたい、水の回廊の旅です。
第三トンネル西口『美哉山河』(三条実美)~トンネルの入り口毎に明治政府の要人の賛辞と思想が刻まれている
琵琶湖疏水船は全4隻が運航している。12人乗りで特別な船旅が味わえる
乗船前に案内されたのは、約5分間の映像視聴。
琵琶湖疏水の建設を主導した北垣国道・京都府知事と、当時21歳で技術の中核を担った田邉朔朗技師を軸に描かれた、少しドラマ仕立ての内容です。
事前にこの物語を知ってから船に乗ると、これから通るトンネルや水路が、単なる風景ではなく「意味を持つ空間」として立ち上がってきます。
歴史を“知る”のではなく、“感じる”準備運動のような5分間。
体験型観光としての期待感を、静かに高めてくれる仕掛けです。
「大津閘門」を通過する稀少なルート(大津港~蹴上)も発売されています(運航日限定)
閘門(こうもん)とは水位の異なる水域を安全に行き来するための設備で、中に入った船の周囲で水位が静かに調整されていく様子を、間近で体感できます。
大津港~蹴上ルートで見ることのできる風景
水位が下がり、疏水側の扉が静かに開いた瞬間、正面に現れる直線的な疏水と第一トンネルの洞門に一気に引き込まれる。疏水船ならではのハイライトの一つです。
| 店舗・施設名 | 琵琶湖疏水船 蹴上乗下船場 |
|---|---|
| 営業時間 | 春の期間限定運航 〔2026年 春〕3月26日(木)~6月14日(日)※運休日あり |
| 料金 | 乗船区間・日程により設定(※最新情報は公式サイトを確認ください) |
| ホームページ | https://biwakososui.kyoto.travel/ |
Writerデジスタイル京都スタッフ
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Writerデジスタイル京都スタッフ
タカラサプライコミュニケーションズではたらく京都大好きメンバー。 定番から穴場まで、幅広いKYOTOの情報をお届けします!
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