MAGAZINEいつもと同じ病院のロビーなのに、今日は空気がまるで違う。
子どもたちの笑い声、医療スタッフさんの表情もいつもよりずっとやわらかい。
伏見区深草にある京都医療センターは、地域医療の中心的役割を担う総合病院。
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10月25日、その京都医療センターで、初めて小中学生を対象に医療の仕事を身近に感じてもらうための「わくわく!病院お仕事体験フェア ハロー!ホスピタル」が行われました。
「総合病院は紹介状がないと入りづらい場所と思われがちですが、実は地域の皆さんのそばにありたい存在なんです」――
そんな想いから生まれたのが、この「ハロー!ホスピタル」
まん丸顔の地域ライターふみちーが、白衣の向こうにある“地域のやさしさ”を感じられた1日を取材してきました。
会場となったのは、普段患者さんが検査や診察で訪れる病院のフロア、そして手術室など。
そんな場所に、この日は体験ブースや見学ブースが並びました。
医療の現場が、地域の人たちとの交流の場へと変わった1日でした。
普段は圧倒的に大人が多い場所に、子どもたちもたくさんいたことが、とても新鮮に感じられました。
受付を済ませて…これからわくわく体験のはじまりはじまり☆
館内のイベントエリアは自由に出入りでき、回る順番も自由。
手術部ではドラマでも出てくる、最新鋭の内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」の見学!
これは子どもより大人のほうが興奮していました。
普段使われている手術室に入れること自体、貴重な経験です。
サージョンコンソールと呼ばれる操作ボックスにも座ることができ、アドレナリン大放出!笑
手術で使う器具も、外科の先生にレクチャーを受けながら触って体験。
続いて、糖尿病内科医師による糖尿病についてのお話。
今日は大人だけじゃなく子どもも参加しているということで、先生はわかりやすく糖分について、栄養について、糖尿病について説明してくださいました。
続いて、放射線科による、箱の中身を当てるクイズ。
普段使っているもの、食べているものに放射線を通すとどう見えるか。
放射線に限らず、ものの見方について教わった気がします。
続いて消化器内科による、胃カメラ体験ブース。
ここでは消化器内科医の説明を受けながら、実際に内視鏡を触ることができました。
こういう体験、なかなかできないので貴重だと感じました。
少し歩くと、次は病理診断科・臨床検査科のブース。
ここでは診断用に処理して作られたスライドを見ながら、実際に体内にある臓器の細胞を見ることができました。
体内ミクロの世界をのぞく機会もそうそうないので、自分の体の組織細胞がどんな形で、核はどんな形をしているのかなど、来場者は技師の説明を受けながら真剣に顕微鏡をのぞいていました。
そして、小児科前。
ここは赤ちゃんのお世話体験ブース。
赤ちゃんの人形を使って、沐浴のしかた、おむつの付け方、お着替えの仕方を体験できました。
人形とわかっていても、慎重に、一生懸命に体験している姿がとても印象的でした。
待合の壁には、看護師の方が作られたポスター展示。
いつもの殺風景な壁がとても華やか。かつ、知らなかった各科の裏側を知ることができて、貴重な発表ばかりでした。
忙しいルーティンの仕事の合間に作ってくださったと思うと、頭が下がります。
続いて、看護学校の学生さんによる、採血体験ブース。
看護学生の方が実際に使っている採血腕模型を使って、シリンジ(注射器)採血を体験できました。
普段は受ける側でも、実際やってみると、模型であっても冷や汗をかくほど緊張。
会計待合所は、腹腔鏡手術体験エリアになっていました。
手術中は麻酔が効いているのでどんな風に行われているか見ることができません。
ここでは機器を見るだけでなく、医師が練習用として使っている機器で体験することができ、大変貴重な機会でした。
これら以外にも、院長先生による京都医療センターの歴史についてのお話、簡単な健康診断を体験できるブース、聴診器で体の音を聴くブース、いろいろな楽器を使う音楽療法体験、栄養管理室の食事バランスチェック体験、薬剤部によるお菓子を使ったお薬分包やシロップ薬作成体験ブースなど、病院のありとあらゆる業務体験ができるブースが盛りだくさんでした。
そして、ところどころにクイズコーナーがあり、全問正解者はオリジナルエコバッグを作成できるお楽しみコーナーも。
京都医療センターとして初の試みとのことで、今回このイベントを企画されたスタッフの方にインタビューをさせていただきました。
― 今回体験イベントを開催された一番の目的やきっかけを教えてください。
「病院という場所を、地域の方々にもっと身近に感じてもらいたいという思いから企画しました。特に子どもたちに、医療の仕事を身近に感じてもらうことで、将来の夢や関心を広げるきっかけになれば嬉しいですね。」
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― 工夫された点はどんなことでしたか?
「病院というと少し緊張してしまう方も多いので、まずは「楽しい」「面白そう」と思ってもらえるような体験を重視しました。
“クイズラリー”では、院内に設置された14問のクイズに全問正解するとエコバッグがもらえる仕掛けにしたり、白衣やナース服を着て写真を撮れるようにしたりと、遊びの要素を取り入れました。
また、小さなお子さんから大人まで楽しめるよう、難しすぎず、でも実際の医療現場を感じられるような体験内容を各科・各職種で工夫してもらいました。」
― 体験イベントに向けて苦労された点はどういうところですか?
「一番は安全面の配慮です。普段は限られた人しか入れないエリアを一般公開するため、動線確認、機器の取り扱い、衛生面の対策など、慎重に確認を重ねました。
また、初めての開催ということで、どのくらいの来場者数になるのかが読めず、準備や人員配置も手探りでした。結果的に440名もの方にご来場いただき、嬉しい驚きとともに、来年に向けた課題も見えてきました。」
― 体験イベントを通じて、来場者の方々の病院に対するイメージがどのように変わってほしいと期待されていますか?
「“病院=怖い・堅い”という印象が少しでもやわらぎ、「医療スタッフって親しみやすい」「医療の仕事ってかっこいい」と感じてもらえたら嬉しいです。
実際に医師や看護師、薬剤師、放射線技師などが直接来場者と会話することで、病院が地域に開かれた場所だと感じてもらえるきっかけになることを期待しています。」
― 手術室や検査室の見学、医療機器の体験など、普段見ることのできない医療現場を公開した意図は何ですか?
「“病院の中はどうなっているの?”という素朴な疑問に応えたいという思いがありました。
手術室や検査室は普段立ち入れませんが、実際に見ていただくことで、日々の医療がどんな仕組みや人によって支えられているのかを感じてもらえたらと思いました。」
― 子ども向けの「お医者さん・看護師さん体験」で希望されることは何でしょうか?
「医療への関心を持つきっかけになってほしいというのが一番です。
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白衣を着るだけでも子どもたちはとても嬉しそうで、実際に聴診器を使ってみたり、手術用の器具を動かしたりするうちに、「将来はお医者さんになりたい」と言ってくれるお子さんもいました。楽しみながら学べる体験を通して、“医療=人を助ける仕事”ということを感じてもらえたら嬉しいです。」
― 医療従事者の方々が直接来場者と交流する機会を設けたのは、どのような思いからでしたか?
「普段、診察や検査では短い時間しか関わることができません。
今回はゆっくり話したり質問に答えたりすることで、病院の人たちを身近に感じてもらえるようにしたいと考えました。職員からも「地域の方とこんなに直接お話ししたのは初めて」という声が多くあり、双方向の交流ができたのがとても印象的でした。」
― 体験イベントを通して、病院で働く様々な職種の魅力をどのように伝えたいとお考えですか?
「医師や看護師だけでなく、薬剤師、放射線技師、検査技師、理学療法士、管理栄養士、音楽療法士、事務職員、看護学生など、病院には本当に多くの職種の人たちが連携して働いています。
こういった、さまざまな専門性をもったスタッフが共同して初めて医療が成り立っていることを知ってもらえればと思います。
当日は、どの職種も“自分たちの仕事を楽しそうに伝える”ことを意識していて、その熱意が来場者にも伝わったのではないかと思います。」
― 普段の診療ではなかなか伝えきれない、病院や医療の「こだわり」や「思い」を、どのように伝えられたと感じていますか?
「今回のように、リラックスした雰囲気の中でお話しできたことで、医療の現場がどれだけチームワークを大切にしているかを知っていただけたと思います。
また、私たちが日々大切にしている“安全・信頼・地域とのつながり”という姿勢を、体験を通して自然に感じてもらえたのではないでしょうか。」
― 地域住民の健康増進や病気の予防に対して、今後どのような貢献をしていきたいとお考えですか?
「今後も、健康講座や出前講座(医師や看護師、薬剤師などが地域に出向いて健康や医療について行う講座)などを通して、病気になる前の「予防」にも力を入れていきたいと思っています。
また、子どもたちへの啓発活動や、高齢者の方への健康支援など、年齢に合わせた形で地域の健康を支える活動を続けていきたいです。」
― 体験イベントを終えて、病院のスタッフの方々からどのような感想がありましたか?
「「子どもたちの笑顔に元気をもらった」「自分の仕事を改めて誇りに思えた」といった声が多くありました。
普段は緊張感を持った対応になりがちですが、今回のように地域の方々と触れ合う時間は職員にとっても貴重な経験になりました。」
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― 今後もこのようなイベントを継続的に開催されるご予定はありますか?
「ぜひ継続していきたいと考えています。今回いただいたアンケートでも「来年もぜひ開催してほしい」という声がとても多く、職員のモチベーションにもつながりました。
地域と病院をつなぐ恒例行事として根付かせていけたらと思っています。」
今回の体験イベントで、来場者からは、「先生や看護師さんが優しく教えてくれて嬉しかった」「普段見られない場所が見られて感動した」「子どもが『また行きたい』と言っています」など、温かいコメントがたくさんありました。
また、「医療の仕事に興味を持った」「次は違う体験もしてみたい」といった声もあったとのことで、病院からのメッセージや想いが伝わったことが、取材をしていた私もうれしく感じました。
普段は絶対に「見られない、入れない、触れられない」体験は、子どもだけでなく大人にとっても、なににも代えられない貴重な経験となりました。
病院という場所が、少しだけ身近に感じられた日。
そこには、地域と医療とをつなぐ、あたたかな架け橋が確かに存在しました。
取材にご協力くださいました、京都医療センタースタッフの皆さま、ご参加された皆さま、本当にありがとうございました。
| 店舗・施設名 | 独立行政法人国立病院機構 京都医療センター |
|---|---|
| 住所 | 京都市伏見区深草向畑町1-1 |
| 電話番号 | 075-641-9161 |
| 営業時間 | AM8:30~AM11:00 休診日:土・日・祝祭日・年末年始(救急救命は24時間365日対応) |
| 交通 | 京阪本線「藤森」駅下車 徒歩8分 JR奈良線「JR藤森」駅下車 徒歩12分 近鉄・地下鉄「竹田駅」東口バス乗り場 約10分 京阪バス 2(醍醐竹田線)系統 醍醐バスターミナル行「京都医療センター」下車すぐ |
| ホームページ | https://kyoto.hosp.go.jp/ |
Writerふみちー
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Writerふみちー
文具と、ついつい通ってしまうカフェでのソロ活が愉しみ。
臨床検査技師×消防団員の地域ライターです。健康・暮らし・地域の「ちょっと役立つ・おもしろい」ことを、シンプルでわかりやすい文体でお届けすることがモットーです。
読んだ方の日々に、ほんのり彩りを。“まんまる顔のゆるキャラ風”が目印です。
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