おでかけ

2025.11.05

こんにちは!生まれも育ちも、そして勤務先も伏見──地元愛たっぷりのデジスタイル京都スタッフのタムラです。
秋風が心地よくなる10月、神社ではさまざまなお祭りが行われ活気づきます。
威勢の良い掛け声とともに進む御神輿を見ると、こちらまで元気をもらえる気がしますね。

今回は、京都市伏見区の三栖神社で毎年10月に行われる神幸祭「炬火祭(たいまつまつり)」を訪れました。
秋の夜空を焦がす大きな炬火(たいまつ)と、その地域の熱気──その感動を現地からお届けします!

壬申の乱に由来する伝承─炬火祭の起源と復活

炬火祭の起源は、飛鳥時代の壬申(じんしん)の乱(672年)にさかのぼります。
大海人皇子(後の天武天皇)が近江朝廷との決戦に向かう途中、三栖の地を通過した際、住民がかがり火を灯して夜道を照らし歓迎したと、いう伝承が残っています。
三栖神社には天武天皇が祭神として祀られています。

昭和29年を最後に一度途絶えたこの祭りは、平成元年に35年ぶりに復活。
三栖神社祭礼実行委員会 委員長の内藤さんによると、継承にはギリギリのタイミングだったそうです。

平成8年には「京都市登録無形民俗文化財」に指定され、今では地域の誇りとして受け継がれています。

宇治川の恵みが燃える─大炬火(おおたいまつ)の迫力

祭りの主役ともいえる「大炬火」は、宇治川の河川敷に自生するヨシ(葭)を束ねて作られた巨大な松明。

直径約1.2m、長さ約4m、重さは約1トンにもなり、32人の男衆によって担がれます。
夜の街を炎と熱気で包み込むその姿は圧巻です。

ヨシ原を守る人々─自然と祭りのつながり

話は祭りと少しそれますが、このヨシはすだれや茅葺屋根の素材としても知られ、観月橋下流3キロにわたる広大なヨシ原に自生しています。

巨椋(おぐら)大橋から見たヨシ原

またヨシ原は希少植物や動物の生息地でもあり、ツバメのねぐらとしても重要な場所です。
この自然を守るため、「宇治川のヨシ原を守るネットワーク」が地元有志や野鳥や植物を観測する同好会によって活動を続けています。

祭りで使われる炬火が、自然と人の心をつなぐ役目も担っていることに、炬火祭の奥深さを改めて実感してしまいます。

1年がかりの準備─火除け打ち込みの手仕事

炬火祭の準備は、三栖神社氏子さん・他有志の方によって1年がかりで行われます。
祭りが終わるとすぐに次回の炬火づくりが始まり(!)、ヨシの刈り取りから炬火の芯や穂の製作まで全て手作業で進められます。

祭り前日には、担ぎ手を炎から守る「火除け打ち込み」という作業が行われます。

「火除け束」を芯に差し込む「火除け打ち込み」は1日がかりの作業

火除け用に宇治川に自生する水分を含んだススキを束ねて防炎シートの役割として使用します。
担ぎ手は防火服ではなく、法被と鉢巻き姿だけであの熱い炬火を担ぎ祭りに挑むため、覚悟と誇りがないとできない神事だなと思いました。

5本のススキの束をわらで巻いている様子。祇園祭・鷹山の理事である森さんが、わらの巻き方などの技術を惜しみなく伝授している姿に、祭りを超えた人のつながりを感じます。

夜空を焦がす瞬間─祭りのクライマックス

宮司による関係者へのお祓いが終わると、御旅所では「神火」という文字が書かれた箱を持った三栖神社祭礼実行委員会 炬火部長の林さんが炬火の到着を真剣な面持ちで待ちます。

19時、御旅所で手炬火に点火された火が三栖会館へと運ばれます。

普段、火を見る機会がないせいか、手炬火の勢いよく燃える炎だけでもドキドキしてきます。

三栖神社祭礼実行委員会 委員長の内藤さんからは準備に関わった人々へのねぎらいと見学者への挨拶が。
この日を迎えることに晴々されたように見える表情に、見学者のこっちまで感動が伝わってきます。

鷹山の祇園囃子が鳴り響く荘厳な空気の中、大炬火は竹田街道を北上するため横に倒されます。

そして、いよいよ出発──32人の担ぎ手がたった2本の担ぎ棒で大炬火を担ぎます。
炎と歓声が交錯する中、あたりは熱気に包まれます。

炎の熱気もさることながら、担ぎ手の勢いと歩道からの見物客の熱い歓声が織り交ざり、竹田街道のこの一帯が最高潮に達します。

京橋でフィナーレを迎えた大炬火は立てられ、消火。

炬火祭りの無事を見届けた安堵の表情の炬火部長の林さんに、見学しているこちらまで胸が熱くなります。

沿道の見物者からは氏子の皆さんへ大きな拍手と歓声が上がります。

神聖な祭りとそれにかかわる人達の熱い思い、そしてその地域に住む人達の見守る思い、
まさに「伏見の夜が一年でいちばん熱く燃える日」と言えるでしょう。

※写真は許可を得て撮影しています、一般の方は歩道から見学してください。

 

 

Information
店舗・施設名 三栖神社 神幸祭(炬火祭)
住所 京都市伏見区三栖向町773-1(御旅所・金井戸神社)
営業時間 18:00~21:00
10月の第2日曜日
交通 京阪電車中書島駅から徒歩6分(御旅所・金井戸神社)
ホームページ http://misu.future-support.net/

Writerデジスタイル京都スタッフ

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Writerデジスタイル京都スタッフ

タカラサプライコミュニケーションズではたらく京都大好きメンバー。 定番から穴場まで、幅広いKYOTOの情報をお届けします!
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