おでかけ

2025.08.05

ベランダで椿や紫陽花などを育て、植物たちの日々の変化に一喜一憂しつつ癒されているミズノです。

そんな植物好きの私が今回訪れたのは、京都市左京区の静かな山あいに広がる「京都薬用植物園」。本州の植物園では最大規模のバニラの栽培研究をはじめ、絶滅危惧種を含む薬用植物を中心に、貴重な植物を収集・展示している植物園です。

自然の力と人の知恵が融合するこの場所で、植物の奥深い世界に触れるひとときをご紹介します。

 

知る人ぞ知る京都の薬用植物園

まずは、知る人ぞ知る、京都薬用植物園についてご紹介しましょう。

製薬会社の武田薬品が生物多様性保全に貢献することを目的に、絶滅危惧種を含む重要な薬用・有用植物資源の収集・保全、栽培研究、教育・普及活動を行う植物園で、東京ドーム約2個分に相当する約94,000㎡の広大な敷地には、約2,900種の薬用・有用植物が育成・管理されています。

山々の緑を背景に広がる起伏に富んだ広大な園内

 

保護・保全の観点から通常は非公開ですが、一般の人々にも植物の力とその価値を伝える場として、月に数回の頻度で事前申込制による見学研修会が開催されています。

日本薬局方収載の生薬が採れる植物を展示する中央標本園をはじめ、漢方処方園、温室、樹木園、香辛料園、民間薬園、ツバキ園と、テーマごとに多彩な植物が展示されていますよ。

漢方薬に配合される生薬をまとめて展示する漢方処方園

 

温室では熱帯、亜熱帯地域に自生する薬用・有用植物を展示

 

ツバキ園では1950年代から収集した500種を超える品種を展示

 

ガイドを受けながら、生薬、漢方薬やスパイスなどに活用される薬草などを身近に感じ、植物の秘めた力に驚くとともに、絶滅危惧種とその保全の重要性についても学べる、とても意義深い植物園なのです。

 

「バニラ栽培」への挑戦

ところで、普段、何気なく口にしているスパイスが、どんな花を咲かせて、どの部分を食べているのかなんて、あまり想像できませんよね。植物園の温室では、熱帯、亜熱帯地域のカカオやコショウ、バニラなど、スパイスに使われる植物の生きた姿に実際に触れることができますよ。

その温室でひときわ存在感を放っているのがバニラです。ここで栽培されているバニラは、メキシコ東南部から中南米熱帯地域に分布するつる性植物。甘美な香りは古くから人気が高く、お菓子、煙草、香水などに広く利用されてきました。現在、世界の総生産量の約60%はマダガスカル産で、バニラは世界的にも高い需要を誇る香料植物です。

本州の植物園では最大規模のバニラ棚

 

今回驚いたのは、その生態と私たちがよく知る「バニラ」になるまでの工程。

バニラは非常に繊細な植物で、花は午前中に1回しか咲かず、自然受粉を担う昆虫が日本にはいないため、人の手による人工授粉が必要なのだそう。

バニラの花

 

午前中に咲いた花を一つひとつ手作業で受粉する様子

 

バニラビーンズは、未熟果実を収穫して「キュアリング」という発酵・熟成工程を経て、芳醇な香りの源であるバニリンへと変化したものを元に、私たちがよく知るバニラエッセンスやバニラオイルとなってはじめて、お菓子や香水に用いられているんですね。

結実した未熟果実

 

キュアリング工程を経て甘い香りを放つバニラ
ここでは植物園のバニラと沖縄県産のバニラの香りを嗅ぎ比べることもできる

 

温室の担当をされている坪田勝次さんによると、植物園では1995年からバニラの栽培研が始まり、生育・結実条件について着実な成果を上げていて、この技術と知識を国内の農家や企業に広げるべく、植物園では積極的な情報発信と連携を進めているそうです。

2024年4月には、植物園から沖縄県立北部農林高校の園芸工学科にバニラの苗木15本が贈呈されました。沖縄の温暖な気候はバニラの生育に適していて、北部農林高校ではバニラ栽培の拡大や関連商品の開発を目指すとともに、苗木は琉球大学にも贈られ、品種の保存などに役立てられています。

 

見学研修会で植物の奥深い世界に触れる

普段なかなか目にすることのない珍しい植物に触れ、貴重な体験ができるのが定期的に開催されている見学研修会です。10月の見学会では、バニラが栽培されている温室エリアもコースに含まれていますので、ぜひ参加してみてくださいね。
(ただし、バニラの花や実はシーズンを過ぎていますので、10月の見学研修会では観察することができません)

 

<2025年10月 見学研修会>

開催日:10月25日(土)、26日(日)、27日(月)

時間帯:午前の部(10:00-12:00)、午後の部(13:00-15:00)

定員:各回65名(抽選制)

申し込み受付期間:8/5(火)~9/4(木)

 

見学研修会では、専門ガイドの案内のもと、香辛料園、民間薬園、中央標本園、いきもの共生エリア、温室を巡ります(予定)。

 

・香辛料園:ヨーロッパやアジアのメディカルハーブを展示。香りや形状を楽しめます。

左:ローゼルの果実 、右:サンショウの果実

 

・民間薬園:民間療法で用いられてきた薬草を展示。生活に身近な植物の力を感じられます。

左:ステビアの葉、右:ワタ

 

・中央標本園:日本薬局方に収載されている生薬が採れる植物を展示。

オケラ

 

・いきもの共生エリア:京都府レッドリストに収載されている生物を展示。

左:キクタニギク、右:アユモドキ

 

・温室(バニラ栽培エリア):熱帯・亜熱帯地域に自生する薬用植物などを展示。

左:ストロファンツス・グラツス、右:センナの花

 

見学研修会は事前申込制・抽選制です。以下の公式ページから、希望日程を選んでお申し込みください。

見学研修会の詳細・申し込みはこちら
https://forms.office.com/Pages/ResponsePage.aspx?id=O_b9VyJ-o0WD3NNwAxY6rvcyoMjsRR9HuuiJbf0xId1UQklIUkROR1NNN0NJRUtCUlo1T1E1UFFOTi4u

注意事項:
駐車場は原則利用不可(公共交通機関をご利用ください)
雨天決行、歩きやすい服装でご参加ください

 

秋の京都で、植物の力に触れるひとときを

自然と科学が融合するこの場所で、五感を通して学ぶ体験は、きっと忘れられないものになるはずです。

 

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https://page.line.me/474uetcs?oat__id=5358930&openQrModal=true
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Information
店舗・施設名 武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
住所 〒606-8134 京都市左京区一乗寺竹ノ内町11番地
交通 JR京都駅からお越しの方
・JR京都駅から京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え、松ヶ崎駅下車(タクシーで10分)
・JR京都駅から京都市営地下鉄烏丸線に乗り換え、国際会館駅下車(タクシーで13分)

京阪電車・京阪本線でお越しの方
・京阪電車終点 出町柳駅下車(タクシーで15分)
・京阪電車終点 出町柳駅から叡山電車に乗り換え、修学院駅下車(徒歩20分)
駐車場 駐車場の利用は、台数に限りがあるため、原則お断りします。ただし京都おもいやり駐車場利用証制度の交付確認書類(身体障害者手帳など)をお持ちの方に限りご利用いただけます。申し込みフォームの備考欄にその旨ご記入ください。
料金 無料
お問合せ先 武田薬品工業株式会社 京都薬用植物園
電話番号:075-781-6111
E-Mail:garden.takeda@takeda.com
ホームページ https://www.takeda.com/jp/about/local-locations/botanical-garden/

Writerデジスタイル京都スタッフ

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Writerデジスタイル京都スタッフ

タカラサプライコミュニケーションズではたらく京都大好きメンバー。 定番から穴場まで、幅広いKYOTOの情報をお届けします!
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Facebook:https://www.facebook.com/digistylekyoto/

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