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2019.07.02

京都を舞台にした小説をはじめ、京都を案内する本、京都の歴史や文化について解説してある本などなど、47都道府県ある中でも「京都」ほど取り上げられている都市はないのではないでしょうか。この連載では、京都で活動するライター2人が交代で、何かしらのカタチで京都が登場する本&本を通して見る「京の町」を紹介します!

 

今回の担当=江⾓悠⼦

 

まだまだ、こんなにも知らない京都があるなんて。『京都好き』でガイドブックにはない京都の奥深さに触れる。

 


「京都しあわせ倶楽部 京都好き―あの⼈が⾒た、⾷べたモノ・コト」 早川 茉莉(編)/PHP研究所



 

「京都好き」は多い。かくいう私も京都好きが高じて、大学1年生の終わりに広島の大学から京都の大学へ編入。大学を変えてまで京都に引っ越してきた口なのだ。京都在住22年。仕事で京都のガイドブックの記事を書くこともあり、名所旧跡、老舗、名店は一般の京都人よりは多く訪れているはず。どちらかといえば京都に詳しい方なのでは…と思っていた。でも、早川茉莉さん編集の『京都好き』を読むと、そこには、まだまだ私の知らない京都がたくさんあった。

本書には、山田詠美や伊丹十三、梶井基次郎といった作家、詩人、エッセイストら29人が書いた「京都」が詰まっている。その29人を通してみた京都は、私がふだん見ている京都とは異なる、知らない面がたくさんあった。その人だからこそ出会えたモノ、コト。本書を読むと、「同じ京都にいるのかな」と思うくらい、また違った角度からの京都が楽しめる。さらに、今はもう行くことのできない、昭和の京都に出合うことも可能だ。

本書では6章に分かれ、いろいろな切り口で京都が取り上げられている。2章の「連れて帰りたい、京都|では、書き手が思い入れたっぷりに京都で買える品について紹介しており、京土産の参考にもなりそうだ。イラストレーターの永田萌さんが取り上げるのは、嵯峨豆腐で知られる名店「森嘉」の木綿豆腐。「ほのかに大豆の香りのする、口の中でとろりととけて、のどごしのさわやかなこのうすい黄味をおびた白い立方体。」である豆腐を、「月の桂」のにごり酒とともに味わう様子は、あまりにも美味しそう。「京都の猛暑をきりぬけてこられたのは、ひとえに森嘉の木綿豆腐があるからだ」というエピソードにつられ、私もこの夏、木綿豆腐を買いに行かねばという気にさせられる。

3章の「うん、これはいい。京都」では、作家の池波正太郎さんならではの京都・寺町通の歩き方が紹介されていた。新島旧邸、本山本満寺、京都サンボア…。そして私も大好きな老舗洋菓子店「村上開新堂」を紹介するくだりでは、「この店構えのよさは、まったく、たまらない。立ちつくして見ていて飽きない。つつましやかな、タイル貼りの三階家は、大正から昭和初期の、落ち着いていた町のたたずまいを偲ばせてくれる。」とあり、かの作家も私と同じようにこの建物を愛でていたのだなぁと分かって、感激した。ふだん見知っている「京都」を、作家の文章を通して見るのも楽しい。

本書を読むと、まだまだ知らない京都がこんなにあったのかと驚かされる。編集者解説にあった「京都もまた、気が遠くなるほど長く付き合っても、理解しつくせない街なのだと思う。」という一文にすべてが集約されているような気がする。各人の京都を堪能した後は、果たして「私の京都」とはどんなものだろうと思いを巡らせ、改めて京都を歩きたくなった。そして気が付くともっと京都が好きになっていた。

 

 

本を通して見る「京の町」

 

出町柳にある賀茂大橋から東を向くと見える「大文字山」。3章の「うん、これはいい。京都」では、編集者・ライターである姜尚美さんがこう紹介している。「海沿いの町に生まれ育った人が海の見えない町に暮らすとホームシックになるように、てっぺんにでっかく「大」と書かれた山がない町へ行くと、途端に「東がどっちかわからへん」と心細くなってしまうのが京都の人間である。」

本書で登場するスポットは巻末に地図で紹介されており、気になるお店は訪ねられようになっている。出典も明記してあるので話の前後を読むことも。ガイドブックさながら、この本を片手に京の町を散策するのもいいかもしれない。

Writer江角悠子

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Writer江角悠子

京都在住のライター2人で結成したユニット「コトノトショ」メンバー。編集も手がける。活字中毒で何かしら文字を読んでいないと落ち着かない。インスタグラム(@ezumiyuko_books)に、日々の読書記録をアップ中。
WEB:http://w-koharu.com/
Twitter:@ezumiyuko_books

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