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2025.11.14

京都で体験できる、紙や印刷にまつわるワークショップをレポートする「紙と印刷で巡る京都」。

第5回目は「和詩倶楽部(わしくらぶ)」の「和綴じ体験」をご紹介します。

 

体験スペースを併設した、オリジナルの紙雑貨が並ぶショップ

昭和45年創業の「和詩倶楽部」は、一筆箋やぽち袋など、主に和紙を使用したオリジナルの雑貨を製作・販売するお店。

2025年現在、油小路本店、高台寺店、ジェイアール京都伊勢丹店の3店舗を展開しています。

今回は、体験スペースを併設している「油小路本店」を訪ねました。

 

「和詩倶楽部 油小路本店」は、地下鉄東西線「二条城前駅」から歩いて10分ほど。大通りから一本入った、静かな通り沿いにあります。

二条城や御所からもほど近く、観光の合間に立ち寄るのにもぴったりですよ。

店内に入ると、まず目を引くのは壁面に並んだ大きな棚。一段ずつ、異なる柄の商品が収められています。これらはすべて特注なのだそう。

小さな引き出しには、かわいらしいぽち袋が。引き出しを開けると、思いがけない柄と出会える、まるで宝探しのような楽しさがあります。

これらの紙雑貨は、和詩倶楽部専属のデザイナーやイラストレーターによるオリジナルの製品。「京もの」と呼ばれる伝統の色合いや意匠を大切にしつつ、現代の暮らしに合うようにデザインされています。

頻繁に新作が登場するので、訪れるたびに新しい柄に出会えますよ。

 

和紙とともに歩んだ年月が生み出した、体験ワークショップ

紙の卸業から始まったという和詩倶楽部。創業以来、呉服屋のたとう紙や、京都市内の料理店やお菓子店で使う包み紙、箱などを製作していました。

しかし時代の流れとともに、お店向けの需要が減少。そこで約15年前から、一般の方に向けたオリジナル製品づくりをスタートさせました。

小さな包みに天然のお香を入れた「包み香」

 

その後「紙雑貨を買うだけでなく、楽しい思い出も持って帰っていただきたい」という思いから、紙漉き体験のワークショップを開始。

特注で道具を誂え、スタッフ全員で福井へ紙漉きを学びに行くなど、準備を重ねました。

現在は「紙漉き体験」に加え、2年ほど前に始まった「和綴じ体験」も人気です。

和綴じとは、江戸時代に普及した製本方法で、紙に糸を通して一冊の本を仕立てること。

オリジナルの和綴じ本を、2時間ほどで気軽に作ることができるワークショップです。

 

いざ、和綴じ体験!

和詩倶楽部の和綴じ体験は、紙漉きと和綴じ製本の工程がセットになっています。

自分で漉いた和紙を表紙にした、全20ページの和綴じ本を作れますよ。

体験時間は2時間程度、料金は税込3,300円。8名まで同時に体験できるので、友人や家族連れで訪れるのもおすすめです。

 

体験の流れ

(1)和紙を漉く

和紙の原料となる、楮(こうぞ)という木の皮を漂白したものに、黄蜀葵(とろろあおい)の液と水を合わせた桶が準備されています。

そこに「漉桁(すげた)」という道具を差し込み、縦横にゆらし、厚みを均一に整えます。

 

(2)吸引機で水分を吸い取る

漉き上がった紙を、専用の吸引機で脱水します。

 

(3)染料で絵を描く

漉いた和紙は、本の表紙と裏表紙になります。染料が滲むので、大きく描くと綺麗に仕上がりますよ。

 

(4)和紙を乾燥させる

乾燥機に和紙を貼り付けて乾燥させます。表紙のサイズに合わせて周りを糊付けすれば、紙漉きの工程は完了です。

紙漉き体験のために作られたという特注の乾燥機

 

(5)綴じ糸・角紙・見返しの色紙を選ぶ

本を綴じる糸・本の角を留める角紙・見返しの色紙を選びます。描いたイラストと色の組み合わせを考えるのが楽しいです。

 

(6)本文用紙を整える

本文用紙を折り、バラバラにならないよう先ほどの角紙を角に貼り付けます。この本文用紙も楮(こうぞ)を使用した高級和紙。見返しの色紙も糊付けして、糸を通す準備が完了しました。

 

(7)綴じ穴を開ける

オリジナルのテンプレートに合わせて、きりと木槌で綴じ穴を開けます。力は不要ですが、集中力が試されます。

 

(8)綴じ糸で縫う

「四つ目綴じ」という綴じ方で本を綴じていきます。少し難しそうに見えましたが、スタッフの方が丁寧に教えてくださるので安心です。

 

(9)完成!

世界に一つだけの和綴じ本ができあがりました。これから何を書こうか、想像がふくらみます。袋に入れて渡していただけるのも嬉しいポイント。

和紙の温もりを感じながら、目の前の作業にじっくり集中する、とても貴重な体験でした。

 

和紙の温かみとオリジナルデザインが織りなす、和詩倶楽部らしさ

和詩倶楽部の体験ワークショップは、年末年始やお盆を除きほぼ毎日開催されており、年間およそ1,000人が訪れるのだそう。

修学旅行生、海外からの旅行客に加え、小さいお子様も体験可能ということで、親子連れも多いのだとか。

特に多いのは文具が好きな女性たち。オリジナルの紙雑貨や体験の魅力に惹かれ、和詩倶楽部を目指して京都へ来られる方も少なくないのだそう。

「和紙の温かみと、独自のデザインを掛け合わせたものづくりが和詩倶楽部らしさです。それをこれからも大切にしていきたいですね」と、和詩倶楽部の廣谷さんは話します。

より和紙を身近に感じられる新しい企画も、現在進行中とのこと。気になる方は、ぜひ公式SNSをチェックしてみてください。

紙漉きと和綴じ製本が体験できる、和詩倶楽部の「和綴じ体験」。

 

概要をおさらいすると、所要時間は約2時間程度、参加料金は税込3,300円で、オリジナルの和綴じ本が作れます。

和紙の温もりに触れながら、世界に一冊だけの「自分の本」を作ってみてはいかがでしょうか。

気になる方はぜひ、下記ページからお申し込みくださいね。

https://www.washiclub.jp/watoji/

 

写真:はつお(https://www.instagram.com/hatuo/

Information
店舗・施設名 和詩倶楽部 油小路本店
住所 京都市中京区油小路通二条上る薬屋町593番地 スガビル1F
電話番号 075-213-1477
営業時間 年中無休(お盆・年末年始を除く)
交通 京都市営地下鉄東西線 二条城前駅 徒歩約10分
ホームページ https://www.washiclub.jp/

Writer伊賀朝代

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Writer伊賀朝代

ライター。1歳と5歳の子どもたちと、本と紙ものに囲まれて暮らす日々。学生時代を過ごした京都が忘れられず、15年以上通い続けています。ZINEを独立系書店に置いてもらう傍ら、本屋をひらく準備中。
WEB:https://yo-yo.site

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