2025.10.02
イラスト:中川学

ようこそ、おおきに。映画ライター椿屋です。

みなさん、京都お好きですか? 芸能、お好きですか?

 

今回は、11月に開校を予定し、現在第1期生募集中の「アジアシネマアカデミー京都」についてご案内いたしましょう。

未来の日本映画界を背負って立つ若き人材を育成・輩出する本格的な映画人養成スクールが京都に誕生すると聞きつけ、総合プロデューサー・三谷一夫氏が登壇する事前ワークショップに参加してきたのでございます。

 

京都から世界へ!アジア視点の映画人を育てる

総合プロデューサーを務める三谷氏は、これまで長らく、主に東京で映画に関わる企画やクリエイター育成に携わってきた映画人のおひとりです。金融業界から映画の世界へ転身後、京都が舞台となった映画『パッチギ!』(2005年/シネカノン)や、いま大ブームの『国宝』を生んだ李相日監督が手掛けた『フラガール』(2006年/シネカノン)など多くの名作を生んだ映画会社に身を置き、2019年に映画会社「映画24区(キネマ旬報企画)」を立ち上げた御仁。近年の企画・プロデュース作品は、『フィリピンパブ嬢の社会学』(2024年/KYO+)『道草キッチン』(2025年/KYO+)『ハローマイフレンド』(2025年/映画24区)などがあります。

 

そんな三谷氏が中心となって、芸能が根付く京都のまちでの本格的なものづくり&映画に関わる人材育成に挑戦すべく、第一線で活躍する映画のプロたちが学びの場をプロデュースする「アジアシネマアカデミー京都」〈https://acak.jp〉では、アジア視点でのものづくり思考をもつ俳優・監督・脚本家・プロデューサーの輩出を目的とした実践的指導が行われます。

現在募集中の第1期は、「俳優クラス」(全20回)と「企画・プロデュースクラス」(全10回)の2クラスが用意され、互いの受講生が無料で聴講できるため、職域の垣根を超えた相互的な学びを得られることが最大の特徴です。これはお得!

 

現場を知り尽くすプロ講師による事前体験

10月1日からの二次エントリー期間に先駆け、9月23日に行われた実践的学びが体験できるワークショップの潜入リポートをお届けいたしますね。

「強い映画をつくるための映画人の育成」を目指すアカデミーであることの説明後、参加者の簡単な自己紹介が行われました。

この日の参加者は7名。現役の大学生など20歳前後の若者たちです。全くの初心者、芸術系の大学で演技を学ぶ現役学生、学生時代に演劇をかじったけれどいまは会社員をしつつもう一度役者を目指したい人など、さまざまなスキルを持つ者が集いました。

 

「ものづくりの感覚」について語られるターンでは、「俳優がひとりで出来ることはそんなに多くない。だからこそ、いろんな人たちと一緒につくり上げていく、チームで動くことが大事」など、役者という仕事に関わらずどんな職業でも必要となる姿勢や考え方についての教えが盛りだくさん。

脚本読解力についての講義では、「いかに深くアプローチしてシナリオを読み解くことができるかが演技の鍵だ」と訴える三谷氏。一本の映画が企画から公開までどんなスケジュールで進んでいくのかを図解しつつ、俳優が現場に入るタイミングや撮影までに準備する期間が短いことなどから、全体像を把握する視野の広さの重要性を説きます。

 

本物の脚本を使った実践的なアプローチ指南

次いで、実際に京都で撮影された映画『父のこころ』(2014年/シマフィルム・映画24区)の決定稿を教材として、ワークを実施。

シナリオをしっかり読み込み、「3行ストーリー」で要約し、「外的葛藤と内的葛藤」を炙り出し、もっとも大事なシーン(スルーライン)を見つける作業に取り組みます。これ、国語科講師の草鞋を履くわたくしでも大変タメになるワークでございました。なるほど!の連発。

 

脚本への理解が深まったところで、休憩を挟んで、演技の実践です。三谷氏が提案したのは、長らく不在だった父が急に帰ってきたことについて兄と妹がリビングで話しているシーン。

「台本は見ないで」「言い回しは変えてもいい」「あるものをどう使おうが、場所を移動しようが自由に」「時間は気にせず」といった三谷氏の助言のもと、回を重ねるうちにナチュラルな芝居に。ちょっとしたアドバイスが彼らの演技の幅を広げていきました。

せっかくなので、わたくしも飛び入り参加! ふたりの母親役に等身大で挑んでまいりました(子どもいませんけど!)。三谷氏から、「たぁだぁいま~」の入りが良かったとお褒めの言葉を頂戴し、内心でガッツポーズしたのはここだけの話でございます。

 

学びの場は「落語発祥の地」で知られる誓願寺

新京極六角に建つ誓願寺は、落語発祥の地として有名な寺院。同寺の第55世法主・安楽庵策伝上人は優れた説教師であり、ときとして小難しくなりがちな説教に笑い話を加え、人々に分かりやすく、親しみやすく伝えていました。それらの話を集めた書物『醒睡笑(ルビ:せいすいしょう)』が後の世で落語のネタ本となったことから、上人は「落語の祖」と呼ばれるようになり、誓願寺が落語の発祥地として知られるようになったのです。

 

同寺がある新京極商店街は京都観光のスポットとしても人気ですが、ロケやPRイベントでも使われています。映画『天使の卵』(2006年/松竹)では、大晦日に主人公(市原隼人)が工事現場の先輩と酔って歩くシーンが撮影されました。

『舞妓はレディ』(2014年/東宝)のお礼参りイベントでは、大入り袋を配布しながら商店街を練り歩き、芸事の成就にご利益があるとされる同寺へ成功祈願の扇子を奉納。また、『決算!忠臣蔵』(2019年/松竹)では同商店街で京都凱旋お練りイベントが行われました。

 

最後に、映画人から見た京のまちについて訊いてみると――

「京都文化博物館や太秦映画村といった資料が豊富な場所や実際に映画がつくられている場所へ足を運んで、アウトプットのために必要なインプットに時間をかけられるのは京都ならでは。京都(関西)はゆっくりとした時間が流れているため、意識次第でいい経験を積むことができる。実はいろんなものが充実している“映画のまち”で関西初となるアカデミーを開校することができ、芸能上達にご利益のある誓願寺さんをお借りできて、これからが楽しみです」(三谷氏談)

Information
店舗・施設名 誓願寺
住所 京都市中京区新京極桜之町453
電話番号 075-221-0958
営業時間 拝観時間 9:00~17:00(無休)
交通 阪急 京都河原町駅より徒歩5分
地下鉄東西線 京都市役所前駅より徒歩5分
市バス・京都バス 河原町四条/河原町三条より徒歩5分
京阪 三条駅より徒歩10分
料金 拝観料 無料
ホームページ https://www.fukakusa.or.jp/smt/

Writer椿屋 山田涼子

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Writer椿屋 山田涼子

京都拠点の映画ライター、グルメライター。合言葉は「映画はひとりで、劇場で」。試写とは別に、年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。最近Netflixにまで手を出してしまい、1日24時間では到底足りないと思っている。
X:@tsubakiyagekijo

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