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【舞台挨拶】劇場版『四畳半タイムマシンブルース』特別上映会後、劇団ヨーロッパ企画座付作家の上田誠氏に独占取材!

2022/09/30

ようこそ、おおきに。映画ライター椿屋です。

みなさん、京都お好きですか? コラボ、お好きですか?

 

いやはや、恐ろしく暑い夏がようやっと終わろうとしておりますね……。そんな晩夏にもってこいのアツ~いアニメーションが、9月30日より3週間限定で劇場公開されます。

その名も『四畳半タイムマシンブル~ス』

 

京都拠点で活躍し続けている劇団ヨーロッパ企画(について詳しくは以前の記事をお読みください♪)の舞台「サマータイムマシン・ブルース」と、京大出身で京都を舞台にした小説を多く手掛ける人気作家・森見登美彦先生の「四畳半神話大系」が奇跡的、いや、悪魔的(←公式見解)に融合して誕生した怪作「四畳半タイムマシンブルース」がアニメ化されました。

 

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

どのような融合かと申しますと……「四畳半神話大系」に登場する曲者揃いのキャラクターたちが、2005年に実写映画化もされた青春SF戯曲の金字塔『サマータイムマシン・ブルース』の世界でこれでもか!と右往左往。灼熱の京都で、不毛かつ愚行に尽きる「行ったり来たりの一日」を過ごす羽目になる、といった具合。ま・さ・に!悪魔的!!

 

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

ここで、簡単にあらすじを。

ときは、8月12日。下鴨幽水荘で唯一のクーラーのリモコンが水没するという大事件が勃発。盆地ならではの京の暑さはNOクーラーではまさに地獄と言えましょう。そこへ突如現れたのが、国民的キャラクターが持ってきたのかしらん?と疑ってしまうような形状のタイムマシンで、あら吃驚。渡りに船の未来的道具を使って昨日に戻れば、壊れる前のリモコンを確保できるのでは?と考えた面々が、時空を超えた珍道中を繰り広げる様を、涼しい映画館でご覧いただくという趣向でございます。

 

今回は、公開に先駆けて物語の舞台となった京都で行われた特別上映会の様子をお届けいたします。

ゲストは写真右から順に、キャラクター原案の中村佑介氏、原作の著者である森見登美彦先生、センターには「私」役の声優・浅沼晋太郎氏、次いで原作原案・脚本を担当された上田誠氏、最後が夏目真悟監督という豪華メンバー!

 

過去にもタッグを組んでこられた森見先生が、「度々お世話になっている恩返しに」と上田さんの舞台を小説化しようと思い立たれたのが、事の発端。最初は「歓びすぎたらプレッシャーになるのではと、そうっとしたリアクションをしていた」という上田さんは、過去作との違いを訊かれて、次のように答えていらっしゃいました。

 

「これまでは僕が森見さんの作品を脚本化していたのが、いつもとは逆で、待たせてもらう立場でした。原案となった『サマータイムマシン・ブルース』は元々僕が書いたもので、『四畳半神話大系』も没頭して脚本を書いたお話で。かつて自分が通った作品が姿を変えた小説の脚本化だったので、実はすごくスムーズに出来ました。自分の原案もあるし、『四畳半神話大系』のキャラクターたちにまた出会えて、いつもと違って予習ゼロでパソコンに向かって作業できました。絶対苦労話とかした方が良いんでしょうけど本当になかったんですよ(笑)」

 

本作では、声優デビューも果たされた上田さん。劇団員から演技指導を受けながら臨んだシーンを振り返って、「一生の思い出になりましたし、二度とやらないです」と宣言しておられました。ぜひご本人役で登場される彼のお声にも耳をおすませください。

 

「ずっとやってて楽しかったですね!」と仰る夏目監督のお気に入りキャラクターは、田村くん。舞台&実写映画でも田村くんを演じたヨーロッパ企画の本多力氏が声優として参加しているのも、コラボならではの魅力でございますよ。

 

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

12年の時を経て、再び「私」を演じることになった浅沼晋太郎さんは、「四畳半神話大系」を声優としてのターニングポイントとなった作品だと説明しつつ、「たくさんの方々が好きでいてくださっている作品に、12年ぶりにもう一度自分が関わるとなると、嬉しいという気持ちと同じくらいの恐怖があって。あのときの記録を越えなければいけないという気負いや、がっかりさせるわけにはいかないぞというプレッシャーに押しつぶされそうな自分もいました。『私』は、思い入れのあるキャラクターだからこそ、成長してほしくないという思いもありました(苦笑)。『私』は『私』のままでいて、愚かで、どこまでも不毛で、黒髪の乙女には何も言えない、誰かのせいにしてずーっと生きていてほしいという歪んだ愛もあって……」といった思いの丈を正直に吐露してらっしゃる姿が微笑ましくもあり、どこか頼もしくもありました。

 

12年間という変化の行間をどう表現するか、「私」の成長をどう見せるか、監督とディスカッションを重ね、何度も録り直しながら丁寧に創られた新たな「私」にご期待くださいませ。

ちなみに、浅沼さんが大学生らしい青春を感じられるのは、銭湯シーンとのことでございました。

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

中村さんは、キャラクターデザインについて、「いま見せる映画として、誠実に、いま『四畳半』をもう一度つくり直すとすると、前の風貌ではなくなるんですよね。例えば、明石さんはどのワンピースを着ていてもセーラーのカラーが付いていれば明石さんに見えるといったふうに、変えてもとくに違和感がないという意味では、明石さんは上手くいったと思います。時代に合わせて自然に変えていけたかな」と創作裏話も披露。いまの大学生が見ても説得力のある細かい設定の上に成り立っているキャラクター造形は、さすがの一言でございます。

 

「すごく京都が良く見える作品」(上田誠談)

京都で生まれ育ち、大学生だった自分たちの生活を盛り込んで、等身大の姿として「サマータイムマシン・ブルース」を書いた上田さん。「そんなに美しいものじゃなかった」と当時を思い返し、森見作品の腐れ学生シリーズの書きぶりで、「京都ってめっちゃ面白いんだな」と改めて感じ入り、本作の色や風景の美しさに、「え?自分が住んでるところってこんな感じやったっけ??」と驚かれたとのこと。

これぞアニメーションの力。

似たような土壌で生きていた京都の男子大学生が、それぞれに妄想を膨らませてつくり上げたものが、20年の時を経て合体するという妙。森見先生と上田さんが出会ったことで生まれた作品は、京都の文化的財産と言っても過言ではないでしょう。

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

散々と申し上げている通り、本作には京都のスポットが始終登場いたします。作中、上田さんのお気に入りは、辻褄が合った後の余韻的な「ブルースの部分」。鴨川を渡って中華屋へ向かう何気ない大学生活の1ページを描いたシーンでございます。ふだんいくらでもやれることなのに、なぜかビールと炒飯が恋しくなってしまう。そんな郷愁すら感じさせるラストシーン。「僕はくるりの曲を聴いてジンジャエールを飲みたくなる派なんですけど、そんな感じです」という言葉に思わず納得してしまいました。

 

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

さらに、京都でお好きな場所は?と問うたところ、作中にも登場する「下鴨神社の古本市」というお答え。

「古本市は、本との出合い方が独特というか……。インターネットで出合うことも増えてきた中で、書店で出合うことの特別感というものもあるけど、さらに古本市ならではの出合いがあって。誤解を恐れず言えば、雑な扱いを受けている本たちが並んでいて、雨が降ってきたらサッとカバーかけられて。アート作品のようではない、生きた本の扱い方が好きで、毎年覗きに行ってますね」。

 

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

作品にちなんで、もしもタイムマシンがあったらどうするかという質問には、ピンポイントで「1970年に行きたい」という返答。「学生運動から四畳半フォークへとすり替わったような時期で…まあ、フォークブームの頃ですよね。その頃に居合わせたかったな、と。それ以外にも、バンドブームやファミコンブーム、SFブームなんかも体験してみたいんですけど。京都にいたからか、時代的にか、そういったブームと呼べる社会現象を味わってなくて、つまんなかったんですよね(苦笑)。だから、そういう熱い時代に身を置いてみたいと思いますね」。

 

また、舞台挨拶にて森見先生が「過去は再現できないから、そこは目指さない。続編ではなく、舞台を小説にするという新たなチャレンジ」と仰っていたことを受けて、「昔のようにはつくれない、というのはその通りで。だからこそ、自分たちの過去の作品を、自分たちがまだレベルが低かった頃につくったものだと思ってしまうのではなくて、その間に育った得たものを加えて、アップデートはできると思いますね。技術や表現方法など、いまは使える武器も増えていますし」と分析。

 

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

「この作品は、ライトノベルでもあり純文学でもあり、二次創作のようでもあり、ハードSFでもあり。いろんなジャンルを横断的に渡り歩きながら書かれていて、それが羨ましくもあり、そうありたいと願いつつ、自分もそうあれているのではと思ったりもして。そういったるつぼ感が京都的な感じがします」と上田さん。

映画化のときと同様に、今回の小説化・アニメ化にあたっても、演劇用につくった脚本の良さを殺すのでは?と悩んだ上田さん。けれどもこれだけ変幻自在に姿を変える様を見て、元々のプロットの強度と遊び代に気づかされることになったと語ってくださいました。

 

雑多な中でも淘汰されていき、懐深く多くを受け止め、ときに飲み込んでいく古都の魅力が存分に詰め込まれた、名残の夏に相応しいアニメーションを是が非でも!スクリーンでご体感くださいませ。

 

【作品データ】

(c)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

 

『四畳半タイムマシンブルース』

監督:夏目真悟

原作:森見登美彦著・上田誠原案『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫/KADOKAWA 刊)

脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)

キャラクター原案:中村佑介

声の出演:浅沼晋太郎、坂本真綾、吉野裕行、中井和哉、諏訪部順一、甲斐田裕子、佐藤せつじ、本多力(ヨーロッパ企画)

アニメーション制作:サイエンスSARU

配給:KADOKAWA/アスミック・エース

 

ディズニープラスにて独占配信中(配信限定エピソード含む全6話)

2022年9月30日より、Tジョイ京都ほかで3週間限定全国公開

https://yojohan-timemachine.asmik-ace.co.jp

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ライター紹介

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ライター:椿屋 山田涼子

合言葉は、「映画はひとりで、劇場で」。年間200本以上の作品を映画館で観るシネマ好き。加えて、原作となる漫画や小説、テレビドラマや深夜アニメまでをも網羅する。2022年1月より、雑誌「あまから手帖」で映画コラム「おいしい映画」を連載中。

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