日用品をナフタリンでかたどったオブジェや、塩や葉脈、陶器の貫入音を使ったインスタレーションなど、「変わりながらも存在し続ける世界」を表現しているアーティスト 宮永愛子。
宮永は、「宮永東山窯」を開いた京焼の陶芸家、初代宮永東山の曾孫でもあります。近年、活動の拠点を生まれ育った京都の町に戻した彼女は、陶房に今も残る古い型にガラスを流し込み、過去と現在を結ぶ作品を制作しています。
「昔から家に在ったけれど、気に留めてはこなかったものの存在。そこにはどんな景色があるのか。どんな形のものが眠っているのか。そんなふうに思いを馳せながら、型から外され、生み出されていく作品たち。それは過去に会いにいくことでもある」と宮永は語ります。
本展では、新作《くぼみに眠る海 -猫-》をはじめとし、鍵善良房にちなんだ「鍵」のモチーフや鍵善所蔵の木型から発想を得たガラスの作品を中心に展示いたします。
生業として受け継がれてきた型と、そこから今生み出される作品。それら一つ一つをご高覧いただきながら、過去から今そして未来へ流れている時間を感じていただけますと幸いです。