迷路のような細い路地の奥、祗園情緒を漂わせる小さな店が向かい合って並ぶ。その一軒が割烹の店「梨吉」。暖簾の掛かる入り口の戸を開けて中に入ると、目の前にもう一つの扉がある。外気の暑さ寒さを遮断するための工夫だが、客はここでひと呼吸し、余裕を持って中に入れる。まず目につくのがちょっと低めのカウンターだ。実に座り心地が心地よく、席の後ろもスペースもゆったりとしていてくつろげる。「お客様を見下ろしては失礼なので、同じ目線になるように」と厨房は一段低くするなど、細やかなもてなしの心が伝わってくる。
 ご主人は、おにぎりのおいしさでも有名な向い側の「ちんみや」の息子さん。「鳥居本」など京の有名な老舗料理店で修業後、店を開いて今年で20周年を迎える。
 季節替わりの献立は8,000円〜。この季節は美しく盛りつけられた先付けに小かぶらあんかけ天然シメジ添え、宝楽焼き(写真)といった料理が楽しめる。「何といっても料理は水」とご主人。この辺りは良質の井戸水が湧く。その水と旬の素材を使った割烹がこの店の魅力のひとつ。ご主人の華麗な包丁さばきと丁寧な下ごしらえ・仕上げも見事でつい見とれてしまうが、一方、温かくもてなしてくれるのは女将の順子さん。少々照れ屋なのか、無口なご主人との息もぴったりで、初めての客もまるで常連さんのようなくつろいだ気分になれる。
 奥には座敷があり、なみなみと水があふれる手水鉢も情緒ある坪庭を眺めながらのひとときも、お酒がすすみそうだ。
 

 



 DATA
京都市東山区祇園末吉町95
TEL 075-531−2421・1231
時間 12時〜14時(前日までに予約の方のみ)
17時〜21時、/日曜・祝日定休
 

帰りがけ、お土産に求めたいのが女将の順子さん手作りのちりめん山椒。やわらかなじゃこと山椒の香り、ぴりっとした味わいが食をそそる。粋なパッケージは女将が考案したもの。包みの和紙がやさしい印象で女将の心いきがなんとも嬉しい逸品だ。お店でもいただけるこのちりめん山椒はいつもあるわけではないので、どうしても味わってみたい場合は事前に連絡を。

 
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