075−531−2421・1231
【昼】 12:00〜14:00(前日までの予約のみ) 【夜】 17:00〜21:00
祇園の末吉町を縄手通りから東に入って二筋目の細い小路を少し下がったところに「梨吉」がある。祇園の真中に、昭和58年11月「梨吉」が誕生した。大将の平岡修一さんがお嬢さんの名前「佑梨」の一字をとって、「梨吉」と名づけた。大将は祇園「ちんみや」の子息で、生粋の京都人であり、大学卒業後、「川上」「鳥居本」の高級料理店で6年半修行を積み、29歳でこの店を開いた。それから18年、この祇園で質のいい料理とあたたかいもてなしで、着実に「梨吉」の名を広め高めてきた。 「30歳までに店をもつこと」を目標に修行を積んで来た大将の、夢を目標どおり現実のものとする努力と心意気に脱帽するとともに、料理に対するこだわりと自信を感じる。 檜のカウンター席8席と6畳一間で、大将と女将と若い板前さんの3人でお客様をもてなす。奥様で女将の順子さんもこの祇園生まれの祇園育ちで、きれいな京都弁を話す気さくで明るい京美人である。「店自体を大きくしようとは思わない、ひとりの料理人がお客様に目が届くのはせいぜい5〜6人であり、それ以上は満足いくおもてなしができない」、と大将は言う。そこには、お客様を最初から最後まで自分の目できっちりともてなしたいという思いがある。「いつも2割の余裕を持って動くようにし、思わぬアクシデントにもきっちり対応できるようにしたい」と大将は語る。
この18年、梨吉では一見さんの数は10人に満たない。最初は紹介されたお客様も、何度となく足を運ぶと一見さんではなくなり、そのお客様からまた別のお客様へと馴染みのお客様がどんどん増えていく。そんな長いお付き合いをしている常連さんが多い。 京都のお客様にかぎらず、東京から来るお客様も多い。この場所は、わかりにくい小路ではあるが、それがかえって「京都らしい」、「ゆっくり落ち着いて食事ができる」と評判が良い。そして、何と言っても女将の順子さんの役割は大きい。「気づかいはプロ」と大将をうならせるところなど、まことに納得できるものだ。女将さんの実家は老舗の懐石料理店「鳥居本」であり、自然とお客様への接し方が身についているのであろう。「お客様に楽しんでお食事をしていただけることを一番に望んでいるし、努力しています。大将が真剣に料理でお客様をおもてなししているその間を楽しくなごませることができるように・・・」とお客様と接することが本当に楽しいと順子さんは言う。大将と女将さんがそれぞれお互いの役割を大事にしながら意気のあったもてなしをしている、そんな雰囲気が心地よく食事が進む。
献立は季節によって変わり、春のメニューでは、先付け(一寸豆、いいだこ、あわ麩田楽、竹の子の煮物、白魚のから揚げ、半熟卵、ぬた)が八寸で出される。カウンター席では、この先付けが一皿ごとに出され、それぞれ視覚で楽しみながら、味わうことができる。さらに汲み上げ湯葉のゆばあえを賞味できる。貝柱と数の子の上に湯葉をかけ、菜の花、海老、水前寺海苔が添えてあり、数の子の歯ごたえと貝柱の味が湯葉の薄味で程よくまとまっている。他に、めばるの煮付け、造りではいか、えび、あぶらめなど旬の味が楽しめる。そして椀は若竹汁。濁りのない透明なおつゆは、上等なかつおと昆布の風味を、きちんと感じることができる絶品。焼き物は目板鰈(めいたがれい)、あげ物ではあぶらめの揚げ物と、季節の素材のもつ旨さが梨吉のダシでより高められる。蒸し物の南禅寺蒸しは、しいたけとそばの実をくるんだ湯葉が、極上の茶碗蒸の中に置かれた、梨吉独自の味。 お酒は、料理とともに楽しんでもらうということで、燗のお酒は「松竹梅<豪快>」、「菊正宗」、冷酒は「松竹梅<純米>」と、新潟の地酒を用意している。 カウンター越しに会話をはずませるとっておきの情報がある。大将はプロ級のボウリングの腕前を持ち、京都国体の代表選手。そして順子さんの姪はNHKの朝の連続ドラマ「私の青空」のヒロイン、ドラマにCMに大活躍の田畑智子さん。順子さんが美人なのもナルホドと納得でき、さらに杯が進むというものだ。