●ビル街の中のASIA |
ベトナムコーヒー。あまり耳慣れない言葉を聞くようになったのはここ数年のこと。その名の通り、ベトナム産のコーヒーを使ったもので、コンデンスミルクが底に入ったグラスの上にアルミのドリッパーをのせて淹れられた濃い目のコーヒー。偶然口にしてから、もう一度飲んではみたいけれど、めったにお目にかかれることがなくて寂しく思っていた。そこへ京都でもベトナムコーヒーがいただけるお店があると聞き、これはぜひ伺わねば!と早速伺うことにした。
阪急河原町駅を出て地上に上がり、新京極や寺町と言った繁華街の中心から少し西へ。御幸町通を北へ入ると雑然と小さなテナントビルが立ち並ぶ左手に、「VIETNAM
FRENCH -XUAN-(スアン)」と書かれた看板がある。奥を覗くと細い板張りの通路の先に、コンクリート張りのテナントビルが見えた。足を進めると、民族楽器のBGMとほんのりお香の香りが。しかし、ちょっと表通りからは見つけにくいので、四条通りから御幸町通りに入ったら左手に注目しておくとよいかもしれない。
通り沿いのテナントビルよりもさらにこじんまりとしたビルの1FにXUANがある。店の前には日本の坪庭風のグリーンがあり、同じアジアでも並ぶその姿は少し対照的。
ランチタイムの終わりに近づいた時間でも、店内はほぼ満席。店の外で待つことになったのだが、いすの上にはひざ掛けと足元に小さな電気ストーブは置いてある細かい心配りがうれしい。ほどなく店内に入ると、極彩色豊かなアジアのイメージとは違ってカントリー風の木の家具を中心に、フレンチシックなカトラリーがテーブルに置いてある。フランスに統治されていた歴史を持つベトナム。そこで培われたアジアとヨーロッパ文化の融合した姿がかいま見えた気がした。
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●甘いんですか?辛いんですか? |
ランチメニューは6種類。ベトナムのカレーや「フォー」と言う麺類、おかゆをメインに生春巻きや唐揚げなどがついている。ケーキ類はあまり他ではお目にかかれない緑豆のシフォンケーキやタピオカのタルトなどアジア色いっぱいの名前がついているのが6種類程。いずれもベトナムのレシピそのままに再現してあるとか。
ドリンク類は、ベトナムコーヒーの他ベトナムの緑茶やノンアルコールのカクテルなどが十数種。夜にはアルコール類のカクテルもいただける。
アジアの食事といえば「辛い!」のが一般的。けれどXUANのメニューは辛さはあるものの、あとに尾をひかずポカポカと身体が温まってくるのを楽しみながらいただける。
さて、ベトナムコーヒー。ガラスのカップの底にはもったりしたコンデンスミルク。カップの上のアルミのドリッパーにはコーヒー粉が入れられている。すでにドリップが始まっていて、ぽたぽたとカップの中へコーヒーが落ちてきていた。ミルクの白とのコントラストが対照的。ドリップが終わってから混ぜないで少し飲んでみた。エスプレッソとはまた違う濃さで、苦味も格別。慌てて底のミルクとを混ぜてからもう一度飲む。コンデンスミルクはそのまま飲むことは日本ではあまりない。イチゴにかけて食べたりすることが多いのではないだろうか。コンデンスミルクのコクと、苦いコーヒーが交じり合って後口さわやかな風味になる。
ブラジルに次ぐコーヒーの産地であるベトナム。ゆっくりとドリップが終わるのを待つ時間も楽しく、同じコーヒーでもこんな楽しみ方があるのかと驚きつつ、アジアの人々の時間の流れを感じることができた。
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