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伝統と暖簾で語る京の四季 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
京情緒に代表される祇園の真中に位置する「由良之助」は、創業85年の京懐石一筋の老舗である。歌舞伎三大狂言「仮名手本忠臣蔵」は、主君の仇討ち劇で知られているが、その「大星由良之助公」から屋号を拝領したとの事。もともと南座楽屋口近くの芝居茶屋が店のはじまりであったが、今から25年前二代目を山本力也氏が受け継いだ時に現在の場所に移転した。忠臣蔵七段目(茶屋場)ゆかりの一力亭と軒を連ね、二つ巴の紋を染めぬいた粋な暖簾が店先を飾る。祇園町の風情があふれ、ロケーションも申し分ないと、季節京懐石に期待を膨らませて暖簾をくぐる。 |
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新鮮な素材と良質で豊富な水が命 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
座敷部屋は、かつての芝居茶屋を思わせる情緒があふれ、「忠臣蔵」の版画がそこここに飾られていて、歌舞伎ファンにとって実に興味深い。 「料理が美味しいのは当たり前である。歌舞伎も料理も『物語』が命。色彩、バランス、コントラストを美しく表現し、お客様に喜んでいただけるおもてなしをしたい。」と主人は言う。京料理とひと口に言っても個性はさまざま、それぞれの創意工夫がある。伝統をベースに日々進化し続ける京料理の面白さ、新しさを再発見できる店である。 |
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季節京懐石 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
先附は、雲子錦豆腐。前菜(吹き寄せ)は、菊花、菊菜、松茸お浸し、蟹砧(きぬた)巻き、海老蓑揚げ、公孫樹赤芋(いちょうあかいも)など11種類が彩りよく配されていて、「由良之助」おすすめの逸品である。次に土瓶蒸しが出される。鱧、松茸、銀杏など味はもちろんのこと、目にも秋の風情が感じられ、食欲がそそられる。向附は、鮃二枚引浅葱巻(ひらめにまいびきあさつきまき)と鮪角造りに京小巻湯葉を配する。造りには必ず京湯葉を添えるのが特徴。焚合は、穴子八幡巻き。手鞠菊にかたどられている蕪、南京、菊人参は、黄色と白のコントラストと繊細なほどこしに箸を留めて、見入ってしまうほど美しい。そして上質なだしは、なおその風味を引きたてる。お凌ぎには、松たけ寿司を賞味する。贅沢な歯ざわりがなんとも言えない。焼物は、魴味噌幽庵(まなみそゆうあん)杉板焼き。杉板でくるまれた魴鰹には、杉の香りがしみ、五感で楽しめる秀逸な料理。蒸し物の萩蒸は、蕪蒸しに一塩ものの若狭ぐじが中に配され、紅葉麩が添えられている。ここにも季節と色彩の絶妙なバランスを垣間見ることができる。酢の物では、貝柱の根来巻、鮑、長芋、茗荷、うどの胡麻酢和えを供する。どれもこれも、清水焼の器の上で、京料理の技が生きているまさに芸術品といえるものばかりである。 二週間で大きく献立が変る懐石にあって、変らないのは、名物の「茶粥」。お茶で炊いたものではなく、お茶事の湯の子に似た粥である。わさびと海苔が添えられていて風味豊かに味わえた。水物として、タピオカをトッピングしたオレンジゼリーでさっぱりとしめくくった。 |
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さまざまなお客様に応じて | ||||||||||||||||||||||||||||||||
四季折々の素材の持ち味を存分に引き出す技は、初代から二代目、三代目と引き継がれ、「由良之助」の伝統を守り続けている。二代目主人は、子供の頃から追廻(おいまわし)で丁稚奉公をしながら腕を磨ぎ、ふぐ料理、調理師などあらゆる免許を取得したという。しかし、腕だけではない。大学時代は応援団に属して、心身とも鍛え上げてきた。料理に対する感性をいつも磨き、研究心、向上心を忘れることはない。三代目は、長男眞也氏が専務として営業を、次男哲也氏が料理を担当する。これからの「由良之助」もまた楽しみである。「ほんに!大石(オイシー)由良之助」と我が店を表現するところにも二代目主人の粋な遊び心が感じられ、料理だけでなく主人のファンにもなった。 予約時には、その目的をぜひ伝えておくことをおすすめする。京都観光旅行なのか、接待で利用するのか、また、どちらから来られるのかなど、お客様に応じて献立を工夫するという。嬉しい心遣いがここにも感じられた。 |
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【地図】
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