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懐石・秘傳鱧料理
馳走高月
■所在地
■電話
■営業時間

■定休日
■席
■懐石料理
京都市東山区下河原高台寺門前下河原町469
075~531~6178
【昼】 11:30AM~ 3:00PM
【夜】  5:00PM~10:00PM
月曜日
2名 ~ 30名
【昼】 5,250円~21,000円
【夜】10,500円~21,000円  (いずれも税込・サ別)

※都合により、現在営業を休止されています。
 姉妹店は営業中。詳しくは店舗のホームページをご覧ください。
高台寺付近の落ち着いた佇まい
京都・高月 高台寺の門前、観光客の潮のはざまに落ち着いた佇まいを見せる一角、そこに「馳走 高月」の表札がある。玉砂利に打ち水された様がこざっぱりと、玄関に配置されたもみじのコントラストも活き活きと目に映える。春夏には緑、秋には紅葉と、それぞれに楽しめそうだ。建物をテーマと見立て、季節により表情を変える庭木をさりげなくあしらうあたり、いかにも腕のいい料理人がいることを期待させる、心にくい演出だ。おもてもよく掃き清められていて、清々しい気分で暖簾をくぐることができる。「もてなし」の心を知り尽くした達人の所業と言える。
 「高月」は1990年に開店した比較的新しい料亭だ。しかしこの落ち着いたもてなし、そこはかとなく漂う雰囲気、11年前にできたばかりということを、俄かには信じ難いほどの深みがある。
 店主の朝尾朋樹さんは、15歳で料理人の道に入り、27歳で料亭「土井」を最後とするまで、神戸、大阪、京都の料亭で修行を積んだ。27歳からは料理長として京都の各料亭を回り、味からもてなしまで、その演出すべてを見てきた実績があるということ。なるほどと、思わずひざを打つ。歴史の重みはやはり人にあった。
鱧(はも)料理の概念を覆す技
京都・高月
ハモうす造り。
骨を気にせず、ハモ本来の味と歯ごたえを楽しめる逸品。
素材そのもの深さと技の深さとの両方を、この薄造りで堪能できる。
 「鱧(はも)」と聞いてまず連想することは「骨切り」だろう。鱧には身全体を包む無数の小骨があり、数えるだけで約500本にも及ぶ。古今、腕のいい料理人は一寸につき23~25の包丁を入れ、細かく骨切りすることを技としてきた。
 私たちはこの骨切りが鱧と切っても切れない関係としてただ漫然と食し、「やっぱり鱧は最高や」などと舌鼓を打ってきたはずだ。小骨が鱧の特色であり、その歯ざわりを味わいのひとつと数えることに、何のためらいもありはしなかった。
 私たちは、その一方で骨を抜き取る技法が伝承されてきたことを知る由もない。いつの頃からか、秘伝として多くの目に触れることなく、それはごく僅かな職人だけに密やかに受け継がれてきた。朝尾さんが17歳に京へ入ってから、集大成「秘傳鱧料理」を出版するまでの長きにわたる試行錯誤の原点は、この骨抜きの技法を完成させたいという思いにあった。
 高月のハモうす造りはこの骨抜きの技を使った、まさに芸術品とも言える料理だ。
四季折々にうつろう京の味と風情
京都・高月
鱧好きにはこたえられない傑作料理、ハモしゃぶ。包丁目がふわっと開いた瞬間を逃さず食する。





京都・高月
水晶ハモ(落し)。
湯引きせずに天火で炙るため、味が落ちず透明感が保たれている。

鱧落としが芸術にまで進化した逸品。
 コンチキチンの音を遠くに聞きながら唇を猪口で濡らし、梅肉とともに鱧の一切れを噛むときの悦び。梅の爽やかな香りと、よく脂の乗った鱧の豊潤な味わい。鱧は夏の風物詩のひとつとされている。
 瀬戸内海では4月~11月が漁のさかんなころだが、意外なことに鱧は一年をとおして手に入れることのできる食材だ。肉質が良くなるのは産卵期に入る夏から秋ごろ。「マハモ」と「スズハモ」の2種類があって、高級料理に使用されるのは「マハモ」のほうだ。
 高月の鱧料理も季節のうつろいとともに変化を見せる。
 「花寄せ」(春)・・・へぎ切りにした鱧に塩をあてて炙り、薄くかつらむきにして湯をとおした独活(うど)に、桜花をそえて包んだ一品。
 「ハモうす造り」(夏)・・・うす造りそれ自体は今日までも目にすることの多かった料理だが、骨を抜くことで厚く包丁することができ、味や歯ごたえを充分に引き出すことが可能になった。
 「しば汁」(秋)・・・薄味の味噌仕立てに豆腐、ゆがき茗荷、塩焼きした鱧、さらに同じく塩焼きにした松茸を入れたもの。
 ・・・などなど。ここに挙げたのはほんの一例に過ぎない。四季折々、実に献立200品あまりの味が高月で楽しめる。

 取材では白菜のやわらか煮に、まる(すっぽん)をあしらった一品水晶ハモハモうす造りハモしゃぶふきのとうの唐煮利休そうめんハモにぎりをはじめとして数え切れないほどの秀逸な料理を味わった。友とする燗酒は辛口の「松竹梅<豪快>」。上質な鱧の旨みを正面から受け止め、細かい味わいのヒダまで鮮明に映し出す心強い酒だ。
 今回味わった中でも、白菜のやわらか煮の椀中にさりげなく置かれたすっぽんの卵は珍しく、もっちりとした食感と濃厚な味わいが、あっさりと炊かれた白菜と絶妙のコントラストをもって広がるのが印象的だ。また、うす造りとともに出される鱧のキモも珍しいと言えよう。その小粒な中に、特に美味とされるカワハギのキモにも勝る、深いコクを秘めた珠玉の品だ。
 殊に秀逸を極めたのがハモしゃぶ。張ってあるダシに浸したハモが開いた瞬間を、割り梅酢で食べる。箸から放して待つようではいけない。すべてに火がとおってしまっては値打ちが下がるというものだ。ただこれを素直に生からやっては、皮が堅くて良くないか、皮が煮えるのを待って、逆に身に火がとおり過ぎるかのどちらかだろう。実は、事前に丸ごと湯どおしして先に皮を柔らかくしておくことで、身に火をとおし過ぎず食材の本来持つ旨みを内に秘めておくことができるのだ。その旨みを、漬けダレの割り梅酢が最大限に引き出す。濃すぎず薄すぎず、程よく塩梅された味加減は、鱧を知り抜いている高月ならではの仕事と言える。

 「現在の食文化は、錯雑不統一」と店主・朝尾さんは考えている。西洋料理が渡来した維新以降、料亭でも和洋折衷料理の出された時期があったらしい。その後、戦後の一時期を経て落ち着き、日本料理は完成期に入ったかに見えた。「にもかかわらず、かつてを知らない若者たちが」と言う。食材のみならず調理法まで、世界中から乱入する情報と流通に乗ってやみくもに取り入れてしまっていると。「時代の推移とはいえ、日本の食文化を意識し、急がず、せかされず、少しずつ歩むことを望むものです」・・・朝尾さんはそう考える。
高月の特別料理
■ 5月~10月末

■11月~ 2月末


■通年
秘傳鱧料理(ハモ料理と懐石・天然鮎料理を取り合わせ)
    昼 13,650円より   夜  15,750円より   (いずれも税込・サ別)
蟹、甘鯛料理
    蕪雪鍋(かに又は伊勢海老入)
    伊勢海老水菜鍋
季節の田楽鍋
【地図】
京都・高月
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