1932年、東京に生まれた堀内誠一は、若い頃よりデザイナーとして研鑽を積み、時代をリードするアートディレクターとして活躍した。「anan」、「BRUTUS」、「Olive」、「たくさんのふしぎ」など、よく知られた雑誌のロゴや、本の装丁、ポスターのデザインなど多彩な仕事を展開した。その一方で、1958年に初めての絵本「くろうまブランキー」を世に出す。その後も「ぐるんぱのようちえん」や「たろうのおでかけ」、「こすずめのぼうけん」など数多くの人気絵本を生み出した。「絵本作家の道こそ運命が決めた本命」と本人が語ったように、その54年の人生は、絵を描くことと共にあった。
2022年、生誕90年を迎えることを記念して、その画業全般を回顧する展覧会を開催する。戦後、激動する社会の中で、「絵」というヴィジュアルが持つ力を、広告やデザイン、イラストなど様々な分野で発揮させた堀内。その作品世界を見つめれば、20世紀という時代において、絵本や雑誌といったカルチャーがいかに変遷し、発展を遂げてきたかも浮き彫りになるであろう。
本展は伝説のアートディレクターであり、デザイナーであり、絵本作家でもあった堀内誠一の「絵の世界」に注目する。
今回、初公開となる10代の時に描いた油絵作品などを出発点に、絵本の原画、デザインにおける作画、雑誌のためのカットなど約150点の作品、さらには画材や愛用の品々など約50点が並び、堀内の創作の原点ともいえる「描くこと」をひもとく。
ときに愛らしく、時に鋭くアヴァンギャルドな堀内誠一の絵の世界をお楽しみいただきたい。