東西の古代文明が行き交う西北インドで成立した『法華経』には、異なる宗教、異なる民族の対立という試練を乗り越えるための寛容の思想が満ちあふれている。植木雅俊氏がサンスクリット原典からの緻密な読解を通して画期的な現代語訳を成し遂げた著作『思想としての法華経』(岩波書店)をもとに、共存と融和を希求する思想に込められた『法華経』の今日的な意義を問う企画展である。
さらに、令和4年に迎える日蓮聖人ご生誕800年を記念して、日蓮聖人がどのように『法華経』を読み解かれたかも紹介する。
◇植木雅俊
1951(昭和26)年、長崎県生まれ。仏教思想研究家。九州大学大学院理学研究科修士課程修了(理学修士)、東洋大学大学院文学研究科 博士後期課程中退(文学修士)、91年から東方学院で中村元氏のもとでインド思想・仏教思想論、サンスクリット語を学ぶ。2002年、お茶の水女子大学で人文科学博士号を取得(男性初)。『梵漢和対照・現代語訳 法華経』上・下巻(岩波書店、2008年)で毎日出版文化賞を受賞。日本ペンクラブ会員、日本印度学仏教学会会員、仏教思想学会会員、比較思想学会会員
◇特別展示物
長谷川等伯筆 法華経「絵曼荼羅」(精密複製) 日蓮宗 妙傳寺 蔵
長谷川等伯筆 「善女龍王図」(精密複製) 石川県七尾美術館 蔵
勝海舟「南無妙法蓮華経」(精密複製) 日蓮宗 蓮永寺 蔵
宮沢賢治「雨ニモマケズ手帳」(精密複製) 林風舎 蔵
宮沢賢治の遺言によって出版された「国訳妙法蓮華経」