いつまでも変わらないものとしてまもり伝えられる「文化財」。例えば国宝の阿修羅像から、能などの伝統芸能、果ては工芸技術まで、さまざまな形で今の日本文化のベースをかたちづくっている。この無鄰菴も名勝というカテゴリの中で、お庭として国から文化財に指定されている。
しかし、「文化財」は、はじめから変わらないものだったのか? 「文化財」が文化財になるまでには、日本という国が歩んだ近代の歴史がダイナミックに刻まれている。そうして今指定されてないものも、いずれは文化財になってゆく。現在もそのドラマの渦中にあると考えると、日々接する場所や技術も違って見えてくる。2020年の無鄰菴では、このヒストリーを4回に分けて学んでいく。
第4回の最終回では明治時代以降、東京国立博物館さらに京都国立博物館が設置され、その後、日本各地に博物館が作られ、戦後にはふるさと創生事業により各自治体に1億円の交付金を契機として、全国的な資料館、博物館設立ラッシュを迎える。明治から大正、昭和の時代の変わり目に地域では歴史に関心が持たれ、博物館・資料館の設立や地域史編纂事業が行われ、文化財が保存、活用されていく様子を解説する。