16世紀後半から17世紀初めの日本において、戦国武将たちは覇権を争った。当時、めまぐるしく移り変わる世の戦いの犠牲になった者や、政治の道具としてその立場や生涯を使われた女性が多くいたことは事実である。その一方にそれぞれの意思でたくましく生き抜いた者もまた多くいたことが、研究によって明らかになってきている。
当時の女性たちにはそれぞれ様々な役割があり、衣食住や宗教において新しい文化の担い手でもあったと知られるようになった。しかし、戦乱を経て豊臣秀吉の妻ねね(北政所・出家して高台院)のように多数の遺品が残る例は稀である。多くの戦国時代の女性の足跡は限られた僅かな資料からたどるほかない。
高台寺には、北政所ねねの遺品を中心にして当時の女性の暮らしや信仰に関わる品々が奉納され伝来した。いずれも人々によって実用された品であり、華麗な文化が花開いた桃山時代を代表する名品である。また、文書類は当時の女性の行動や役割を示す資料となっている。女性に関わるそれらの品物は、彼女たちが真摯に生きた痕跡を確かに伝えている。
今回の展覧会では北政所ねねの生涯を中心に、同時代の女性達の姿、信仰、文書を当時の美術工芸品と共に紹介する。
また高台寺では、伝来した文化財の保存に取り組んでいる。この度保存修理を終えた品を展覧会において披露される。