当館は2021年4月25日(日)より全館臨時休館していましたが、5月12日(水)より感染症対策を徹底したうえで開館いたします。
鑑真(がんじん 688~763)は、中国・唐時代の高僧で、律の大家として尊敬を集めた。 しかし、日本での戒律の整備を目指していた聖武天皇の意を受けた日本僧・栄叡(ようえい)、普照(ふしょう)より懇請され、その地位をなげうち、五度の日本への渡航失敗と失明をものともせず、天平勝宝5年(753)、6度目にしてようやく日本の地を踏んだ。その後、唐招提寺を拠点に、中国正統の律の教えを日本に定着させ、日本仏教の質を飛躍的に高めた。
律とは僧侶のあるべき姿を示し、戒とは僧俗の守るべき倫理基準である。戒律を学ぶことは、僧侶とは何か、仏教とは何かを問い直すことでもあり、日本が社会変動を迎えるたびに、幾多の名僧が戒律に注目し、仏教の革新運動を起こした。特に、鎌倉時代には、唐招提寺の覚盛(かくじょう 1194~1249)、西大寺の叡尊(えいそん 1201~1290)、泉涌寺の俊芿(しゅんじょう 1166~1227)をはじめ、没後700年を迎える凝然(ぎょうねん 1240~1321)などの英傑が登場し、戒律の精神にもとづき社会福祉事業などを行い広範な支持を集めた。そして、安定社会に見える近世においても、明忍(みょうにん 1576~1610)や慈雲(じうん 1718~1805)などによって重要な律の復興運動が展開された。
本展では、日本仏教の恩人と言うべき鑑真の遺徳を唐招提寺に伝えられた寺宝によって偲ぶとともに、戒律のおしえが日本でたどった歩みを、綺羅星のような名僧の活躍と関係諸寺院の名宝を綴ることでご紹介する。