本展覧会は、昨秋、急逝された染織史家・吉岡幸雄氏を追悼し、その業績を回顧する没後初の展覧会である。
吉岡幸雄氏は、京都で江戸時代から続く染色工房の五代目当主であり、染織史家でもあった。氏は古来の文献をひもとき、伝世の染織遺品をはじめ古今東西の美術工芸を研究して伝統の色彩を求めた。各地に伝わる染料・素材・技術を訪ねて、その保存と復興に努め、社寺の祭祀、古典文学などにみる色彩や装束の再現・復元にも力を尽くした。
本展では、吉岡幸雄氏の美への憧憬と本質を見極める眼、そしてあくなき探求心によって成し遂げられた仕事と蒐集の軌跡を紹介する。