「薩摩焼(さつまやき)」は、桃山時代より薩摩藩(現在の鹿児島県)において焼かれた陶磁器の総称。幕末には金彩色絵の絢爛豪華な薩摩焼が欧米へ輸出され、万国博覧会で高い評価を得るなど、人気を博した。
海外における薩摩焼の評価を知った京都の窯元たちは、これを機に同様のやきものの制作に取り組み、海外での販路を開拓していった。とくに京都の粟田口では、錦光山(きんこうざん)を筆頭に、多くの窯元が欧米向けの趣向を凝らした薩摩焼を制作し、大きな業績を上げた。京都で作られた薩摩焼は、鹿児島で作られた「本薩摩」に対し「京薩摩」と呼ばれている。また、明治期には京都に続いて各地で「神戸薩摩」「大阪薩摩」「横浜薩摩」等が作られた。これらは欧米では総じて「SATSUMA」と呼ばれ、輸出工芸品の花形として知られるようになった。
SATSUMAは、柔らかい象牙色の素地に赤・緑・黄などの色絵付を施し、さらに金彩を施して文様を表す。色とりどりのまばゆい華やかな装飾と、その細密な絵付が人々を魅了し、花瓶や香炉といった室内装飾品が数多く海を渡った。
このたびの展示では、当館のSATSUMAコレクションの中核をなす「京薩摩」を中心に、「大阪薩摩」「神戸薩摩」もあわせて、珠玉の作品をご覧いただく。幕末・明治に花開いた華麗な京薩摩の世界をどうぞお楽しみいただきたい。