《ジオラマ》《劇場》《海景》といった写真シリーズで世界的に知られる現代美術作家 杉本博司。その活動は古美術蒐集、建築、庭園、舞台演出、インスタレーションなど多岐にわたる。これまでに細見美術館では、杉本が企画構成し、蒐集品で床飾りのしつらえを行った「味占郷-趣味と芸術ー」展(2016年)、彼がリスペクトする謎のコレクター 夢石庵の美意識を再現した「末法」展(2017年)と、2回にわたり杉本の視点で日本美術を紹介してきた。
そして、3回目となる今回のテーマは「表具」。これは、作品を布や古裂、紙などを用いて掛軸に仕立てることである。表具を施すことで美術品は守られ、引き立てられてきた。
また、古裂自体も鑑賞の対象として愛でられてきた。杉本は、自身の作品や古今東西の蒐集品を、そうした古裂を用いて独自のイメージやセンスで新しい姿に仕立てており、こうした作品は「杉本表具」と呼ばれてきた。本展は、自身の写真を掛軸・屏風・額といった様々な形式のフレームで飾った作品を展観する第一部と、「杉本表具」と細見コレクションの競演の取り合わせによる第二部で構成し、表具の持つ表現の可能性を探る。美術表現が多様化するこの時代に、飄々として世を渡る、数寄者杉本博司の美意識と、余芸というには余りある表現世界を堪能してみては。