日本文化を代表する、茶の湯。その歴史は禅とともにあった。禅の精神性は茶の湯には欠かせないもので、多くの禅宗美術のなかにその痕跡がうかがえる。高僧の墨蹟も、その多くが茶の湯で賞翫されることにより今に伝わった。
茶の湯の文化は現代に連綿と受け継がれてきたが、時代と共に変化し続けてきた。権力者の茶、千利休の侘び茶、江戸時代の金森宗和らの「きれいさび」、そして近代数寄者の茶など、その享受のありかたは多様性をもって広がってきた。
相国寺の茶の湯も、時代と共に変化してきた。中世には室町将軍家の唐物賞翫の茶の湯がくりひろげられた。戦国の世に移ると織田信長が相国寺で茶会を催し、その場に千利休も参加するなど、現在の茶の湯が形成される黎明期に相国寺は大きな役割を果たした。そして江戸時代には後水尾院の文化圏で育まれた新たな茶の湯が相国寺やその山外塔頭である鹿苑寺で盛んになった。名物とされた茶道具達も様々な人物の手を経て、ここ相国寺に伝えられた。名品を一堂に取り揃えたこの展覧会で、ぜひご賞翫いただきたい。