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シンプルながら熟練の技が生きる
銘菓「望月」
何も変わらない、変えられないことに価値があるとすれば、望月本舗の代表銘菓「望月」は、間違いなくその価値を有しているといえるだろう。望月の味を維持するためには、材料や製法はもちろんのこと、つくる道具や場所まで一切変えることはできないという。
初代は富山の出身で、江戸末期、京に出て菓子づくりの修業を積んだ。やがて、独立にあたって腐心の末「望月」を創案し、明治元年ごろ、「菊水堂」の屋号で三条木屋町の地に創業した。望月は、一見すると大判焼に形が似ているが、その製法はまったく異なっている。まず、平らな鉄板の上に生地を一文字に伸ばし、これを輪に結んで円の外周をつくる。次に、表になる生地を円の中に流し込み、自家製の大粒の餡をたっぶりと詰め込む。最後に、生地で蓋をしてから両面をこんがりと炊いてできあがり。非常にシンプルな菓子であるが、熱い鉄板の上で手早く作業するには、かなりの熟練が必要とされる。
現四代目当主は、過去に機械化を試みたことがある。しかし、馴染み客の舌を納得させられる味を再現することはできなかったという。また、他の場所に道具を持ち込んでつくっても、微妙な条件の違いから、やはり同じ味が出せない。同じ場所、同じつくり方でなければ、「望月」の美味しさを保つことはできず、何も変えずにつくったとき、望月ならではの素朴な風味や歯応えを醸し出すことができるのである。
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