飛騨こんろを置いて自分で焼くししゃもやえいひれ、剣先いかなどもおすすめである。座敷に座って目の前の炭火を眺めていると、店に来ているというよりは、まるで自分の家にいるような錯覚に陥る。ここで時々肴たちの炙られ具合を気にしながら杯を傾けるのは、まことにオツなものと言える。
新町えんらくのおすすめのひとつ、串焼きには、牛の耳のうしろの肉である「みみかぶ」や鶏の首の「鶏ネック」など、ちょっと面白い部材を使った串焼きがある。
殊にみみかぶは、ひとくち頬張るとそのしねくねとした食感にまず魅了され、次にねっとりと深い出来の肉汁が口中に広がってゆき、いつのまにか虜になっている自分に気付いてしまう。焼き具合も申し分なく、実に色っぽい逸品だ。
その他のおすすめメニューとしては、さっぱりとした茶蕎麦の胡麻だれサラダやチンジャー、干しかれい、しめさばなどがある。特にしめさばは、酸味をおさえて鯖の素材が持つ旨みを極限まで引き出した、秀逸な品。刺し身に極めて近い、言わばぎりぎりの出来である。 |