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百味會

文明開化の美味を次代に伝える

三嶋亭
明治維新とともに、京の食文化に革命をもたらす

明治初頭、寺町通の三条から四条にかけての界隈は京の文明開化の中心地となり、繁華街としてにぎわうようになったという。西洋菓子店や写真舘、見世物小屋などが建ち並ぶ中、明治六年、初代・三嶌兼吉とその妻ていは、寺町通三条角で牛鍋屋を創業した。
この夫妻は御所勤めをしていたとのこと。二人は御法度を破るかたちで相愛の仲になり、本来なら手討ちになるべきところを、主人のはからいによってひと包みの金を渡され、放免されて長崎に移った。ペリーの来航以来、日本には西洋文明の波が押し寄せ、それまで国内ではタブー視されていた肉食文化も、長崎などから流入した。夫妻はそこで牛肉の調理法を学び、明治維新後、京に戻って商いを開始したのである。
三嶋亭のすき焼きは、創業以来変わらぬ独特の手順で調理される。まず、炭火に近い性質の熱が得られることから、昭和初期に採用された電熱器の上で、八角形の鍋を充分に温める。次に砂糖を薄く広げ、その上に客の数だけ霜降り肉を並べて焼き、割下をかけて焼いてから肉を一枚食べる。その後は、通常のすき焼きと同じように、葱や糸こんにゃく、豆腐などの具を入れ、肉とともに焼いて食べるという具合だ。
肉は、丹波・但馬地方を中心に、全国から選りすぐりの和牛肉を仕入れており、まさに最上級の牛肉を賞味することができる。すき焼きの他に、オイル焼きや水だき、本田味噌本店の味噌を使った「牛肉みそ潰」などもあり、様々なかたちで牛肉の美味しさを存分に楽しめる料理店である。

初代の先見性、先代の魂を受け継ぎ、次代を築きたい

明治の文明開化の時代に、牛肉料理の商売を始めた初代の先見性には、本当に素晴らしいものがあったと思います。それまでの日本には、肉食の習慣がなかったにも関わらず、創業当初から評判を呼び、当店は明治の牛鍋ブームの火付け投となりました。そして、創業から百数十年経った今、「すき焼き」という牛肉料理は、日本の家庭の定番料理となるまでに普及したのです。
当店のすき焼きの味は、創業当初からほとんど変わっていません。当店ならではの割下の調合も、秘伝の製法を守っており、昔ながらの味を維持しています。わずかに牛肉の質が、時代を経て変化してきたことから、三嶋亭の風味を守っていくことに苦心しています。しかし、当店は牛肉のエキスパートとして、最上級の美味しさを保ち続けているものと自負しております。
先日、約五十年間店を守立ててきた先代の父が亡くなり、私は五代目当主としてこの三嶋亭を受け継ぎました。これから数年間は、父のこれまでの軌跡をじっくりと研究し直し、そのうえで、三嶋亭の新しい時代を築いていけるよう、全身全霊をもって努力していく所存です。

   
創業◇明治六年(1873年)
商号◇株式会社三嶋亭
所在地◇京都市中京区寺町通三条下ル
電話◇075-221-0003
ファクス◇075-221-0842
営業時間◇精肉販売は午前9時~午後7時45分
        ご飲食は午前11時半~午後10時(オーダーストップは午後9時)
定休日◇水曜日
予 約◇料理は要予約