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VOL.9
三丘園(さんきゅうえん)

店舗写真

●所在地

京都市下京区綾小路通新町西入ル矢田町
阪急電車烏丸駅 四条烏丸バスターミナル下車 徒歩10分
●営業時間
11:00~18:00
●定休日
日曜日
●TEL
075-351-3361
 


●伝統ある鉾の町で
ビジネスの中心地四条烏丸。祇園祭が行われる7月は多くの鉾や山が立ち並び、宵山や巡行までの間は観光客で賑わう別の姿も持つ。大小のオフィスビルの脇を少し入ると、車の通りも少なく、ワンルームマンションや町家と呼ばれる古い家屋が並ぶ。古く落ち着いた建物とコンクリートの近代的な建築物との妙な組み合わせが見られるのもこの町ならではかもしれない。

さて、ぼちぼちと歩くと通りをはさんで町家が二軒向かい合っている。北側は京都市指定有形文化財に指定されている杉本家。元々は奈良屋と言う呉服店で、京都市内では最大規模の町家だとか。その向かいには明治20年に建てられ、3代に渡って住んでおられた町家を開放されている「三丘園」。本日はこちらへと伺った。

暖簾をくぐると、土間にあたるところはお茶の販売と茶器のギャラリーになっている。宇治に本社を持つ「京都三丘園」のお茶をここでいただける。上がり口には、大き目の花器に雪柳やこでまりといった冬の花が活けてあり目を楽しませてくれる。お店の方が「奥の方へどうぞ」と言ってくださったので、離れへとあがらせて頂いた。

「鰻の寝床」と言われるように、京都の町家は間口が狭く奥行きが深いのが特徴。こちらも玄関から表の間を抜けて、廊下を渡り離れへ。表の間と離れの間には、細やかに手入れされた中庭がある。台所にあたる部分は、今はおくどさん(釜)もなくお店の事務所として使われている。ここは二階部分まで吹き抜けになっていて、天井近くに明かりとりの大きな窓がある。窓から入る自然光がやさしく室内を照らす。曇り空なのが少し残念だった。

離れは二間が続いていて、電球の暖かい光が外から入ったわたしたちをほっとさせる。部屋の隅や床の間には、季節の花が飾られていてお店の方の心遣いとこの家への愛情を感じさせる。

●町家の凛としたたたずまいの中でお茶をいただく

通年メニューはお茶とお茶うけ、そして抹茶プリンのセット。季節によってゼリーもあるのだそう。ほんのりと緑に色づいたプリンは、口に入れるとふわりと抹茶の香りが広がる。甘くなく、なめらかな舌触りとさっぱりとした後口に思わず「もうひとつください」と口に出そうになる。お茶は煎茶。一旦入れたものを暖めた急須に移し替えてくださるので、渋くならずおいしくいただける。プリンのほかには、抹茶クッキーなどお茶を使ったお菓子が添えてある。出していただけるお菓子は店頭でも販売されているので買って持ち帰ることもできる。お茶のおかわりをお願いすると今度は玄米茶を出してくださった。さりげない心配りにまたほっこりと心温まる。

さらに奥には縁側とお手洗い、そして倉(!)扉が開いていたのだが、中は暗くてよく見えなかった。小さい頃、田舎に帰ると夜中にお手洗いに行くのが怖かったことをふと思い出した。

離れまで入ってしまうと、雑多な音からすっかり切り離されてしまい、ガラス戸が風に揺れる音やヒーターの音だけが響く。静かな室内でお茶をいただきながら、玄関へ目をやると、格子戸にはめこまれた色ガラスが光に揺れる様子が見える。上品な室内でけして格式高くなくリラックスができるのは、電球の暖かさや部屋に飾られた季節の花々だけではなく「暮らし」と密接に結びついてきた町家が持つ空気もあるのかもしれない。