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VOL.8
元祖正本家 一文字屋和助(一和)

店舗写真

●所在地

京都市北区紫野今宮町69番地
阪急四条大宮より 市バス46系統 約30分
●営業時間
10:00~17:00
●定休日
水曜日・祝日・毎月 1、15日
●TEL
075-492-6852
●FAX
075-493-7105
 


●疫神を奉る今宮神社
京都の北に位置する今宮神社。今をさかのぼること1000年以上前の平安遷都後、都に流行る疫病の原因を早良親王の祟りだとした朝廷が、その霊を供養するために神輿を船岡山に安置したのが始まり。その後、現在の地に神殿を造営し疫病払いの神様を奉ると言われている。境内にある疫神社は今宮神社創建以前からあり、「今宮」と言う名前はこの神社に相対して名付けられた。朝廷の崇拝も厚く、戦国時代等の兵火で一時廃れるものの、徳川五代将軍綱吉の生母である桂昌院が社殿の造営や復興などに尽力したとも伝えられている。現在では、西陣の氏神としても厚く崇拝されている。
北大路通に面している大鳥居から北へ延びる参道から見る楼門は朱の色も鮮やかに威厳をたたえている。しかし、楼門が面している今宮通は交通量も多くどこか落ち着かないのが残念だ。師走も半ばを過ぎたこの日には、早くも新年を迎える準備であろうか大きな破魔矢と来年の干支である未が描かれた絵馬が楼門前に飾られていた。

さほど広くない境内には本殿と疫神社の他にも小さな神社があり、社殿の多くは、明治時代に再建されているそうだ。幹の太い木々の空高く枝葉を広げる姿や、地をはう太い根、檜皮葺屋根を持つ本殿や水平線を強調した回廊、その奥にある木々に包まれた奥殿の凛とした佇まいに京都の長い歴史と、怨霊や疫病を
恐れ、朝廷の御霊を敬う当時の風土を感じる。

拝殿近くに「阿保賢(あほかし)」さんと言われる神占石が奉られている。祠にある説明文によると「今宮の奇石」と言う興味をそそる内容が書かれていた。
この石を手でなでて、自分の身体の悪いところをさするとその部分が不思議と治ると言われているらしい。また、この石を3度軽く叩いて持ち上げると非常に重くなり、今度は願い事を唱えてから優しく石を3度さすった後に持ち上げて、軽くなっていればその願い事が叶うことから「重軽石」とも呼ばれているとか。
そんなおもしろそうな話を目にすれば、試してみたくなるのが人というもの。とはいえ、重さが変わらなければオサムイ話ではある。早速、石を軽くポンポンと叩く。そのあと石を持ち上げると、なるほど石らしい(?)ずっしりとした重さを感じた。そして、一応家内安全でもお願いして優しく石をなでてからまた持ち上げると・・・・・軽くなったようななってないような。でも、なんとなく前よりは軽い気が。伝承とは、信心よりも楽しむ気持ちが大事と、自分を納得させることにして、石をもとに戻した。

京都3奇祭のひとつ「やすらい祭り」は、ここで行われており、毎年4月第2日曜日に赤毛や黒毛の鬼を従えた行列が笛や太鼓に合わせて「やすらい花や」と囃しながら踊り、風流傘と呼ばれる花や草を飾った大きな傘のなかに入ると厄を逃れることができると言われている。

●食べると厄除け?あぶり餅

境内を出る際に南側の総門ではなく東側の小さな門を出ると、細い通りを挟んで二軒の店がある。門から足を一歩踏みだしたその瞬間から「おいでやす。あぶり餅どうどす」と両側からの呼び込みの声がにぎやかに聞こえる。二軒とも今宮神社の名物である「あぶり餅」を扱う。今日は北側に位置する「一文字和助」こと「一和」さんへお伺いした。

こちら一和さんの創業はなんと長保二年(西暦1000年)!! 20代以上もの長い間受け継がれていて、元祖正本家と名乗られるのもうなずける。
大きく開放的な間口には大きな火鉢にかけられたヤカンから湯気がしゅんしゅんと吹き出している。火鉢に書かれている「いちわ」の文字がすすけているのがなんとも言えない風情がある。座敷へ上がると、石油ストーブの火がゆらゆらとゆれる奥に見える小さな庭の眺めが古い町家の趣をさらに深くしている。
店頭では、割烹着姿の女性が数人で、つきたてのお餅を親指の先ほどに小さくちぎりながらひとつひとつ手で二またに割った竹串にさしてはきな粉をまぶして炭火であぶっておられる。軽く焦げ目がついた餅を、白味噌と砂糖を合わせたたれにつけてからいただく。

あぶり餅は1人前が15本。焼いたお餅ときな粉の香ばしさと、白味噌のほんのりとした甘さが口に広がる。数を聞くと一瞬驚くのだがひとつひとつがこぶりなので、お茶をいただきながらぱくぱくと口にしているとあっと言う間にたいらげてしまう。もちろん3人前から持ち帰ることもできるが、ぜひ店頭で焼き立てを食べていただきたい。
のんびりとあぶり餅とお茶をいただきながら、餅を焼く店の方の話し声と時折あがる笑い声を耳にして通りを眺めていると、昔の宿場町の風景を見るような気にさせる。

年内は22日から休業。年明けは元旦から営業されるそう。