●町家に隠れた名店 |
「篠」は千本今出川の町家の中にさりげなくある珈琲館。
篠田吉宏・栄子ご夫妻が経営する店には、常連さんの足が絶えません。 以前から珈琲が好きだったマスターが、ご自身の趣味の店として昭和58年9月に開かれた、席数が16の小さなお店です。
町家を改造した店内は、様々な形のランプに照らされ、レトロな雰囲気をかもしだし、そのランプのひとつ(右)は「篠」のロゴマークになっています。
肘を置いてとても楽な体勢がとれるカウンターのアームレスは、マスターのこだわり。 座り心地の良いカウンター席は、近所の方々をはじめ、「毎日ここのコーヒーを飲みに来る」常連のお客さんでいつも混みあっています。
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●"篠"の珈琲に迫る! |
アメリカンコーヒー(以下アメリカン)というと、普通のブレンドコーヒーを薄めにしたものだとお思いでしょう?
篠のアメリカンは焙煎が違います。 豆の色を比べてみても解りますが、アメリカンの豆は白っぽく、珈琲をたてると紅茶のような澄んだ色をしています。
アメリカンの豆
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イタリアンの豆
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↓
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アメリカンの珈琲
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イタリアンの珈琲
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このアメリカンの豆は、大阪からマスターが取り寄せたもので、京都では「篠」だけにしか置いていない豆。ストレートで飲むと豆の風味がして、コーヒーが豆からできていることを再認識させられる味。
ミルクと砂糖を加えると、それはもはやコーヒーというよりもなにか別の美味しい飲み物に変化するようです。
常連さんの中には豆を買って帰る人もいるほど評判のアメリカンコーヒーです。
アメリカンを初めてお客さんが注文するとマスターはお客さんの反応がとても気になるとか。 見た瞬間、色が薄くて「紅茶を頼んだわけじゃない!」と怒ったお客さんもいたそうです。
もちろん普通のコーヒーもあります。「篠」ではイタリアンコーヒー(以下イタリアン)が主流で、マスターも大のお気に入り。普通のブレンドコーヒーより濃いことからイタリアンコーヒーと呼び、酸味が少なく程よい苦味が舌に残る美味しいコーヒーです。
コーヒーの値段は15年間変わらず300円。この値段でこの味!お手頃です。昔雑誌に「コーヒー三百円」と掲載されたところ1300円のコーヒーだと勘違いして、わざわざ静岡から来た人がいたとか!?
他にも「篠」にはシナモンコーヒー(400円)やウインナーロワイヤル(500円)といったコーヒーがあります。
(※写真はウインナーロワイヤル)
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●それぞれの珈琲の飲み方 |
マスターは、このコーヒーがひとりのお客さんにとってその日の一杯になるという思いから、どんな時も手を抜くことなく、慎重にたてられています。だから軽食も出していません。
そんなコーヒーにこだわったマスターにコーヒーを美味しく飲むコツを伺ってみると、マスターは
「コーヒーを飲むのにいろいろとこだわりを言う人がいる、それはそれでいい。けど、お店がそれをお客に強要するのはいけないと思う。例えばほら、今このお客さんにボクはスプーンを用意していない。それはこの人が砂糖もミルクも入れないのをボクが知っているからやし、あのお客さんにはミルクを用意していない。それも、砂糖は入れるけどミルクは入れないのを知っているから。人はいろいろな形で、自分の好みのコーヒーを楽しむんや。」とおっしゃっていました。
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お客さんに合わせてコーヒーをたてるマスターの心配りがとても嬉しく感じて、常連さんがカウンターに座らないと落ち着かないという気持ちがわかったような気がしました。
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