■北さんの期待! 「実はね、京都の料理人の中で私が注目している一人が 今日紹介する京都和久傳の緒方さんなんです。」と北さん。 「どういうところがおすすめなんですか?」 「なんといっても、料理に対する姿勢ですね。 けっして妥協しないというか、そのこだわりがいいんです。」 |
■ぐじと車海老雪見風 京都和久傳さんは、京都駅ビル(JR京都伊勢丹11F)にあった。 北さんは、調理場の最も良く見えるカウンター席についた。 いつものように注文は北さんに任せて取材は始まった。 最初に出てきた料理がご覧の一品。 素材の良さはもちろんだが、 雪見風の大根おろしの味がなんといってもこだわりだ。 辛味、甘味、苦味・・・すべてのバランスがいい。 大根の味が、ぐじと車海老の味を決めてしまう。 「緒方さんは、毎朝、直接畑で野菜を吟味して仕入れるんです。 駄目なら使わない。・・・ 今日はそんなこだわりの料理が楽しめますよ」と北さん。 「素材へのこだわりですか?」 「そうです!」 |
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ぐじと車海老雪見風 |
■焼小蕪 鷹ヶ峯ねぎ 黒皮茸 鴨味噌 「鴨味噌で食べてください」と緒方さん。 なんとあっさりした料理だろう! なるほど、素材そのものが大きなウェイトを占めるな! 素朴で、なんといえばいいのか、蕪が美味い! どうすれば素材の良さを活かせるか、 どのように手を加えて、素材の持ち味を引き立たせるか、 きっと、料理人としての微妙な計算があるんだろうな・・・。 「緒方さんが料理人になった経緯が面白いですよ」 と北さん。 「そうですか、どう面白いんですか?」 「まあ、それは本人から聞いてください」 |
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焼小蕪 鷹ヶ峯ねぎ 黒皮茸 鴨味噌 |
■つまみゆば白味噌仕立て 北さんが緒方さんについて語ってくれた。 「緒方さんは、特に注目したい人だと思っています。 彼の料理を食べてみて思うことなんですが、 経験を積んだからいいというものでもないと思いますね。 ここでは、手ごろな値段でいただけて、 しかも、素材へのこだわりも伝わってくる。 料理人の料理に対する姿勢がしっかりと見えます。 そんな緒方さんの料理が楽しめるのがここなんです!」 この一品、白味噌ですが、そんなに甘くなくいただける。 正月の雑煮は、京都では白味噌、中の具も決まっている。 味噌は、育った地域で独自の味があり、 出身地や、家によってそれぞれに育った味がある。 好みが別れるところだが、それがなんといっても文化だ。 そして、母親の味が、なにより一番なのかもしれない。 最近、家族の中での悲惨な事件を聞くことが多い。 家族愛というものがなくなっているような気がするな! 家族で楽しく食事する。 そんな普通のことがなくなってきているんではないか。 家族が集う楽しい「食事」というのは、 人の健康や幸せの基本ではないかと思う今日この頃だ。 ・・・脱線した! |
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つまみゆば白味噌仕立て |
■からすみ餅 今日の取材は、いつもの撮影担当の北住くんが他のロケで、 替わりに女性スタッフが撮影アシストに来てくれた。 そんな彼女に、緒方さんはそっと一品を用意してくれる。 なんともこころ憎い配慮だ。 うーん・・・・緒方さん甘いマスクで、なかなかのジゴロ! しかし、気になるな!その一品。 辛抱できず、「それは何ですか?」と訪ねた。 「蕪にゅー麺です」と緒方さん。 「蕪にゅー麺?」 もちろん食べた事がない料理。 麺の上には、蕪のおろしたものがたっぷりとのっている。 からすみ餅も良かったんですが、 麺好きの私としては、この”蕪”が気になってしょうがない。 そこで以後の料理を少しずつ回すことで話がついた。 もちろん回すのは北さんの分・・・。 この横取りの一品最高でした! |
■鶯菜 蕪 金時人参 干し柿の胡麻和え さて次の一品です。 「ごまの風味がいいね!これが鶯(うぐいす)菜ですか。 おいしいね」と北さん。 ここで緒方さん。 「私は、美味しさというのは出来たてだと思うんですよ。 大根ならおろしたて、ごまは煎りたて、であったりが 美味しさの原点だと思うんです。 美味しさをどのように表現するかはいろいろです。 まったく違ったものに変化させて味わう料理もあります。 私は、どちらかというと素材の匂いや、作りたてといった部分を 大切にするような料理を目指したいと思っているんです。 甘さや、酸っぱさや、匂いや、歯ごたえといった感じ方で 食べてもらえる料理を心掛けているんです」 緒方さんの料理に対する姿勢に、益々興味が湧いてきた。 ■赤ねぎの炊いたん カウンターからは調理場が良く見える。 緒方さんの厳しい指摘が調理場に響く・・・「焼きすぎ!」 こちらにも調理場の緊張感が伝わってくる。 素材を活かす料理では、微妙な仕上(加減)が要求される。 それこそ、緒方さんの最も大切にしていることなのかもしれない。 この料理も、素朴な素材の味がしっかりと生きていた。 |
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鶯菜 蕪 金時人参 干し柿の胡麻和え | |
赤ねぎの炊いたん |
■聖護院大根と白菜のくもこ餡 大根が美味しい! 緒方さんの話を聞いてから 少し素材のことについて考えながらいただくと さらに味わい深い料理に思える。 素材に真っ向勝負といった感じだ。 専門家の方なら、うまく表現されるのだろうが ここは申し訳ない、私には、経験と文才がない。 |
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聖護院大根と白菜のくもこ餡 |
■はまぐりにゅー麺 はまぐりの香りと味は、 先程の蕪にゅー麺とはまた違った味わいだ。 ずいぶんにゅー麺にこだわりがあるんだな・・・・。 「これはラーメン風やね」と北さん。 「私は、ラーメンより、にゅー麺の方が色々と工夫ができて、 おいしいものが出来ると思いますね。 すっぽんのにゅー麺とかもいいと思いますね! 「いつか、にゅー麺の店もしたいな!・・・」と緒方さん。 本気だろうか? でも、いいな!にゅー麺の専門店。 |
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はまぐりにゅー麺 |
■柚こごり ■西湖 最後にご覧のとおりのデザート。 柚こごりは、さっぱりしたゼリーの下に 柚のたいたんが入っている。 西湖は、素朴な黒砂糖の味わいがあって 懐かしい味がする。 そして、最後に、お抹茶をいただいて・・・。 いや~美味しかった!ご馳走様でした。 今回いただいたのは、 夜のおまかせメニューでしたが 京都駅周辺での食事なら、 和久傳さんがおすすめだ。 その時々の旬の素材と 料理人の創意が楽しめる。 |
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西湖 |
最後に、緒方さんが料理人になった経緯を紹介しておきます。 ■もちろん料理が好きだったからです。 「今から思えば、料理好きの父親の影響があったと思います。 父親は公務員だったんですが、料理をするのが好きでした。 アンキモの缶詰に醤油を掛けて食べてたり、 なまこを市場で買って来て自分で切って食べてたりと 今から思えば、そんな父だったから、私も小さい時から 料理に興味をもったのかも知れませんね」 ■料理人になろうと思ったとき、料理なら京都だったんです。 京都駅に着いて、緒方さんがとった行動にびっくりだ! 「料理人になりたいので、料理屋さんに連れて行ってくれ」と タクシーの運転手に頼んだそうです。 事前に連絡もせず、いきなり飛び込んだその数、30件。 この京都で、なんと大胆なことだろう! ■和食を選んだのは文化を感じるからですね 「季節や歳時を感じたり、ともかく奥深いですよ! 昔の人は偉いな!何もないところから 理にかなった料理を生み出したんですからね」 この言葉の意味を、私はまだまだ理解できないが、 北さんが注目する料理人という意味が少し解った気がした。 |
取材を終えて・・・ | |
「北さん、今回はあまり出番がなかったですね」 北さん、ニコニコと笑うだけで返事がない。 今回は、料理人緒方さんを紹介するのが 北さんの目的だったのかもしれないな・・・・。 きっとそうだろう!北さん、満足そうだ。 「北さん!次は?」 「月村さんのとり釜めし食べにいきましょう」 では次回をお楽しみに! 文と写真)八田雅哉 |
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