TOP  > 京都のグルメ情報  > 北さんの京都Oh!ばんざい  > お好み焼 千ざい


■上七軒の話

「今はずいぶん数も少なくなって大変です」
と上七軒の話をするとそんな返事が返ってきた。

取材の前にちょうど店だしの舞妓さんが
中里さんの玄関でカメラマンにポーズをとっていた。

「よろしゅうおたのもうします・・・」
店だしは舞妓さんデビューの挨拶回りだ。

この日デビューしたのは、”さと夕”という舞妓さん。
少し前に来たのだろう、ここにも名前の書いた店だしの札があった。

「女将さんはいくつで舞妓になったんです」
「その時代は舞妓がいなくて、最初から芸妓でした、十五歳でした。
家がお茶屋で、内娘どしたんで・・・・」
最初から芸妓だった理由のようだが詳しくは理解できなかった。

「祗園には舞妓はいましたよね」と北さん
「北さん子供の頃から御茶屋さんに出入りしていたんですか?」
「いや、親父の写真に写ってましたから・・・」

・・・・花街通は、北家代々のものだった。

そんな具合で、40年以上前の色っぽい話から取材は始まった。

■花街のシキタリ

上七軒に入って小さな路地を曲がったところに”千ざい”
はある。
地元の人でなければ決して見つけられない場所だ。

「中学を出てすぐに芸妓になって18年、厄年で辞めました」
なかなか本題に入れず、取材する。

仕事を辞めるときにも挨拶回りをする。
それを、“引き祝い(引祝)”といって
写真のようなものを配って挨拶するそうだ。

また、再度この仕事に戻るときは”ご存知”と書くそうだ。

・・・この街のシキタリを知って得をしたような気になった。
元芸妓さんのお店だからこその特典だ。

■本題に入る

「どうしてこのお店を始められたんですか?」

「上七軒でこういった商売をやってはったところが閉めはる
ことになってね,お茶屋を続けるのも厳しい時代どしたん
で、この商売始めたんです」

ここ千ざいには地元の人たちだけでなく
馴染みのお客さんが、家族でも来られるそうだ。

さて北さん、紹介してもらいましょう。

「まずは”千ざい焼”でしょ
それと、出し巻・・・ジャガバター・・・げそ焼でしょ・・・
もやし炒めに、チーズ巻は食べたことないな・・・・それも!
砂ずり・・・・焼きこんにゃくもいきましょ!」

この企画は、”北さんおすすめの一品”がタイトルだが
このところ、毎回このパターンだ。

■千ざい焼

「九州にあったというメニューをお客さんから教えてもらい
自分なりにアレンジしたのがこれです」と女将さん

「これがね!ビールに合うんですよ!」と北さん

・・・遠回しに、ビールを注文しろと言ってるぞ・・・
前回の笹蔵さんでも酒を飲み、今回もだ。
だんだん手がつけられんようになっている!?

さて、千ざい焼は
お好み焼の生地に、あえて薄く重ねた肉をのせ卵でとじ
上に辛子マヨネーズをたっぷり敷いてソースをかける。
見た目ほどマヨネーズはしつこくない。
うまい!
これが、北さんおすすめの一品だ。


千ざい焼には、ポン酢で食べるご覧のバリエーションがあるがポン酢派の私としては軍配が難しい。

まあ、今回は飲み助北さんの立場も考え
正統派千ざい焼とビールの組合わせに軍配をあげる。

■鉄板焼きアラカルト

北さん少し顔が赤くなって
「いいでしょ!」といつもの口癖だ。

確かにいい!
たかが鉄板焼ではない!

一気に注文した一品がどんどん焼けだした。

どれもいいぞ!
「プロの店ですねここは」と北さん

「地元でやるには、手を抜けません」
と女将さん。
私はこの言葉が、大いに気に入った。

げそ焼も砂ずりも出し巻も、もやし炒めも・・・うまい!
焼きこんにゃくは、滋賀県八幡の赤こんにゃく・・・
ご主人のじっくり焼いたジャガバターは
ホクホクで最高!

女将さんはご主人のことを宏っちゃんと呼び
宏っちゃんは女将さんを淳ちゃんと呼ぶ・・・・

ヨッ! お二人アツアツで最高!

この一品達を前に、下戸の私もビールが飲み
たくなった。
取材同行のK氏も、私同様下戸だが意見は一致。

(ここだけの話にしておくが、会社にバレたら、
K氏は始末書ものだ・・・・だがこれも仕事と割り切った!)

一口二口・・・なるほどビールに合う!
下戸であることを忘れた二人は、すぐに”赤こんにゃく”
になった!
ここで、チーズ巻についてもコメントしておく。
これは是非ご賞味を、意外な一品ですぞ!

■いよいよ本番・・・ここから第2ラウンド

「お好み焼きと焼きぞばにいく前に、ねぎ焼も頼みましょ」と北さん

一銭洋食(ねぎ焼)はなんともバランスのとれた味だ。

「美味しいですね北さん」

「いいでしょ! さ~て、お好みはどれにします?」
「北さんのおすすめでいいですよ」
「・・・・じゃ、ミックスの餅入りで」

こういう時の北さんは、いつもやんちゃな子供のような顔をする。
そして、こんな時はハズレがない!

・・・・・実食・・・・・

これは、粉っぽいパンケーキのようなお好み焼ではない。
生地と具のバランスと味が見事にミックスされてジューシーだ。
また、餅が憎い!なんともいいところで存在を主張する。
”通のお好み焼”とでも言いたい一品だ。
北さん曰く
食いしん坊 渡辺文雄氏をも納得させた一品だそうだ。

なんとも説明がしづらいな!
「これは食べてみんと」
・・・それが全員の一致した感想だった。

お茶屋さんでお酒をのんだ後に、軽く一銭洋食。
もうちょっと飲んで食べたい人は、お好み焼。
しっかり目の仕上げなら焼きそば。
上七軒千ざいのお客さんの一般的なコースのようだ。

取材はしっかり最後までのコース。焼きそばへ進む。

ジュ-ジュ-と焼ける具とそばに、
ソースが絡みなんとも最高の匂いだ。
二人前は少し多いかと思ったが、
薄味のこの一品も見事、あっという間になくなった。

■もうひとつのご馳走

千ざいの営業時間は午後6時から12時。
しかも、12時までに入れば、後は成り行きだという。

「夜のロケの時とか助かるんですよ
食べるも良し、飲む良しで・・・
それと、何よりリーズナブルです」と北さん。

もちろんこの店の魅力はそれだけではない。
通い慣れた北さんがすすめる理由は他にある。


「私はお茶屋に生まれて、芸妓をやって
いままで、京都のここ上七軒しか知りまへん。
でも、みなさんの知らはらへんことを知ってますね。
それでよかったと思てます」と女将さん。

最後までみんな美味しくいただいたが
女将さんとの話が楽しめたことが
私にとって、何よりのご馳走になった。

また必ず寄せてもらいます!

 

■店情報
お好み焼 「千ざい」
京・北野上七軒  
電話:075~461~5465

営業時間:午後6時から12時
定休日:木曜日
※ただし、月1回(木・金)不定期の連休です。
お二人で小旅行をされているそうです。

案内人)北 俊彦
文)八田雅哉 写真)北住邦彦