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今回の北さんおすすめのお店は、「草喰(そうじき) なかひがし」。
「京都で一番予約のとりにくい店」「日本一の昼飯」など
ネットや雑誌にはこの店を賞賛する言葉が並ぶ。
もちろん北さんのお気に入りでおすすめの一軒でもある。

ご主人の中東久雄さん
ご主人の中東久雄さん

この日の取材は早朝からになった。
私たちは、7時半にご主人の中東さんと待ち合わせ
大原の里へ向った。
ご主人の一日を追跡しようという企画だ。
話は変わるが、私は摘草料理で有名な美山荘さんを
以前二度テレビ番組で訪ねたことがある。
その時の強い印象(感動)もあって、「草喰なかひがし」はどうしても訪ねてみたかった店だった。
なかひがしのご主人久雄さんは、美山荘三代目で
摘草料理で知られる故中東吉次さんの弟さんだ。
美山荘は生まれ育った実家で、久雄さんは
その美山荘で修行された料理人。
中東さんの車は大原の旧道をさらに花脊方面へと入った。そして山道をしばらく登ると小さな集落に出た。
その近くで「ここで花を摘みます」と車を降りた。
村の人との挨拶も毎日のことのようだ。ここでは
料理人中東さんのことを知らない人はいない。

山の中で食材を摘む中東さん
山の中で食材を摘む中東さん
山椒の実を摘む中東さん
山椒の実を摘む中東さん
 合流してから、中東さんの車の助手席に乗っていた北さんが「お客さんをもてなすために、あちこちまわって材料を集める。走り回って、もてなすから、ご馳走なんです」と説明してくれた。古語辞典で引く「馳走」には「駆け走ること」とある!そして、中東さんはその言葉のとおりあちこちを駆け回った。
山の中では、たびたび車を止めて野花を摘む。
大原の里では、畑で野菜を採る。
ずいきの大きな葉っぱも採る!
白イチジクも採る!
「秋の山椒がいいんです」と赤い山椒の実も採る!
そして、「泥棒ではないですよ!」と私たちに微笑んだ。

大原に入って2時間ほど、ようやくこの日の馳走が終わった。
「最後にチキンハウスでお茶しましょ!」と中東さん。
案内してもらった鶏舎の一角に「なかひがし チキンハウス」があった。
ここは秋の看板メニュー「かしわのすき焼き」の主役、鶏の家。ここで私たちは鶏舎のマスターの煎れてくれたハーブティーをいただき一旦中東さんと別れた。

鶏舎事務所2階のバルコニー
鶏舎事務所2階のバルコニーで
なかひがし店内

■いよいよ楽しみの食事タイム!

昼の営業時間が終わる2時にお店を訪れたが
まだお客さんでいっぱいだった。
「昼は夜よりも予約が取れないんです」と北さん。
少し席が空くのを待って私たちは店内に入った。
店の中では朝とは別人のように思える割烹着姿の中東さんがお客さんに楽しそうにお料理(ご馳走)の説明をしていた。



店は12名の椅子があるカウンター式(2階座敷もあります)そのカウンターに囲まれた中央に朱色の“かまど”があった。「おくどさん」だ。小さい頃古い私の実家にもあった。
お釜でご飯を炊いていた祖母や母の姿を思い出す。
土鍋からは湯気が出ていてご飯が炊きあがろうとしている。その横には囲炉裏が切ってあり、炭火で焼き物ができるようになっている。


取材の私たちにも昼の料理が用意された。
懐石料理に関して詳しくないので十分な説明ができないが、主人が料理を作り、客をもてなす茶事のスタイルが基本のようだ。
かまどのごはんは、出すタイミングの大切さを考えれば
目の届くところにこうしてあるのが当たり前なのだろう。
 


なかひがしカウンター
秋の食材盛り合わせ ■ 最初の料理(八寸)
「中秋の名月、芋名月ですので」と料理の説明をいただく。小芋、栗、みょうが、かぼちゃ、茄子、白イチジク、銀杏・・・秋の食材が見事に盛られている。
「今日の山の景色を食べていただきたい」と話がつづく。
「命あるものですからね!
命をつなぐために、命のあるものをいただくんですからね」と説明があった。
■ 汁
「これは合わせですか?」と北さん
「この季節は白味噌と赤味噌を合わせてます」
「バランスがいいですね!」と北さん。
白味噌の甘さが少し苦手な私にもこれはおいしかった。
 
鮎の味噌漬け
■「秋の収穫祭」
落鮎の味噌幽庵漬けを焼いて笹に巻いたこの一品。
それぞれの材料の説明をした後で、ご主人
「愛(鮎)のささ(笹)やき(焼)です。どうぞお召し上がりください」と締めた。
かなりベタであるが場は大いに和んだ。
この作品名は「秋の収穫祭」だそうである。

■ 感動の一品(向付)
鯉のつくり
鯉のつくりに添えられた野草は実に力強い味がした。
大根おろしのシャーベットにその野草を混ぜて、鯉の身で包んで食べる。辛味と苦味と表現しがたい野草の味のバランスが絶妙だ。
これは「草喰」にふさわしい一品に思えた。


■素朴な一品


「サツマイモとサツマイモの葉っぱとれんこんに小豆を詰めたもの、それに賀茂茄子の揚げだし、上に乗っているのはなすびの皮を揚げたもんです。その上に乗っているのが今朝摘んだカタバミです」と説明があった。実に素朴な一品が続いた。

「この後はごはんにさせていただきます」とこちらの席を離れご主人は隣の席のお客さんをもてなした。
   
サツマイモ盛り合わせ れんこんに小豆を詰めたもの


■ごはん

 
「これが最後のごはんです」とご主人。実にシンプルだ!炭火で焼いためざし一匹。葉唐辛子のたいたん。漬物いろいろ。ごはんは、炊き立てのむれていないごはん。しっかりむれたごはんとおこげになったごはんをいただいた。
「身体が綺麗になったとお客さんがおっしゃいます」とご主人。おいしかった感動以上に心打たれるものが私も残った!
ある雑誌に、ここは中東さんの演じる舞台という表現があった。確かに、いい舞台を観たときの感動に似ているかも知れない。
私はもう一度、この舞台を見たくなった!
   
ごはんセット おこげ
   
デザート 最後にデザートをいただいて取材は終えたがそれからもしばらくご主人との話は続いた。
お母さんのこと、おばあさんのこと、お父さんのこと、
「もったいない」の話、つぎはぎズボンの話、風呂の薪炊きの話・・・
私達は子供の頃の話で大いに盛り上がった。
ここは噂どおりの店だった。
ご馳走様でした! 合掌!
“草を食べさす馳走人中東さん”
“草を食べさす馳走人中東さん”
■店情報
なかひがしmap
店名 草喰(そうじき)なかひがし 定休日 月曜日
住所 京都府京都市左京区浄土寺石橋町32-3
(白川通り銀閣寺道より銀閣寺方面に入ったところ交番前)

入店時間 昼:12:00~13:00
夜:18:00~19:00

昼:5250円、6300円、7350円 
※取材で紹介したのは5250円のコース。
夜:10500円、12600円、15750円
電話 075-752-3500 備考 予約が必要です。予約は月初めの1日午前8時から翌月の予約を受け付けています。

案内人)北 俊彦  文)八田雅哉  撮影)北住邦彦