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四条木屋町を下がったすぐ東側に「露庵菊乃井」があります。
今回はいよいよ、京都料理界の風雲児?
村田吉弘氏の登場です。
今回は北さんのこの一品というよりは、この「一人」といった感じです。
「おじゃまします!取材よろしくお願いしま~す!」
迎えてくれた村田さん、私の顔を見るなり・・
「またあんたかいな!」とイキナリそっけない返答だ・・・。
もともと村田さんを紹介してくれたのは北さん。
実は、この冷たいもてなしには訳がある。
このところ、番組制作などで何かと無理をお願いしていたからです。
無理の内容は、他の取材のこともあるのでここでは申せませんが 村田さんの度量の大きいところで特別にいろいろお世話になった訳です。

最初に露庵菊乃井の店内を紹介しておきましょう!
1階はカウンターでの割烹スタイルで、10人ほどの席がゆったりと用意されていています。
本店「菊乃井」は東山のふもとにある大きなお店ですが、料理人としての村田さんの出発点はここだそうです。
「露庵」とは茶室の名前で、店の2階にあります。
2階には他にもお座敷がありカウンターとは違った雰囲気です。
さてこの村田さん、若いころは家業の日本料理ではなく、なぜかフランス料理の勉強がしたくてフランスへ渡ったそうです。

・・・その後帰国し、ここで小さな割烹店をオープン。
当時は大変やんちゃだったとご自身おっしゃっておりますが、今も決して「おやさしい方」とは思えません・・・少なくとも私には・・・。

調理場はまるで舞台のようでした!
そもそもこの店のスタートは?という北さんの質問に決して順風満帆ではなかった頃の話になった。
「7坪6席の店で、月の仕入れが35万、売り上げが30万。どないしょうかと思たな・・・・」
先代に3年はやめたらあかんといわれたそうで、その頃の経験が、この露庵の基礎になっているんでしょうね!
さて今回は村田さんと向き合っての取材です。
手際よく料理をする村田さんの姿は、なかなかの存在感です。多くの料理人さんが村田さんの指示で実にうまく動いている。流れと、動きに隙がない、プロの集団だ。
調理場は、まるで舞台のようです。
・・・世間話あり、身の上話あり、料理談ありの2時間が始まった。

今年の「鮎飯」はうまくできた!

この日、北さんはコースを注文しておいてくれたんですが、実はここでの北さんの一品は「鮎飯」だったんです。
月1回の更新を目指しているこの企画の予定では、8月に「鮎飯」の取材を行う予定だったのだが、いろいろあって、取材は9月になってしまった。
「今年の鮎飯はうまくできたで」
の村田さんの言葉に、
「惜しかったな!」と北さんは顔をゆがめた。

それでも北さんが露庵菊乃井を紹介するのには、きっと意味があるに違いない!
北さんから自信めいたオーラのようなものが漂っているではないか。

料理がでてきた。

最初は「久留巳(くるみ)豆腐」。
今回もお断りしておきますが、私は決してグルメではないし、料理の知識もありません。
ただただ、北さんの「美味しいというモノ」を味わうだけです。うまく解説ができないことを、改めてお許し願いたいと思います。
「村田さん、これは何ですか?」
「久留巳豆腐!」
品書きを見てはいるので名前は解っていたんですが、威厳のある村田さんに、これ以上聞くのは勇気が必要だ。質問の仕方を勉強すべきだった。
それにしても、私には冷たいな。
ともかく、もちもちした感触に、口の中で広がる久留巳の風味が新鮮な一品でのスタートだ。
久留巳豆腐

演出のすばらしさに感動!

■八寸
かます焼き目寿司、翡翠銀杏酒炒り酢立釜、鮎子うるか、イクラ、焼き目栗田舎煮、子持ち鮎鞍馬煮、松葉そうめん、いちょう甘芋


虫篭で出された八寸。虫篭をとるとご覧のような料理が並んでいる。
日本料理は、実に繊細でアイデアに富んだものだと思う。
いきなりこの演出に感動だ!そして、そのセンスに敬服だ。
「料理屋やからといって料理だけできるんではあかんわな。料理を盛り付ける器にしても、その価値を知ってないと恥かくわな。店の構えやしつらえにしてもそう。いろいろな知識が料理屋には必要なんや。特に歴史や文化のある京都ではそれがないとあかんわな」
調理場に飾ってある「書」の意味を聞かなくて良かった!と思った。
八寸

「これからは日本料理やな!」

■向付
明石鯛、横輪かつお、つばす、菊の葉、白髪大根、縒り胡瓜、人参、菊の葉酢漬、山葵、土佐醤油


世界の3大料理は、フランス料理に中華料理にトルコ料理。
ワールドグルメサミットなどにも参加してる村田さんは
「今、料理の世界では「モアヘルシー」がテーマになっていて、健康考えた料理が注目されてるんや」
「これからは日本料理やな!」
いきなり結論だった。
「3大料理のひとつに入れると料理の歴史が変わってしまうが、世界の4大料理なら、そこに日本料理が加わると思うよ」
村田さんの、日本料理に対する意気込みが感じられる。

ところで北さんの料理は、私たちのモノとはカタチが違うな・・・。
鯛は薄づくりだ・・・・。ここでも北スペシャルの登場か?
「僕はね、鯛は薄づくりでいただくんで、いつもこうしてもらってるんです」
何も言わずとも用意されるとは、さすがである。
北さん得意そうです!満足そうです!

「今回の一品は、露庵の椀物にしましょう!」

■蓋物 鱧豊年碗
松茸、三日月玉子豆腐、まびき菜、松葉釉 吸物仕立て


「話をしながらのカウンター割烹はいいですね!」
「いいでしょ!」
村田さんとは怖くて話ができないので、北さんと喋ることにした。北さんがここをすすめる理由が少し見えてきたぞ。
料理に対する想い。京都への想い。日本への想い・・・。
ここには料理だけではない、それらを包み込むものがあるようだ。
会話をしながらも村田さんは手際よく料理を用意する。
料理のことについても書かねばなりません。以前、上七軒のおかあさんの I さんと食事をしたときに、「蓋物(椀物)が日本料理の場合は大切や」といったお話を聞いた。
「今回の一品は、露庵の蓋物(椀物)にしましょ!」と北さん。
確かにこの蓋物「鱧豊年椀」は美味しかった!
蓋物 鱧豊年碗
 
ふたたび繊細な演出に感動!

■焼物
かます杉板焼き、椎茸、酢立


杉板の焼いた匂いが店内に立ち込めた。
次に出てきたのは(焼物)「かます杉板焼き」と題された料理・・・・。
なんと表現したらいいんだろう・・・。
このアイデアに脱帽である。
杉板の焼いた匂いは、決して臭いではない。
深さを追求すると、料理もこんな風になるんだ!
京都の料理人には特殊な才能があるんだろうか。


■酢の物変り
菱蟹、黄身酢、鴨ロース粒芥子、鱧八幡巻小芋、水菜ひたし、針野菜、サーモン黄身巻、鱧の子ゼリー寄せ、ささげ黒胡麻和え、梨

木箱に入ってでてきたのは、いろいろな味覚が楽しめる料理だ。
どれも美味しい。

■強肴
甘鯛(ぐじ)徳利蒸し、焼き茄子、豆腐、椎茸、絹さや、ポン酢、
洗い葱、染めおろし

ポン酢でいただくこの料理も美味しい。
椀物もそうだったが、私は汁ものが特に気に入った。

■後汁 赤だし
■御飯 雲丹飯、浅草海苔、色三つ葉
■香物 胡瓜、茄子、大根 糠味噌漬け

最後の仕上げも圧巻である!釜炊きの雲丹飯だ。
8月なら、ここに北さんおすすめの「鮎飯」がくるんだろうが、これならいつ来ても、楽しみですよ!北さん。
雲丹飯

作ってくれといわれれば、どこへ行ってでも料理を作る
日本料理の普及にとても尽力されている村田さん。
テレビ出演も多く、そのキャラクターもあってか随分人気物です(最近、大阪ガスのCMに登場されてます)。
「最近は芸能人のようですね!」
お腹が膨れて少し緊張が緩んだせいで、また軽率な質問をしてしまった。
眼光鋭く、「私は芸能人やないで。作ってくれといわれれば、どこへ行ってでも料理を作るだけや!料理人やからな」
海外からも招待される村田さんの言葉には、自信が満ち溢れている。説得力がある・・・少しコワイ!
「京都の料理のレベルは高いよ。時代の変化を捉えたもの作りをしているし、それぞれの料理人がよく勉強している。やっぱり京都には新しいもんを創り出す力があるな!」
・・・頼もしい人が京都にはいるもんだ!

あとがき
取材を終えた私に
村田さんが冗談を交えながら話かけてくれました。
カウンターの中の村田さんとは違って
ずいぶん柔らかい表情です。

それにしても、料理、京都に対する
村田さんの熱い想いに、私はいつも感動します。


「北さん、次なんですけどね、
私、そばが好きなんですよ!どこか教えてくださいよ」
「・・・・じゃ次は、北山権兵衛に行きましょう!」



文)八田雅哉 写真)北住邦彦