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折々の旬を味わうなごみの串揚げ料理
 
京四季「彩」
<閉店しました>
いろどり
■所在地 京都市上京区室町通出水東南角148-1
■電話

075~441~1694

■営業時間

11:30AM~1:30PM、5:30PM~9:00PM

■定休日 水曜日、祝翌日、土日の昼
■その他 お席 40名程度
昼定食:850円、夜4000円前後
「串・鍋コース」は4名様以上で予約が必要
この道40年にして選んだ串揚げ屋

 「わたしら二人が好きにできる店にしたかったんです」。
 和食の道このかた40年になる主人が奥さんと肩を並べ、威勢のいい声で話す。大きな店では何百人もの客に毎日同じ味を提供し、その数をこなせる材料を選ばねばならない。従業員も相当の数になる。すべてを知り尽くした主人が40年にして選んだ次の人生は、お客一人ひとりの顔が見える店だった。「串揚げ」を選んだのも、まだ完成されていない分野と考えたから。開店1年を迎えてなお意気盛んな「京四季 彩(いろどり)」は豪快な主人と柔和な奥さんが構える店だ。
 昼は「とんかつ膳」(850円)と「あなご天丼」(850円)の2種のみ。とんかつは鹿児島産「三味豚(さんみぶた)」の肩ロースを使用。甘みがあってジューシーな厳選の豚肉だ。具だくさんの豚汁が大きな椀にたっぷりついてくる。あなごのほうは明石の産で、なんと奮発の1本半がはいっている。味噌汁つき。店内は込み込みの状態になるが、是非とも味わいたいメニューである。

くつろぎの空間で抜群の鮮度を

赤いカウンターに赤煙突

「円卓の部屋を」の指定つきで宴会の予約が入ることも(2階)

 夜は三々五々、客足が集まってくる。主人夫婦と対面して座る赤いカウンターや2階の円卓は、家人が戻ってくるように徐々に埋まるのだ。ときには観光客も立ち寄るが、やはり近辺の会社帰りの常連が多い。旨い串揚げと、とりどりの本格焼酎に地酒、そしてゆったりと時が流れる店構えに自然と足が向くのだろう。建物は100年ほど前に建てられた宮大工の住まいだった。昔ながらの京町家はつくりが堅牢なので、店に改装するにあたっても骨組みはそのまま残してあり、立派な梁(はり)などに名工の跡を見ることができる。

 さて、夜が本業の「串揚げ」である。串の定番ものを含め、毎日およそ25~30種。カウンター越しに目の前を行き来する素材は新鮮そのものだ。車海老や流れ子(とこぶし)はついいままで活きていた。鱧(はも)は奥の厨房で落としたて。万願寺(唐辛子)は青々とよく肥えている。空豆は先ほど茹だったばかりのを奥さんがひとつずつ皮をむいていたものだ。

何本でも食べてしまえる串揚げの秘密
  「安全なものを安心して健康的に食べてもらいたいんです」。
 主人夫婦のこだわりはここに帰結するらしい。毎日の仕入れでは京野菜など旬の野菜、活きのいい魚介、厳選を重ねてたどり着いたおぼろ豆腐に生麩(なまふ)や湯葉(ゆば)など、京と四季を意識した素材が吟味される。しかし素材の種類は増やさないのだそうだ。素材はその日に使い切り、日々新鮮なものしか提供しないという信念に基づいてのこと。「アスパラは北海道から送ってもらっているんですよ」。奥さんは北海道に住む息子夫婦が仕入れてくれると誇らしげに話した。
 それにしてもこの店、油の臭いがほとんどしない。カウンターの向こうでは食材が幾度も油に投入されていくのにだ。カウンターと同色の真っ赤な太い煙突、きっとこれのせいだろうときいてみた。「よく吸うように造ってあります。それと、パン粉と油も特別なんです」。主人は生パン粉を串用にミキサーにかけて細かく粉砕しているのだ。そして極上の100%植物性オイルでカラリと揚げる。お陰でここの串は何本食べても胸やけしない(ついでに服も髪も臭わない)。健康を第一に考えた究極の低カロリー串揚げなのである。

たれのセット。淡いピンクの粉はアンデスの塩。右上のからしソースは肉類に。

串揚げの一部(左より空豆、ベビーコーン、かにつめ、空豆コロッケ)

「利休坊」きくらげやぎんなんの入った生麩だんごに上品な薄味のあん。
バランスのよいメニューを手軽に心おきなく
 「うちでは高こう払ろてもろたら困るんです」。
 奥さんがいうようにメニューはどれも高くない。1本150円からの「おまかせコース」ではおすすめの串がバランスよく供される。欲しい分だけ食べたらストップをかける。「サービスコース」(1500円)は串8本に食事(ご飯・味噌汁・香の物)つき。「おつかれさまコース」(2000円)は食事のかわりに生ビール中が2杯。いずれのコースにも串の友のキャベツサラダと、付出し、口直しのデザートがつく。予約すると季節の鍋もある。特製おぼろ豆腐が味わえる「ゆどうふコース」(2500円)、今頃なら「鱧しゃぶコース」(5000円~)もおすすめだ。こちらのコースにも串揚げは5本ずつ付くのでご安心を。
 気に入った串をいくつか紹介しよう。「流れ子」は身がプリプリとし、ほどよい醤油風味があとをひく旨さ。「しいたけ 車海老詰め」にはりっぱな椎茸の内側にたっぷりとすり身がつけられている。車海老ならではの味わい。「生麩」「加茂なす」「鱧」「かにの湯葉巻き」に吟味された素材のよさを堪能した。もうそろそろこの季節も終わりね、と奥さんがいうのは「空豆コロッケ」。ていねいにつぶされた空豆がぎっしりと詰まったボール状の串揚げを、淡い豆の風味を味わいながらいただいた。 (文/花月亜子)

【地図】