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円山公園の一隅 | ||||||||||||||||||||||
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京の名物料理「いもぼう」 |
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書き物では伝えられない大切なこと | ||||||||||||||||||||||
「いもぼう」の味は一子相伝で伝えられてきた。十四代女将、北村明美さんは跡継ぎとしての多くのことを子ども時代から自然と身につけてきたという。平野家には代々書き残されたものがない。技術と味のすべてを口伝(くでん)で伝えているのだ。とはいえ、調味料には決まった分量があり、伝統の調理技術を用いる。それでも書き記されてこなかったのは、年々歳々同じ味を提供するのに大事なことはその日の気候や食材の質をよむことにあり、これによって「平野家本家」の味が出せているかを見分ける舌こそが重要であるからだ。「こればっかりは紙に書いて伝えられないんです」と女将は言う。 | ||||||||||||||||||||||
京名物をいただく | ||||||||||||||||||||||
![]() 店全体は歴史と伝統というより、あたたかい雰囲気に満ちている。主人の眞純さんは大学のクラブで明美さんと出会い、十四代を担うことになったということだ。おしどり夫婦の明るさが、そのまま店に溢れている。 さて、庭の見える落ち着いた座敷に通され、人気の高い「花御膳」(3150円)を賞味した。朱塗りの膳に美しく配された料理は7品。 吸い物の「梅椀」には梅の五弁になぞらえた五種の椀種がはいっている。「祇園豆腐」は豆腐にしっかりめの味をつけた吉野葛あんをかけた温かいもので、薬味の辛子など全体をよくかき混ぜていただくオツな品。「とろろのり巻」は丸芋(つくね芋)のすり下ろしをのりで巻いたものだが、腰が強く持ち味濃厚なとろろが絶品。土佐酢でさっぱりと。和えものに「京菜、コンニャク胡麻味噌和え」、ごはんと香の物をいただいた。 古来から伝わる味は素朴だが計算し尽くされた旨味があり、また現代人に必要な健康食でもあった。 「美味延年」の一筆が床の間に掛かっている。顧客だった川端康成がノーベル賞を受賞した記念に立ち寄り、いつになく上機嫌で、十三代当主多造さんの目の前で揮毫したものだ。主人と女将が受け継いだ大きな遺産は、時代を問わず多くの客の延年(長生き)の夢をかなえてくれる美味なのである。 (文/花月亜子)
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(写真はイメージ) |
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【地図】
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