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名店の流れを汲む京割烹 | |||||||||||||||||||||||
モノトーンでまとめたモダンな玄関に、「京割烹 祇園 味留」と染められた大きなのれんがかかっている。ここ「味留」はハモ料理の名店「高台寺 馳走 高月」の姉妹店である。開店から8年、本店「高月」からの厳格な指導に応え、かつ店の独自性を創り出しているのは店長の尾江清樹さんだ。尾江さんは「高月」に勤めた後、「味留」の開店に合わせて店長に抜擢された。 |
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一流料亭にないサービス | |||||||||||||||||||||||
開店からしばらく経った頃、本店から許しを得てやっと置けるようになったものがある。店の外に掛けておく料理の値段を書いた短冊である。おかげで客は安心して店に入れるようになった。仕入れでも、尾江さんは市場にこだわらず、農家の野菜販売所や独自のルートで良質のものを安価に仕入れている。「地の」いいものをもっと食べてもらいたいとの気持ちからだ。また日本海側からやって来る「かつぎ」と呼ばれる鮮魚屋との出会いは尾江さんの献立を大きく変えた。一流料亭でしか使えなかった高級食材をうまく仕入れ、値段のきまっているコースメニューや一品料理として供しているのだ。尾江さんの「きょうはいいものがあります」の一言は聞き逃せない。 |
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コースの紹介 | |||||||||||||||||||||||
昼は3800円と5000円の季宿膳(にぎり寿司付き)、「おばんざいコース」(2500円、にぎりは付かない)がある。夜の割烹「おまかせ料理」には4000円(4品)、6000円(5品)、8000円(5~6品)があり、どれにも先付、造り、にぎり、小鍋、鉢物、フルーツが付く。各コースだけでもお腹は満足するが、もうひと口という方には1000円前後からの「湯葉揚げ出し」「自家製具入り豆腐」「鮎塩焼き」など魅力的な単品メニューや、300円からいただけるにぎり寿司(おあげ、高野玉子、みょうがの甘酢漬けなど、もちろん新鮮な魚も)がおすすめ。 | |||||||||||||||||||||||
暑気払いにいただきたい料理の数々 | |||||||||||||||||||||||
まず先付に冷製の「湯葉汁豆腐」。湯葉の味が凝縮した豆腐はむっちりしているのに口溶けなめらか。なかにハモの細切りが入っている。お造りは氷や青竹とともに美しく盛りつけられていて、ボリュームもある。焼き目ハモはさすが「高月」姉妹店。最高級のハモの柔らかい舌触りと風味がたまらない。そしてコイ、サンマのたたき風、いずれも梅わさび醤油でいただく。あしらいのかぼちゃのスライス塩茹は箸休めに。さて次が、漬け物や野菜をネタに使った「味留」名物ともいえるにぎり寿司。鰺と人参の漬け物のにぎりは、漬け物のなれ具合が鰺のうまみにちょうど合う。甘海老のにぎりにはシャリシャリの長芋短冊が意外なマッチを見せる。圧巻は「京舞子」と呼ばれるにぎり。薄づくりのネタが十二単のように重ねられていて、いただくとすべてのネタが融合していく。今日のネタはいか、まぐろ、海老、椎茸、かんぴょう、大葉、そして上にイクラ。このほか7個の盛り合わせになっている。小鍋は「ハモの焼き野菜鍋」。ハモをたっぷりの野菜とともにポン酢でさっぱりと。野菜をこんなにたくさんおいしく食べさせるのは、さすがである。そして鉢物に「冷やし柳川」をいただいた。 舌鼓をうちつつ店を見渡すと、店の中ほどに涼しげな氷柱が飾られている。夏の間だけ、夜の営業時間に合わせて氷屋にもって来させるそうだ。こちらの食欲は満たされてきて、しかしだんだん痩せてゆく氷に少し申し訳ない気がする。(文/花月亜子) |
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【地図】
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