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のれんをくぐれば気さくな割烹・寿司の店

京割烹 祇園「味留」

あじとめ
■所在地 京都市東山区四条縄手上ル一筋目西入ル
■電話

075~551~2128

■営業時間 11::30AM~3:00PM(ラストオーダー2:00PM)
5:00PM~11:00PM(ラストオーダー10:30PM)
■定休日 月曜日
■お料理 【昼】

【夜】
「おばんざいコース」 2,500円
割烹 3,800円、5,000円
割烹 4,000円、6,000円、8,000円
■その他 お席 27名(カウンター15名、テーブル12名)
名店の流れを汲む京割烹

 モノトーンでまとめたモダンな玄関に、「京割烹 祇園 味留」と染められた大きなのれんがかかっている。ここ「味留」はハモ料理の名店「高台寺 馳走 高月」の姉妹店である。開店から8年、本店「高月」からの厳格な指導に応え、かつ店の独自性を創り出しているのは店長の尾江清樹さんだ。尾江さんは「高月」に勤めた後、「味留」の開店に合わせて店長に抜擢された。
 尾江さんの店づくりの苦心は随所にあらわれている。一流料亭では揃いの器を使うのが当然だが、ここではお連れの客にもあえて型の違う器に盛りつけ、これも一興と楽しませている。新鮮な野菜をふんだんに使った料理には、「こんなにたくさん野菜を食べたのは久しぶり」と言わせる工夫がある。それに、質のいいものを手頃な値段で提供する日々の精進がある。
 「女性や家族連れのお客さんが多いんです」と尾江さん。祇園とはいえ四条河原町から歩いて数分のためか、昼間は買い物途中らしき女性同士が多く、夜も会社の接待ではなく友人や家族など、肩の凝らない人同士の客がほとんどである。そういう客層の心を掴む店づくりこそが、「味留」に客を留めているのだ。

一流料亭にないサービス

 開店からしばらく経った頃、本店から許しを得てやっと置けるようになったものがある。店の外に掛けておく料理の値段を書いた短冊である。おかげで客は安心して店に入れるようになった。仕入れでも、尾江さんは市場にこだわらず、農家の野菜販売所や独自のルートで良質のものを安価に仕入れている。「地の」いいものをもっと食べてもらいたいとの気持ちからだ。また日本海側からやって来る「かつぎ」と呼ばれる鮮魚屋との出会いは尾江さんの献立を大きく変えた。一流料亭でしか使えなかった高級食材をうまく仕入れ、値段のきまっているコースメニューや一品料理として供しているのだ。尾江さんの「きょうはいいものがあります」の一言は聞き逃せない。

コースの紹介
 昼は3800円と5000円の季宿膳(にぎり寿司付き)、「おばんざいコース」(2500円、にぎりは付かない)がある。夜の割烹「おまかせ料理」には4000円(4品)、6000円(5品)、8000円(5~6品)があり、どれにも先付、造り、にぎり、小鍋、鉢物、フルーツが付く。各コースだけでもお腹は満足するが、もうひと口という方には1000円前後からの「湯葉揚げ出し」「自家製具入り豆腐」「鮎塩焼き」など魅力的な単品メニューや、300円からいただけるにぎり寿司(おあげ、高野玉子、みょうがの甘酢漬けなど、もちろん新鮮な魚も)がおすすめ。
暑気払いにいただきたい料理の数々

なす、はすいも、じゅんさいがあしらわれ薄味の出汁がはってある

一人用のコンロには炭火が。水菜・万願寺の細切り・黄身揚げ椎茸・ハモの薄切りがこんもりと盛られ、時間とともにしんなりしてきたらポン酢でいただく。

上段左から、水菜と人参の漬け物をシャリに混ぜ込んだ平目。鰺と人参漬け物。甘鯛ときゅうりのにぎりトッピングに蓮根薄切り。「京舞子」。浅瓜漬け物のにぎり。茄子漬け物。甘海老と長芋
 さて、今日は8月の6000円のコースを予約して店に向かった。カウンターと大きなテーブル席がある店内は明るく清潔そのもの。カウンターの板さんのきびきびした動きが小気味よい。壁にしつらえた棚の、色とりどりの器を見るのも楽しい。
 まず先付に冷製の「湯葉汁豆腐」。湯葉の味が凝縮した豆腐はむっちりしているのに口溶けなめらか。なかにハモの細切りが入っている。お造りは氷や青竹とともに美しく盛りつけられていて、ボリュームもある。焼き目ハモはさすが「高月」姉妹店。最高級のハモの柔らかい舌触りと風味がたまらない。そしてコイ、サンマのたたき風、いずれも梅わさび醤油でいただく。あしらいのかぼちゃのスライス塩茹は箸休めに。さて次が、漬け物や野菜をネタに使った「味留」名物ともいえるにぎり寿司。鰺と人参の漬け物のにぎりは、漬け物のなれ具合が鰺のうまみにちょうど合う。甘海老のにぎりにはシャリシャリの長芋短冊が意外なマッチを見せる。圧巻は「京舞子」と呼ばれるにぎり。薄づくりのネタが十二単のように重ねられていて、いただくとすべてのネタが融合していく。今日のネタはいか、まぐろ、海老、椎茸、かんぴょう、大葉、そして上にイクラ。このほか7個の盛り合わせになっている。小鍋は「ハモの焼き野菜鍋」。ハモをたっぷりの野菜とともにポン酢でさっぱりと。野菜をこんなにたくさんおいしく食べさせるのは、さすがである。そして鉢物に「冷やし柳川」をいただいた。
 舌鼓をうちつつ店を見渡すと、店の中ほどに涼しげな氷柱が飾られている。夏の間だけ、夜の営業時間に合わせて氷屋にもって来させるそうだ。こちらの食欲は満たされてきて、しかしだんだん痩せてゆく氷に少し申し訳ない気がする。(文/花月亜子)

【地図】