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 東大路通を一筋東に入ったところ、八坂神社の中に「二軒茶屋 中村楼」はある。創業450年余。数々の史料や文献に残る記録から、室町末期頃に前身の茶店が営まれるようになったのではないかと推測されている。老舗の多い京都にあってもやはり驚くほど、歴史の深い料亭だ。伊藤博文や板垣退助が訪れたとか、坂本龍馬がこの店のゲタを愛用していたとか、逸話にも事欠かない。
 もちろん永きにわたって店が繁盛しているのは、その時代の当主が研究と努力を重ねてきたから。現在の当主も「伝統をしっかりと受け継ぎながら、時代に応じたやり方を取り入れております」。初心忘れずべからずで、玄関横には昔ながらの茶店を残している。
 一方、京料理専門の料亭としては“見た目の華やかさ”と“はんなりな味わい”が身上。すべておまかせで出される懐石は、四季折々の薫りで織りなされた逸品ぞろい。例えばこの日の献立は、サーモンの花びら寿司など前菜5品・甘鯛の桜どうみょうじ蒸し・鯛の木の芽焼き・お刺身・白みその手まり麩と京水菜の汁物など。他に揚げ物や酢の物、名物の「祇園豆腐」が付く。いずれも細やかな職人技がほどこされ、美しいったらない。盛りつけの器にもこだわりが感じられる。
 料金は10,000円~(税サ別)。お酒を飲む人にはそれにぴったりの料理を、若い人だったらボリュームをと、お客の好みやニーズに合わせて作ってもらえるのがうれしい。お昼は8,000円からの懐石コースと、人気の高い田楽弁当(3,600円)やミニ会席(5,250円)も用意されている。
 うすピンク色の桜がいっそう優雅さを添える広いお庭を眺めながら、旬の京懐石に舌鼓をうつ。なんとも京都らしい、心の贅沢だ。お出かけの際には予約を忘れずに。

 



 DATA
東山区祇園町南側八坂神社鳥居内
TEL075-561-0016~0018
時間11時30分~19時(入店)/不定休

 

 

 


 

 腰掛茶屋だった同店が江戸時代初期に売り出し、評判となったのが「祇園豆腐」。竹串に刺したお豆腐に、白みそ・卵の黄身・木の芽などを混ぜた特製みそをつけて焼いたものだが、みその辛みと甘み、木の芽のスパイシーな風味がたまらない。おかずにも、おやつにもなる不思議な味わいだ。
 江戸時代にはこの風味はもちろん、豆腐切りのパフォーマンスも人気を呼んだ。お客さんの目の前で拍子よく豆腐を切りあげ、その見事な包丁さばきを披露。たくさんの見物客でにぎわっていたとか。
 今でも懐石コースの一品として付いてくるほか、玄関横の茶店でお抹茶やおしるこなどと共にいただくことができる。八坂神社へお参りのついでに、ちょっと立ち寄ってみては。