とにかく京野菜を美味しく、しかも手頃な値段で味わえる店である。京のふるさと産品協会が定めた厳しい条件をクリアし、「旬の京野菜提供店」の一つとして認められている。
昼は、ビジネスマンに人気のリーズナブルな定食が750円から数種類揃っている。予約をすれば、2,000円からの弁当も用意してもらえる。
夜は、会席料理が5,000円、おまかせ料理が4,000円からで、もちろん一品料理も100種類以上と充実している。メニューにないものでもリクエストがあれば可能な限り応じるとか。
料理の中心は旬の京野菜。希望があれば野菜の現物をみせてもらえる。また、料理のレシピや京野菜を手に入れることができる店を紹介することもあるそうだ。
1月の鍋のコースは、付出し、造り、鍋、寿司、果物の5品で5,000円。
まず付出しは、千枚漬で蟹の身をくるんだものと、水菜、いくらなどを大根おろしで和えたもの。それぞれ上品な酸味が食欲をそそる。次に造り。あっさりした鯛や蛸、脂ののった鰤や鮪、甘さがうれしい帆立や甘海老が見た目にも豪華に盛られる。新鮮なだけあってぷりぷりした歯ごたえと素材の持ち味を充分に味わえる。
メインは「柚香鍋(ゆこうなべ)」。
「この時期、年末年始でなにかと負担が多かった胃にやさしいものをと思うて・・・」と女将さんが考えたオリジナル鍋である。ほんのり甘い蕪、シャキシャキした水菜、香り付けの白葱をはじめ白菜、金時人参など今が旬の野菜と、もちもちした食感の生麩、生湯葉、醤油で下味のついた鶏肉、椎茸、豆腐が昆布と鶏肉で丁寧にとった出汁の中でひとつに調和する。 薬味は柚子胡椒と刻み柚子の2種類。これが、「柚香鍋」の名前の所以である。京都人には馴染みの薄い柚子胡椒は、柚子と唐辛子でできた練状の香味香辛料のことで、九州地方では水炊き、うどんなどにいれて親しまれている。少量入れてみると、ピリッとした唐辛子とさわやかな柚子の香りが野菜や鶏肉をひきたてる。一方、刻み柚子を入れると今度はさっぱりとしたあじわいになり、食がいくらでも進む。
そして鍋の最後に茶蕎麦を入れる。うどんではなく「茶蕎麦」というところがこの鍋のもう一つの特徴であり、女将さんの新しい試みである。野菜や鶏肉の旨みが充分に凝縮された出汁と、茶蕎麦の風味がマッチする。尚、鍋のメニューは月替わりである。和菓子や陶器など、いろいろなものから料理のアイデアがひらめくという女将さん。そのセンスと研究熱心さの賜物のオリジナリティー溢れる鍋、来月も新作を楽しみにしている客が少なくないことだろう。
寿司は、鉄火巻、しそ巻、きゅうりの裏巻の三種。裏巻とは海苔を内側に酢飯を外側に巻いたもので、目でも楽しめるひとひねりの工夫がなんとも心憎い演出である。
最後は果物でさっぱりとしめる。
「お酒の邪魔をしないのが料理、料理の邪魔をしないのがお酒」と女将さんの弁。料理に合う酒も、清酒「松竹梅」、本格焼酎「巌窟王」「一刻者」「黒一刻」「紅一刻」、その他ビール、バーボンウイスキーなど豊富に揃っており、楽しいひとときに幅が広がる。
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